2025年6月10日、中国の雑誌・南風窓は、レアアース産業をめぐる米中間の争いに関する記事を掲載した。

記事は、「米国は半導体、中国にはレアアース」と言われるように、レアアースが半導体と並ぶ米中貿易摩擦の主要な争点となっており、中国のレアアース輸出規制は、西側諸国の技術包囲網に対抗する切り札と位置付けられていると紹介。

レアアースは自動車や半導体、医療、ロボット、軍事など多くのハイテク産業に不可欠であり、最近では中国が4月に発動した中・重希土類7種類の輸出規制によって材料が不足した米フォードのシカゴ工場が一時閉鎖されるなど、レアアース資源の掌握は世界的なサプライチェーン対して大きな影響力を持つと伝えた。

その上で、中国は世界のレアアース採掘量の60%、加工量の92%を占めており、ほぼ独占的な支配力を持っていると説明。この主導的地位の確立は1992年の鄧小平(ドン・シャオピン)氏による「中東に石油あり、中国にレアアースあり」をきっかけとする数十年にわたる政府の戦略的政策と投資によって実現したと伝えた。また、かつて横行したレアアースの密輸も、中国政府による監視強化、国が管理する工場への集約によってほぼ解決したと紹介している。

一方、米国もかつては世界最大のレアアース磁石産業を誇ったものの、中国の勢力台頭とは対照的に衰退の一途を辿ってきたことを指摘。カリフォルニア州のパス山鉱山は環境問題で閉鎖され、再開後も競争力不足で苦戦していると伝えた。また、レアアースにおける中国依存から脱却するために米国が現在グリーンランドやウクライナからの調達、オーストラリアのライナス社との協力、国内の開発プロジェクト推進といった施策に取り組んでいるとしつつ、自らのサプライチェーン構築には10年以上の時間と100億ドル(約1兆4500億円)以上の巨額な投資が必要と見積もられており、その実現は依然として困難な状況だと伝えた。

記事は、米国による相互関税などの制裁を「恣意的」とする一方で、中国によるレアアース輸出規制については「米国の制裁とは天と地の差があり、国際サプライチェーンに影響を与える行政措置には常に慎重であり、やむを得ない時にのみ行動する」と説明し、堪忍袋の緒が切れた「やむを得ない」対抗措置であることを強調している。

そして、「レアアース輸出規制は米国の製造業回帰の幻想を打ち砕き、一部の米自動車メーカーが部品生産を中国に移転せざるを得ない状況に直面している」とし、自国の利益ばかりを優先した関税政策により米国が大きなしっぺ返しを食らう皮肉な結果になっているとの見方も示した。(編集・翻訳/川尻)

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