シンガポールメディアの聯合早報は6日、中国によるレアアース輸出規制が日米欧の自動車メーカーに影響を及ぼしている問題について、「軍民の用途の区別が難しいことが原因」との分析があることを報じた。

中国は今年4月、サマリウム、ガドリニウム、テルビウムなどレアアース7種の輸出規制を発表した。

これについて記事は「中国は輸出規制を米国の高関税措置への対抗策とした」と述べ、この動きは自動車、航空宇宙、半導体、軍需など多くの産業の重要なサプライチェーンを混乱させたと言及。また、「中国がレアアースの輸出規制を強化したことで日米欧の複数の自動車メーカーが生産停止の危機に直面している」とし、日本のスズキが中国のレアアース輸出規制の影響を受けて小型車スイフトの生産を停止したと報じられたことを取り上げた。

一方、中国商務部の報道官は5日の定例記者会見で、「レアアースなどの物品は明らかに軍民両用の性質を持っている。それに対する輸出管理は国際的に通用する措置だ」と表明。中国外交部の報道官も同日の定例記者会見で「輸出規制は国際的に通用するものであり、差別的なものでも特定の国を対象にしたものでもない」と述べており、記事は中国側のこうした発言とともに中国がレアアース磁石業界への監督管理を最近強化したことを説明した。

記事によると、投資銀行・香頌資本の沈萌(シェン・モン)執行董事は聯合早報の取材に対し、「レアアース磁石業界に対する監督管理強化の主な目的は米国の関税政策への対抗であり、特に米国の軍需企業に圧力をかける狙いがある」と指摘した上で、「ただ、レアアース磁石は軍民の用途の区別が困難なため、標的にするつもりのなかった相手が巻き添えになる可能性がある」との考えを示した。

また、北京大学新結構経済学研究院の沈鴻(シェン・ホン)研究員は「レアアースを巡る措置は米国との貿易戦争における中国の『総合的な戦略』の一つだ。中国はレアアース市場における独占的な地位を生かして米国に圧力をかけ、交渉カードとして使うだろう」とし、「実質的な協議に導くにはある程度の強硬な姿勢を示すことが必要」と指摘したという。(翻訳・編集/野谷)

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