2017年の下半期、全米チャートNo.1に輝いた「Rockstar」で一躍注目を集めたポスト・マローン。そんな彼にローリングストーンが密着ルポを敢行(翻訳したものは現在発売中の「Rolling Stone Japan vol.01」で掲載)。
トップスターの素顔を伝えている。

俺はずっと孤独だし、いつだって不安を抱えてる。
このでっかい脳が、いろんな思考を扱ってるんだよ。

コール オブ デューティーの新作が発売された昨夜、興奮したポスト・マローンは明け方の6時までXboxの前から離れられなかったという。そして16時現在、彼は再び夢中になっている。金曜の午後、富裕層が多く住むロサンゼルス郊外のターザーナにある彼の自宅の窓には、遮光ブラインドが下ろされている。「こいつ(愛犬のこと)は太陽が苦手だからな」。壁一面のプロジェクター用スクリーンを指しながら、彼はそう話す。

22歳という若さで、マローンはこの国におけるトップスターの仲間入りを果たした。現時点でシングル「Rockstar」は、4週間連続で全米チャートのトップに君臨している。”女とヤってクスリをキメる/気分はロックスターだぜ”。21サヴェージをフィーチャリングした快楽主義の賛美歌は、運命論に中指を突き立ててみせる。
スペーシーで冷たいトラックに乗せたリリックで、マローンは自身をボン・スコットとジム・モリソンという、若くしてこの世を去った2人のロックスターになぞらえている。



彼の自宅はその成功ぶりを物語る品々で溢れている。リビングにある光り輝くクロムメッキの足が印象的なビリヤード台の向かいには、過去の作品のプラチナディスク認定記念盤が、白い大理石の床の上で平積みにされている。しかしそれでさえ、アメリカ国旗を手にしたケンタウロス姿のマローンが、潰れたビールの缶に覆われた大地に立ち尽くす肖像画のインパクトには及ばない。

素足にイタリア製高級ブランドの黒いスウェットパンツ、そして食べ物のシミがついたオーバーサイズのTシャツ姿のマローンは、白レザーのソファに腰かけている。2カ月に及ぶツアーを終えたばかりの彼はこう語る。「疲れ切ったけど、ファンに会えるのはいつだってうれしいもんさ」。彼はこう付け加える。「ハロウィンのショーでは、俺に扮したファンがたくさんいたよ。誰にでもできるけどな、ホームレスに見えりゃいいんだから」

カウンターには『Guns & Ammo』の11月号が置かれていた。それが筆者の目に留まったのは、マローンが取材後に行きつけの射撃場に行く予定だと話していたためだ。「銃は最高さ。
マジで極上の気分になれるんだ。ストレス発散にサンドバッグを殴るのと同じようなもんだよ」

結局当日の射撃練習は断念したものの、「俺のコレクションを見せてやるよ」。そう言ってマローンが向かったウォークインクローゼットの中には、息を呑むほどの量の武器がストックされていた。「これはM14、海軍の特殊部隊が使う銃だ」。彼はずっしりと重いライフルを筆者に手渡しながらそう話す。それを取り上げると、今度は銃身に彫り込まれた装飾模様が印象的な、「ジェームス・ボンドの銃」ことワルサーPPKを差し出した。「これは使ったことないんだけどな」。彼は44デザート・イーグル、M1911、グロック製の金色の拳銃2丁など、自慢のコレクションを次々と披露した。最後に見せてくれた、カリフォルニア州法に触れないよう改造されたコバルトのアサルトライフルは、彼の一番のお気に入りだという。「HALOに出てくるやつみたいだろ?」

吸っていたタバコをトイレの便器に投げ入れ、彼は長く付き合っているガールフレンドのアシュレンとシェアしているベッドルームに向かった。2人のベッドのすぐそばで床に横たわっている、ポンプアクションのモスバーグ製ショットガンについて彼はこう話す。「自宅での護身用にぴったりの銃さ」。
枕の下から取り出したレーザーサイトを備えたFN ファイブセブンには、侵入者の目をくらませるためのストロボライトが搭載されている。別の枕の下に忍ばせてあったグロック19を手に取った彼はこう話す。「これはアシュレン用。扱いが簡単だからな」

「ホーリー・シット!」。思わずそう連呼していた筆者は、なぜこれほどの数の銃を所持しているのかという真っ当な疑問を、表現を変えながら何度も投げかけた。「趣味と護身目的を兼ねているからさ。世の中は物騒だからな」。彼はそう話す。「もしあんたが俺を攻撃すれば、もちろん俺はやり返す」。身の危険を感じたことがあるのかという問いに、彼は首を横に振った。「有名人として心構えみたいなもんさ。守るべきもの、そして仲間を、俺はたくさん抱えているんだ」

彼はこう続ける。
「今の世の中はクソみたいな状況だ。人々の権利がどんどん奪われてる。ホワイトハウスがクソったれどもに牛耳られてるからな。トランプは支持しない。でも問題は奴だけじゃない。もっと悪いことが起きようとしている気がするんだよ」。取材の数週間前に起きたアメリカ史上最悪の銃乱射事件は、彼の考えに大きな影響を及ぼしていた。「人々が敏感になるのは当然さ。でも銃の所持はアメリカ国民に与えられた権利だ。コンサートに行くのにもビクビクするような今の状況は最低だけど、そこらじゅうにいる悪い奴らが、あらゆる手を尽くして武器を手に入れようとしていることは事実なんだよ」

