仏国際放送局ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語版は21日、中国で「スパイ罪」により日本人に相次ぎ有罪判決が下される中、「在中日本人が急減している」と報じた。

中国・北京市第二中級人民法院は7月16日、スパイ罪で起訴されていたアステラス製薬の中国子会社の60代の日本人男性社員に対し、懲役3年6月の実刑判決を言い渡した。

男性は2023年3月、日本への帰国直前に北京で拘束され、同年10月に正式逮捕。24年8月に起訴され、11月に初公判が開かれていた。

日中関係筋によると、本人は控訴しない意向を示しており、判決は確定する見通し。勾留期間が刑期に算入されるため、出所は25年9月ごろとみられる。日本政府はたびたび早期釈放を中国側に要請していた。なお、今年5月には、別の50代の日本人男性が上海でスパイ活動を行ったとして懲役12年の判決を受けている。

RFIの記事は「14年に中国で『反スパイ法』が施行されて以来、スパイ容疑で中国当局に拘束された日本人は増加を続け、これまでに少なくとも17人が拘束され、そのうち11人が実刑判決を受けている。最長の刑期は15年に及ぶ」と説明。日本側が「中国のスパイ罪は適用範囲が広く、定義が曖昧で、司法手続きも不透明。在中日本人の間で不安が広がっている」と懸念を示していることを伝えた。

一方、「日本では現在『スパイ防止法』、つまり『反スパイ法』は存在していない。これは先進国の中では珍しく、世界各国の多くが同様の法律を有しているのに対し、日本は第2次世界大戦後から今日に至るまで、外国人が『スパイ罪』で刑事処罰を受けた事例は1件もない。

スパイ行為に対する直接的な処罰の法的根拠がないため、仮に外国人スパイを摘発しても、周辺の法律を適用して国外退去処分とする程度の極めて軽い対応にとどまる」と指摘した。

また、「日本社会は情報の透明性が非常に高く、『機密情報』自体が非常に少ない。そのため、中国で『スパイ行為』とされるような行動も、日本ではほとんど問題視されることがない。この違いから、日本人が中国に渡航した際、何がスパイ行為に該当するのかを理解するための基準がなく、戸惑うことが多い」と解説。「中国で何らかの情報収集行動を行ったとしても、それが中国の法律に照らして『違法』であるという認識を本人が持っていない場合が多い」とした。

記事はさらに在中日本人についても言及。外務省のデータを引用し、「2000年以降、日本企業の中国進出に伴い、中国に居住する日本人の数は急速に増加し、12年にはピークとなる15万人超を記録。その後は減少傾向にあり、22年10月には10万2066人に。そして、23年には10万1786人と前年より0.3%減少、24年にはさらに4.2%減り、20年ぶりに10万人を下回った(約9万7500人)」と説明した。

そして、「この傾向は、中国経済の減速に伴うビジネス環境の悪化や、安全面での不安の高まりと密接に関係しているとみられている。特に改正された『反スパイ法』(23年)により、中国への渡航に消極的になる日本人が増え、企業も家族帯同での現地派遣を避けるケースが目立ってきている」と伝えた。

記事は、日本だけでなく中国と関わりのあるほかの国や地域でも同様に懸念が広がっていることにも触れた上で、「改正法では国家機密だけでなく、『国家の安全と利益に関わる文書』なども広くスパイ行為の対象に含まれるようになった。

これにより、企業が通常行っている情報収集活動すらスパイ行為と見なされる可能性がある。国家機密の保護は重要であるにせよ、違法行為の定義や適用範囲は厳格に限定されるべきだ」と報じている。(翻訳・編集/北田)

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