ミミズが這(は)ったような字を書く男、佐藤です。自慢じゃないが、私は猛烈に字が汚い。
自分ではちゃんと読むことができるのだが、私以外の人は解読不能なオリジナリティの高い文字を書く

もしかして私の字が汚いのは、筆記具が原因かも? いや、モノのせいではない。それはわかってるけど、もしかして良いものを使ったら、劇的に読みやすくなる可能性もゼロではないはずだ。「いつ何時でも、あらゆる可能性を否定すべきではない」、それが私の信条である。

そこで、東京・銀座の文具の専門店「伊東屋」に行って、お店の人におすすめのボールペンを尋ねてみた。

・自慢じゃないが字が汚い
私は日頃からカバンの中に2冊のノートを忍ばせている。
1冊は仕事用で、もう1冊はライフワークのポールダンス用である。割と頻繁に使うのはポールダンス用の方で、練習の内容とか挑戦中の技の気づきなどをこまめに書き記している。

「スマホがあれば、筆記具はいらないでしょ」と思われるかもしれないけど、何かを書きとどめておくのには、ペンとノートが手っ取り早い。スマホはいちいちアプリを起動して、フリック入力する方が私にとってははるかに面倒なのである。

とはいっても、筆記具にとくにこだわりがあるわけではない。現在使っているボールペンはジョイフル本田のポップアップストアでもらった、ロゴ入りのジェットストリームだ。


ペンはその時々で、手近にあるものを使っているにすぎない。したがってとくに愛着もないので、すぐに失くすし、落として壊したりしてしまう。

さて、私の字がどれほど汚いか。書いたものをひと目見れば、どの度合をご理解頂けるはずだ

何が書いてあるのか、読み解くのは難しいかもしれない。私にはすべてわかる。
あえて説明はしないが、すべての文字を容易に読み解くことができるぞ。まあ、自分が読めればいいという文字を書いているのだから、キレイでないのはある意味、必然なのだが……。

ノートの走り書きが汚いのは仕方ないとして、問題なのは自分の名前すらキレイに書けないことだ。現在愛用のジェットストリームで書いてみると……。

この有様である。我ながら、読めるからOKでは済まないレベル
役所や病院で記名する際、ぶっちゃけ恥ずかしい。いい歳してキレイに字も書けないことを、内々に恥じている次第である。

・高級筆記具を求めて
このまま残りの人生を汚い字で生き抜くのは心もとない。そんなわけで、銀座の「伊東屋本店」にやって来た。ここは120年以上の歴史を誇る文具販売の老舗である。

ここなら、私のような “字汚い民” でも扱える、良質な筆記具があるであろう


地上12階・地下1階のそのすべてが文具売り場。……というわけではなく、地下には多目的ホール。12階にはレストラン。そして11階には野菜を作るファームがあるそうだ。

いずれ、それらも拝見させて頂くとして、喫緊(きっきん)の問題は私の字だ。それを少しでも良い方向に導くために3階の「高級筆記具」を見に行こう。


「Luxury pens」、それこそ私の求めるものである。

・のび太も嫉妬する注文
陳列されている品々を見ると、私の想定をはるかに超える金額のボールペン・シャープペン・万年筆などがズラリと並んでいる。完全に間違えた! 自分の想定した相場よりも桁が1つ、いやモノによっては2つくらい違う。

やっぱ、私みたいな字汚い民は100均で身の丈にあった筆記具を買うべきだよな……。

だが! それじゃあ、いつまで経っても緊張感のある字を書けない! このまま人生が終わってしまう! せめて、志だけでも高く持たねば。

ってことで、意を決してお店の人に尋ねた。

佐藤「字が汚いんですけど、キレイに書けるボールペンはありますか?」

口に出してみて、自分がおかしなことを言ってるのはわかっている。そんな便利なペンはドラえもんでも登場していない。のび太くんも嫉妬するほどムチャクチャな注文だ。わかってる! そんなの自分が1番わかってる! 字汚い民が使ってもキレイに書けるボールペンなんてない。

だが、そんなおかしな質問に、お店の方は大変丁寧に対応してくれた

お店の人「矯正ペンのようなものはございませんが、書きやすいものであればご紹介は可能です」

それでいいです! 書きにくいより書きやすい方が、きっと文字はキレイになるはず。

・ROMEO No.3
ってことでおすすめされた商品がコレ。試し書きをして気に入ったので購入しました。

「ROMEO(ロメオ) No.3 ボールペン細軸」。色はイタリアンブルーである。お値段はなんと、1万4300円! 自分史上最高額のボールペンだ。

この商品は伊東屋のオリジナルブランドであり、実は2023年の伊東屋オンラインの年間ランキング1位に輝いたのが、これの店舗限定モデルなのである。

それにしても立派な筆記具だ。ボールペンを買って、説明書と保証書がついてきたのは初めて。良いものにはちゃんとこういうのが付いてるんだねえ。

・実際に書いてみると…
ロメオの誕生は1914年、伊東屋創業から10年経った頃に、紳士淑女におすすめする筆記具として、初代の万年筆が誕生したそうだ。2004年に創業100周年を記念して2代目(No.2 )の限定モデルが発売され、2009年にこの3代目(No.3)が登場している。

初代のクラシカルなデザインを踏襲した、段差のないシャープなフォルム。持つと、ずっしりとほど良い重量感がある。書き筋が安定しそうな、ほどよい重さだ。

マーブル柄には個体差があって、1本1本、その表情が異なる。私は青い縦縞を思わせる模様が気に入って、この1本を選んだ。

そして、繰り出し式の天冠(てんかん)は時計の竜頭(りゅうず)をモチーフにしているそうだ。

伊東屋の商品ページにはこうある。「一緒に時を過ごすパートナーとしてもらえたら、という想いを込めています」、く~ッ! こういう思い、好き! 俄然愛着が湧いちゃうよね!

天冠パーツをまわすと、ヌルっとしたモーションでペン先があらわれる。そのまわし具合が心地いい! カチカチボールペンと違って、品のあるモーションなのである。ヌルっと出てくる感触が気持ちよくて、ムダに出し入れしちゃうよ。

リフィルにはゲルインクを採用しており、書き心地がとても滑らか。まるで紙の上を滑るようにペンが走る。なるほど、お店の方が言っていたように、バランスもよくてとても書きやすい。

このペンなら、多少なりとも私の字のクオリティも向上するのでは? ってことで名前を書いてみたところ……。

ビフォーアフターを比較してみると……

変わってないですよね~……………………

わかってる! わかってるよ、ペンの問題ではない。だが、上等なペンを持つと、普段よりも緊張感があって、下手なりにでもしっかり書こうと思うのですよ。その緊張感を得られただけでも意味ある買い物だったな、うん。

とにかく立派なペンなので、大事に使うとしよう。字の上達はまた別の手段で……

・今回訪問した店舗の情報
店名 銀座伊東屋本店
住所 東京都中央区銀座2-7-15
時間 10:00~20:00 日・祝10:00~19:00

参考リンク:銀座伊東屋[12]
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

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