2025年11月19日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、高市早苗首相の「存立危機事態」関連発言で急速に悪化した日中関係について有識者の見解を紹介した。
記事は、高市首相が国会で「台湾有事」は日本にとって「存立危機事態」になり得ると発言したことに中国が強く反発し、駐日中国外交官による非難や中国外務省による批判の強化、尖閣諸島周辺での中国海警船の巡航といった動きが連鎖的に発生したと紹介。
その上で、高市首相の発言は日中間の対立において、これまでぼやかされてきた台湾問題を本格的に表面化させたと指摘。国際政治学者で東京大学研究員の林泉忠(リン・チュアンジョン)氏が台湾問題を中国大陸にとって極めて敏感な事柄とし、今回が中国側がこの問題をめぐって初めて日本へ強い意思表明を行うケースになり、歴史問題、領土問題と並ぶ第3の対立要因として表面化したとの認識を示したことを紹介した。
また、中国側の反発については、東アジア問題に造詣の深い台湾出身アナリストの楊皓暐(ヤン・ハオウェイ)氏がその迅速さを「少し意外だった」としたほか、法政大学法学部の福田円教授は中国側の狙いとして「高市政府が今後、台湾関連の事柄に積極的に介入しないようけん制すること」を挙げつつ、中国による報復措置がすべて事前に計画されたものではなかった可能性についても言及、事態に「偶発的な要素」もあったとの認識を示したことを伝えている。
一方で、林氏が「当局は国内問題に対する民衆の不満を和らげるために日本に対して強硬な姿勢を見せている可能性も排除できないが、不満が経済の低迷に飛び火し、政府への批判へと転換されることを望まない」とし、過去のような大規模な反日デモには至らない可能性があると予測したほか、「日中関係は摩擦を繰り返しながらも最終的には必ず平穏に戻ってきた。中国が永遠に隣国との交流を断つことは不可能」とし、現状では沈静化の糸口が見いだせていないものの時間をかけて収束に向かうとの見通しを示したことを紹介している。
記事は、今回の問題が日本に与える影響について、福田氏が日本企業の対中投資リスクの上昇、人的交流への影響を挙げつつも、中国への慎重姿勢が強まることから「日本国内のタカ派の論調がさらに強まるとは限らない」との見方を示し、楊氏は日本経済や日本企業への影響から高市政権は沈静化に向けた動きを取る必要性があるものの「安易な譲歩をすれば国内のイメージを損ないかねない」というジレンマを抱えることになると論じたことを伝えた。(編集・翻訳/川尻)











