ロックファンの多くは、クリスマス・ソングは一様にダサいと決めつけている。実際、そのほとんどがダサい。しかし、クリスマスの奇跡が起こり、素晴らしいホリデイソングが生まれることもある。1963年リリースのフィル・スペクターのクリスマスアルバムが良い例だ。しかし、運悪くジョン・F・ケネディが暗殺された日とリリース日が重なったため、当時は誰も「フロスティ・ザ・スノーマン」を歌おうとは思わなかった。このアルバムはウォール・オブ・サウンドの手法を用いた大作であり、スペクター作品の中でも指折りのLPであったものの、残念ながら大勢の人達が聴き逃してしまった。それでは、音楽史の中で最高の呼び声が高く、最も記憶に残っているクリスマスソングを16曲紹介していく。
ダーレン・ラヴ「クリスマス(ベイビー・プリーズ・カム・ホーム)」

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ダーレン・ラヴ自身がローリングストーン誌に語っているように、この音楽史上最高のクリスマスソングの制作には、3人のユダヤ人のミュージシャン(フィル・スペクター、ジェフ・バリー、エリー・グレニッチ)が参加していた。U2からレイトン・ミースターに至るまで多くのミュージシャンがこの曲をカバーしているが、ラヴの感情溢れる表現、そして、爆発的な歌唱力には及ばない。それでは、「レイト・ショー・ウィズ・デヴィッド・レターマン」でダーレン・ラヴの圧倒的な歌声を堪能しよう。ラヴは86年以降、ほぼ毎年この番組でこの曲を歌っている。
ジョン・レノン「ハッピー・クリスマス(戦争は終わった)」

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同じくフィル・スペクターがプロデュースした1971年発表のこの曲は、クリスマスソングというよりも、ベトナム戦争への反戦ソングだ。
ブルース・スプリングスティーン「サンタが街にやってくる」

2007年12月19日、ロンドンでスティーヴン・ヴァンザントとパフォーマンスを行うブルース・スプリングスティーン
1975年12月、ロング・アイランドのライブを録音し、1985年の「マイ・ホームタウン」のB面としてリリースされたブルース・スプリングスティーンのこの曲は、瞬く間にクリスマスソングとして定着した。スプリングスティーンは、通常、この曲をクリスマス前後のライブで歌うものの、時折、異なる時期で歌うこともある。そのなかでも2009年6月、ボナルーでのパフォーマンスは特に有名だ。
マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス」
1994年にマライア・キャリーが「恋人たちのクリスマス」をリリースするまで、ホリデイソングの新しい定番はなかなか生まれなかった。キャリアのピーク間近にマライア自身が作詞を担当した、モータウンにインスパイアされたこの曲は、マライア・キャリーの代表作の一つとなった。マライアは2010年リリースの2枚目のクリスマスアルバム『メリー・クリスマス II』のためにこの曲のレコーディングを再び行っている。
ビーチ・ボーイズ「リトル・セイント・ニック」

1964年、ビーチ・ボーイズのクリスマスアルバムの宣伝用画像(Courtesy of Capitol Records)
フィル・スペクターのアルバムと同じ運命をたどってしまったものの(ジョン・F・ケネディの暗殺の直後にリリース)、ビーチ・ボーイズのオリジナルのホリデイソング「リトル・セイント・ニック」はヒットした。この曲は「リトル・デュ―ス・クーペ」の歌詞を変えただけだが、「リトル・セイント・ニック」は元の曲よりも長い間親しまれることになった。
チャック・ベリー「ラン・ルドルフ・ラン」

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1958年、チャック・ベリーの人気絶頂期にリリースされたこの曲は、事実上「リトル・クイニー」を書き直したものだが、チャック・ベリーの代表作として、しっかりと自立している。レーナード・スキナード、ハンソン、ビリー・アイドル、そして、グレイトフル・デッドがこの曲をカバーしている。
アダム・サンドラ―「ハヌカソング」

「ハヌカの曲を聴くチャンスのないユダヤ教のかわいい子供達のために、この曲を書いたんだ」とアダム・サンドラ―は、このシーズンの名曲について説明している。当たり前だが、これはクリスマスソングではない。しかし、「アイ・ハヴ・ア・リトル・ドレイデル」以来の人々の関心を集めたハヌカの歌として、このリストで取り上げる価値があると判断した。サンドラーはこの曲を4バージョン作っているが、1999年リリースの2番目のバージョンが飛びぬけて素晴らしい。このバージョンの「ハヌカソング」には、伝説的な歌詞”ブルース・スプリングスティーンはユダヤ教徒じゃないけど、僕の母はそう信じてる”が君臨する。
ザ・ロネッツ「フロスティ・ザ・スノウマン」

