フランスのリモージュにあるアドリアン・デュブーシェ国立博物館で4日未明、何者かが忍び込んで中国で作られた歴史的陶磁器3点が盗まれる事件が発生した。3点の価値は最低でも650万ユーロ(約11億2000万円)とされる。

フランスメディアのRFIが伝えた。

複数の人物が4日午前3時15分ごろ、博物館の窓ガラスを破って建物内に侵入した。警報システムが作動し、警察が現場に駆け付けたが、侵入者は現場にはすでにおらず、陶磁器3点が盗まれていた。警報システムが作動してから警察が現場に駆け付けるまでは、15分程度だったという。

リモージュ市のロンベルティ市長はメディアに対して、博物館の安全システムは正常に作動していたが、さらに強化する必要があると表明した。市長はまた、この盗まれた品が最高の価値をもつ犯罪行為は、コレクターが犯行実行役に指示して行わせた可能性があるとも述べた。

盗まれた品は元代(1279-1368年)の青花麒麟文盤、明代(1368-1644年)の青花一束蓮文盤、清代(1644-1912年)の青花纏枝花卉文賞瓶だった。この3点はフランスの「国宝文化財」にも指定されているという。政府はただちに、盗まれた品が国外に流出することを防ぐ措置を取ったという。

フランス政府で文化財などの管理も所管する国家製造局のルモワーヌ局長は「標的を絞った窃盗犯罪だった」と述べた。文化財を狙う盗みは、標的の価値を知る「目利き」が行うものという。ルモワーヌ局長はさらに、犯人は盗んだ3点に以前から的を絞っていたとの考えも示した。

リモージュは18世紀以降、陶磁器など高級工芸品を作り出す、フランスにおける中心地になった。最大のきっかけは、リモージュ出身のフランソワ・グザヴィエ・ドントルコル(1664-1741年、中国語名は殷弘緒)が司教として清朝時代の中国に滞在したことだった。ドントルコルは7年以上にわたって景徳鎮の磁器を徹底的に調べた。その後、リモージュでの磁器づくりが隆盛を極めたことで、「たった一人の宣教師が、中国千年の磁器産業をかたなしにした」との「ご当地ジョーク」も生まれたという。(翻訳・編集/如月隼人)

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