
ニルス・ニールセン監督の初陣となったSheBelieves Cupで見事初優勝を達成したなでしこジャパン(サッカー日本女子代表)。
オーストラリア、コロンビアを相手に2連勝を飾ると、最終戦で地元アメリカにも2-1で勝利。
まさに最高のスタートを切ったチームにおいて、「核」となっていきそうな5名の選手を紹介する。
長谷川唯
指揮官が代わってもなでしこジャパンの中心がこの選手であることに変わりはない。
長谷川唯は今回のSheBelieves Cup、いわゆる“8番”と“6番”のポジションでプレー。パートナーがたびたび変わりながらも中盤で時間を作り出し、自らの役割を攻守両面で全うした。
難しい状況であっても積極的にボールを引き取り、そのテクニックで局面を打開。さらに、優勝を決めたアメリカ戦では絶妙なスルーパスで籾木結花の先制点をアシストすると、正確なフリーキックで古賀塔子の勝ち越し弾も生み出してみせた。
ニールセン監督はマンチェスター・シティ女子チームのテクニカルダイレクターだったこともあり、長谷川の能力をよく知る人物。全幅の信頼がうかがえた今回の初陣だった。
田中美南

4得点で得点王とMVPに輝いた田中美南は、もしかしたら現在のなでしこでもっとも“替えがきかない選手”かもしれない。それほど30歳になったFWが今大会で見せたパフォーマンスは秀逸だった。
北川ひかる、藤野あおばとともに全3試合に先発出場した田中。それだけでも新監督からの高評価が感じられるが、中盤に下りてボールの出口を作り出し、チャンスメイクにゴール、さらには献身的な守備とあらゆる仕事をハイレベルにこなした。
もともと多彩な能力を持ち、国内では圧倒的な実績を誇っていたが、短期ながらレヴァークーゼンで初の海外移籍を経験した2021年以降、年々フットボーラーとして研ぎ澄まされている印象だ。
昨年のパリ五輪でも、決定機やPKのミスが話題となった一方でチームへの貢献度は非常に高かった。PKも成功させて手にした今大会での栄冠は、田中にさらなる自信をもたらしたに違いない。
藤野あおば

サイドアタッカーとしては今大会、ゴールも決めた浜野まいかの活躍が光ったが、ここでは浜野と逆サイドでプレーすることが多かった藤野あおばの名前を挙げたい。
駆け引きを含めた深みのある“巧さ”(狡猾さとも言う)に長け、相手の嫌がるプレーをやり続けることができる浜野に対し、藤野は技術面とフィジカル面でより無理がきく21歳。
なでしこで希少なドリブラー気質の選手でもあり、強烈なシュートなど個としての打開力はチームで一、二を争う存在だ。ノーゴールに終わった今大会でも最後のアメリカ戦、ドリブルで中央へ切れ込み決勝点につながるフリーキックを獲得している。
藤野はパリ五輪後に移籍したマンチェスター・シティでウィンガーとして着実に成長中。浜野や今回なでしこデビューを飾った松窪真心といった同じ2004年生まれの選手たちと切磋琢磨しつつ、チームの中心となっていくことを期待したい。
古賀塔子

2023年のアジア競技大会、まだ17歳だったにもかかわらず全試合に先発出場し、チームの2連覇に貢献した古賀塔子。
当時から「女子版・冨安健洋」と評されていたが、今回のSheBelieves Cupではセンターバックに加えて左右の両サイドバックで出場。まさに冨安のようなプレーぶりで3試合2失点の守備に貢献した。
卓越した守備能力に加え、足もとも安定。ボールを運ぶこともできるため高い位置でのプレーも苦にせず、最後のアメリカ戦ではセットプレーの流れから決勝点まで決めてしまった。
所属のフェイエノールトではボランチでも起用されており、今季ここまで15試合で3ゴールを記録。
谷川萌々子

本来であれば5人目は守護神の山下杏也加。しかし、今大会でも強烈なインパクトを放った谷川萌々子はやはりピックアップしておきたい。
古賀と同じJFAアカデミー福島出身の19歳は、またしても破格のプレーを披露。出場は2試合目のコロンビア戦のみだったが、開始1分に左足で異次元のロングシュートを叩き込むと、8分には精度の高いコーナーキックで田中美南の追加点をアシストした。
「チームの中でプレーする」という意味ではまだ課題が多いものの、個としてはなでしこ史上でも類を見ないレベル。今冬に加わったバイエルンでも早々にそのポテンシャルを発揮している。
特大のスケールを持った谷川が今後どのような成長曲線を描いていくのか。それを見るだけでも新生なでしこジャパンを追っていく価値があるはずだ。