2025年7月22日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国が国内製造業の過当な競争に大ナタを振るう動きを見せていると報じた。
記事は、中国が最近、「内巻」と表現される製造業における過剰な価格競争に対し断固たる姿勢を示しており、生産能力削減の動きを加速させているとし、共産党指導部が今月に入って価格競争の監督強化を宣言、公式メディアも「内巻」に厳しい警告を発したと紹介。
そして、鉄鋼やセメントなどの生産能力削減によって4年半続いた工場出荷価格の下落に歯止めをかけた15年前の供給改革当時よりも、民間企業比率の増加や、地方と中央レベルでのインセンティブメカニズムの不整合、および生産能力削減によって生じる失業を吸収するための他の経済部門での刺激策の選択肢が限られていることなどから、実現のハードルは15年前よりもはるかに高くなっているとの見方を示した。
まず、民間企業比率の増加について、15年前は国有企業が多かったため行政命令による生産能力削減が比較的容易だったのに対し、現在は民間企業の比率が高く、不確実性を伴う市場原理による淘汰が必要になっているとした。
次に、地方政府のインセンティブの不一致については、地方政府が雇用創出やサプライチェーン投資誘致のため、新興産業を中心とする産業育成に力を入れており、真逆と言える中央政府による生産能力削減方針の足を引っ張る可能性があることを指摘した。
また、中国国内で国有企業を含む多くの企業で人員削減や賃金カットを行っており、若年層の失業率は14.5%にも達していると指摘。中国政府が雇用を社会安定の鍵と位置づける中で、生産能力削減を伴う供給改革はさらなる雇用機会の減少を引き起こすおそれがあり、かつての不動産業のようにその受け皿となる業種が存在しないことも問題点として挙げた。
このほか、米国との貿易戦争による価格競争の激化で工場の利益が圧迫されていることも生産能力削減の改革を進めるうえで逆風となっていること、改革を断行すれば中国政府が重視している年間経済成長率5%の目標達成が難しくなることなどにも言及。改革は慎重かつ小規模なものにとどまる可能性が高く、抜本的な問題解決には長い時間がかかることが見込まれると評した。(編集・翻訳/川尻)