経済界あるいは経済の専門家の間では、中国ではデフレが進行中との見方が定着しつつある。フランスメディアのRFIはこのほど、中国経済の現状の専門家の見方を紹介する記事を発表した。
中国は継続的なデフレに直面していることは確かで、公式データもそれを裏付けている。2025年8月の消費者物価指数は前年同月比で0.4%下落した。これは今年2月以来最大の下落幅だった。食品価格は4.3%急落し、中国人にとって重要な食材の豚肉の価格も急落し続けている。この結果、中国の農民は現在、豚1頭を飼育するごとに平均70元(約1500円)の赤字を被っている。中国ではしばらく前から電気自動車(EV)や太陽光パネルの生産過剰が問題なっているが、中国の養豚業も同様に、深刻な過剰生産能力の問題に直面している。その背景には、わずか5年足らずの間に大規模な「工業化養豚」が伝統的な個人経営の養豚に取って代わったことがある。
中国政府は2024年冬以降、家電や携帯電話などの割引券を配布し、8月には1年間の個人消費ローン利息補助などの施策を発表して消費を刺激しようとした。しかし、2025年1-8月には食品、衣料品、電子製品などすべての商品についての小売売上高の前年同期比の成長率はわずか3.4%にとどまり、最近では最低水準の伸びだった。
また、中国の不動産分野も同様に下落傾向にあり、新築住宅の平均価格は2022年4月以降、下落し続けている。北京、深セン、広州などの、中国全国に強い影響を及ぼす一線都市と呼ばれる大都市では、8月の住宅価格が0.1%下落した。一線都市に続く二線都市では0.3%、さらに規模が小さい三線都市や四線都市では0.4%の下落だった。
今回の中国経済におけるデフレは悪性の循環に陥っている。企業は商品の販売利益が減少したことで生産を抑制し、採用を減らした。その結果、今年8月の中国の若年層失業率は過去2年間で最高水準の18.9%に達した。なお、この数字は中国政府の公式統計によるものだ。。
消費者は貯蓄を増やし支出を減らし始めた。さらに、消費者は物価が下落し続けていることで、購入をさらに先送りするようになった。このことで商品の需要がさらに抑制されている状態だ。
悪いことに、国際的な地政学的情勢は不安定であり、中国と米国および欧州連合(EU)との貿易関係の緊張が続いていることが、中国の国際経済環境を悪化させ、一般家庭や投資家の先行き感を悪化させている。
加えて、中国では人口高齢化が進行し、出生率の低下も避けられない状況だ。
EU諸国の企業による中国法人の団体であるEU中国商会のイェンス・エスケルンド会長は17日に発表したリポートの中で、「我々は中国経済が将来的に持続可能な成長を実現することを望んでいるが、そのためには今すぐに、構造的な課題を解決する必要がある。たとえば、悪化しつつあるデフレや、需要と投資主導の供給が成長との間に深刻な不均衡を生み続けていることなどだ」と表明した。
多くの経済専門家も同様の見解を持っており、懸念は高まりつつある。中国経済は衰退しつつあり、国内需要の低迷、若年層の失業率の上昇、不動産などの業界の停滞が、中国経済を持続的なデフレスパイラルへと導いている。
英国に本拠を置く国際的な経済調査会社のキャピタル・エコノミクスでエコノミストを務めるホワン・ズーチュン氏は、「中国国内の需要の弱さと継続的な供給過剰を考慮すると、近い将来にデフレ環境が改善する可能性は低い」と指摘した。
中国に拠点を置く資産運用および投資管理会社の品信資産管理のチーフエコノミストである張志偉氏は、「年間5%の経済成長目標が達成困難にならない限り、中国政府が再び大規模な景気刺激策を打ち出す可能性は低い」との見方を示した。(翻訳・編集/如月隼人)