2025年1月24日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)は、江蘇省蘇州市で発生した日本人母子襲撃事件の犯人に死刑判決が下った背景について日中関係を絡めて考察する記事を掲載した。
記事は、「2024年6月に中国江蘇省蘇州市で発生した日本人母子襲撃事件について、今月23日に被告の中国人の男(52)が同市中級人民法院(地裁)から死刑判決を受けた」と紹介。
そして、23日の裁判には岡田勝駐上海日本総領事が傍聴に訪れ、犯人の動機に対する裁判所の見解に注目したものの、裁判官は「被告が借金や失業に追い込まれた末、社会への復讐心から犯行に及んだ」と述べるにとどまり、反日感情から日本人を標的にした可能性については言及されなかったと指摘。林芳正官房長官が「今回の判決を厳粛に受け止め、中国に対し在留邦人の安全を確保するよう強く求める」とコメントしたことを紹介した。

その上で、「蘇州や広東省深センで発生した日本人襲撃事件は日中関係の緊張を一層深め、特に日本企業が多く駐在する地域での凶悪な事件によって日本人の中国社会への信頼が低下している」と指摘。また、反スパイ法の適用や民族主義の高まりが日本人の中国滞在に対する不安を一層増幅させており、民間交流の停滞が懸念されている」と言及した。
記事は、不確定要素が大きい米トランプ政権発足を前に日中両国が関係改善に向けた動きを進めており、中国政府は日本との経済協力を維持する姿勢を示しているほか、昨年11月には日本人のノービザ訪問を再開し、福島第一原発の処理水海洋放出の影響で停止している日本産海産物の輸入再開にも前向きになっていると説明。中国国内の反日感情を煽り立てるとともに、日本での反中感情も高めかねない蘇州での事件をめぐり、犯人に対して早急に死刑を宣告したことは、日本との関係改善の流れを阻害しないための配慮との見方を示している。
一方で、日中関係をめぐっては、尖閣諸島周辺での摩擦や、日本人企業関係者の拘束事件など未解決の問題が山積しており、根本的な関係改善にはなおも長い道のりが必要であると伝えた。(編集・翻訳/川尻)