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子供なら誰でもこの曲を知っている。過去60年にわたって、大勢のミュージシャンがこの曲をカバーしてきたが、ザ・ロネッツによる「フロスティ・ザ・スノウマン」の右に出るものはいない。ちなみにこの曲をリリースする3カ月前に「ビー・マイ・ベイビー」のレコーディングが行わた。また、ロニー・スペクターのクリスマスコンサートでこの曲は重要なパートを担っている。
バンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」

1984年、ボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロがエチオピアの飢餓問題の救済に立ち上がり、イギリスの一流ロック・ミュージシャンを大勢集め、クリスマスソングのレコーディングを行った。この一度きりのスーパーグループには、ボノ、フィル・コリンズ、ボーイ・ジョージ、スティング、ジョージ・マイケルを含む大物ミュージシャンが名を連ねている。この曲は大ヒットし、翌年にはライヴ・エイドが行われている。
ポール・マッカートニー「ワンダフル・クリスマスタイム」

1979年、ポール・マッカートニーがシンセを駆使した「ワンダフル・クリスマスタイム」をリリースした時、ウィングスは解散直前の状態であった。この年は最高のクリスマスを過ごしたのかもしれないが、翌年は年明け早々に痛い目に遭っている。1980年の1月、日本の空港で約220グラムの大麻の不法に所持していたことが分かり、逮捕されたのだ。ポールは釈放されるまで10日間を留置場で過ごした。
ボビー・ヘルムズ「ジングルベル・ロック」

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この最強のロカビリー・クリスマスソングをレコーディングしたのはナッシュヴィルのボビー・ヘルムズだが、この曲を作ったのは実は広告会社のお偉いさんと広報を務める人物であった。1983年、ダリル・ホール&ジョン・オーツがこの曲をカバーし、大ヒットを記録している。
アル・ヤンコビック「ザ・ナイト・サンタ・ウェント・クレイジー」

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アル・ヤンコビックは通常誰でも楽しめる曲を提供しているが、1996年リリースのこの曲はかなりきわどい。ソウル・アサイラム「ブラック・ゴールド」のリズムに乗せて、ヤンコビックは「サンタは火炎放射器を持ち、ブリッツェン(トナカイ)をBBQにした/その後、肉にかじりつき、"鶏肉みたいな味だな"と言った」と歌っている。
ダーレン・ラヴ「クリスマスタイム・フォー・ザ・ジューズ」
2005年の『サタデー・ナイト・ライヴ』で、ラヴはユダヤ教徒だけのためのクリスマスソングのレコーディングを行った。ユダヤ教徒がクリスマスの日に全米で自由気ままに行動するユダヤ教徒を描いた滑稽な短編アニメで、ラヴはクリスマスを祝わないことで得られる多くのメリットを歌っている。「ついに列に並ばずにキング・コングを観れるわ」「中華料理店でご飯を食べて、甘いワインを飲めるのよ」もその一部だ。
RUN-D.M.C.「クリスマス・イン・ホリーズ」

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RUN-D.M.C.の「クリスマス・イン・ホリーズ」はラップのクリスマスソングの草分け的な曲であり、クイーンズにある同グループの故郷に捧げたものだ。1987年リリースのスペシャルオリンピックスを支援するチャリティアルバムにU2、ボン・ジョヴィ、そして、スティングの曲とともに収録されている。
カニエ・ウェスト「クリスマス・イン・ハーレム」

2008年撮影のカニエ(Photo by W. VanDerpe)
RUN-D.M.C.の「クリスマス・イン・ホリーズ」に続くカニエ・ウェストのクリスマスソングは、リリースの翌年には定番と化していた。ティアナ・テイラー、キャムロン、ジム・ジョーンズ、そして、プシャ・Tの力を借り、カニエ・ウェストはクリスマスを鮮やかに、そして、楽しく彩っている。「気温は(華氏)40度以下で、冷たい風が吹きつける中、フロントガラスの雪を落とさなきゃいけない/でも、ベイビー、今夜は生きてて良かったと思える素晴らしい夜だ/君と一緒にいることができて、本当にハッピーなんだ」とラップで歌っている。
シー&ヒム「ザ・クリスマス・ワルツ」

クリスマスにはお高くとまった、気取った要素がつきものだが、シー&ヒムを組むズーイー・デシャネルとM・ウォードは2011年リリースのクリスマスアルバム『A Very She & Him Christmas』でこの部分を極端に強調している(このアルバムの豪華版には、ニットキャップと手袋が同封されていた!)。ビデオクリップで、このキュートなデュオは、サミー・カーンとジューリー・スタインが作詞したジャズ感溢れる名曲「ザ・クリスマス・ワルツ」をザ・トゥナイト・ショー・ウィズ・ジェイ・レノで披露している。