ポスト・マローンと銃規制について議論することになるとは考えもしなかったが、筆者はラスベガスの銃撃犯がバンプストックと呼ばれる装置を使ってライフルを完全自動化していたことに触れ、そのような武器が世に出回ることの意義について疑問を投げかけた。マローンはどう返答すべきか熟考している様子だった。「さぁな……規制を細分化して強化させるとか、射撃場で仲間に使用目的について知らせるようにさせるとか?」。
彼はさらに考えを巡らせながらも、最後には肩をすくめて笑ってこう話した。「俺に分かるもんか。俺はただ金を稼いで、外を出歩きたいだけさ」

パーティアニマルのイメージが強い彼だが、成功への渇望と憂いが入り混じった2015年発表のシングル「White Iverson」以降、彼の音楽は常に闇を垣間見せている。筆者がその点について指摘すると、彼は同意する。「俺はずっと孤独だし、いつだって不安を抱えてる」。頭を指で叩きながら、彼は笑ってこう話す。「このでっかい脳が、いろんな思考を扱ってるんだよ」

ポップチャートの頂点に君臨しながらも、彼はこう話す。「麻痺しちまってるだけさ」。彼は現状を楽しんでいないわけではない。「Rockstar」が首位を獲得したとき、彼はオリーブ・ガーデンでご馳走に囲まれながら、アシュレンと2人で祝杯をあげたという。「俺はオリーブ・ガーデンが大好きなんだ」。そう話す彼は、金色の「loubi for ever」の刺繍が施されたロゴが目を引く1700ドル相当のルブタンを含む、高級ローファーのコレクションを見せてくれた。
「まったく履いてないんだけどな」。彼はニヤリとしてそう話す。

ポスト・マローンことオースティン・ポストは、ニューヨークのシラキュースで生まれた。彼が9歳の頃、父親がダラス・カウボーイズの居留地の管理を任されたことをきっかけに、家族全員でテキサスに移り住んだ。ギター・ヒーローに夢中だったオースティンは、やがて本物のギターを手にする。彼はありとあらゆるタイプの音楽に慣れ親しんだ。高校時代には『ヤング・アンド・アフター・ゼム・リッチズ』と題されたヒップホップのミックステープを制作したほか、「メタル・バンドとインディ・バンドでプレイしていた」という。ハンク・ウィリアムス、エイサップ・ファーグ、バイオハザード、ファーザー・ジョン・ミスティ等をフェイバリットに挙げる彼は、さまざまなスタイルに対応してみせる。ネット上では彼がボブ・ディランの「くよくよするなよ」を情感たっぷりに歌い上げる姿や、凄まじい迫力でレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「キリング・イン・ザ・ネーム」をカバーする映像を見ることができる。

ドアベルが鳴り、マローンが迎え入れたのはダラス時代からの友人であるジェイソン・プロープストだ。数年前、彼はジョークを連発しながら友人たちとマインクラフトをプレイしているところをストリーミングして以来、知る人ぞ知るネット上の有名人になっていた。2014年にプロープストがカリフォルニアのエンシノに移り住み、マインクラフトのプレーヤーたちとともに家を借りたとき、マローンは居候として彼らの厄介になりながら、音楽業界の中心であるその街で大きなチャンスを掴むことを夢見ていたという。「何が何でも成功しないといけなかった」。マローンはそう話す。「さもなけりゃチキン・エクスプレスに逆戻りだったからな」

それから1年も経たないうちに、ツテを使ってレコーディング・スタジオに頻繁に出入りするようになっていたマローンは、そこで出会ったプロデューサーのFKi 1stからレコーディングの機会を与えられる。その成果の一つ「White Iverson」は、彼がサウンドクラウドにアップするやいなや、ウィズ・カリファやマック・ミラーのツイート等によって瞬く間に話題となり、ほどなくしてマローンはメジャーレーベルとの契約を果たした。その後発表されたシングル6曲はプラチナディスクに認定される。その後もカニエ・ウエストとリック・ルービンとのレコーディングや、2016年のデビュー・アルバム『Stoney』にも参加したジャスティン・ビーバーのオープニング・アクトを務めるなど、彼は破竹の勢いで頭角を現していった。

マローンはビーバーについて「最高にクール」で「気が置けない仲間」だと話す。「あいつ最近宗教にハマっててさ。マジでカルトなやつにね」。ビーバーが所属するヒルソング教会について、彼はそう話す。「カルトじゃないよ!」。アシュレンがそう声を上げる。「完全にカルトだよ」。マローンは主張を繰り返す。「あいつこれまでに1000万ドルぐらい寄付してるんだぜ。マジでクソみたいな連中にさ。俺も昔は信心深くて、神の存在を信じてた。でも気づいたんだよ。人々が心の拠り所にするものに寄付するのは悪いことじゃないけど、奴らはその金をただ散財してるんだ。教会の天井一面を金ピカにして神様が喜ぶと思うか?」。自身の見解をビーバーに話したことがあるかという問いに、彼はこう答える。「そんな話はしないよ」(ビーバーに近いある人物は、彼が1000万ドルを寄付した事実はないとしている)

ポスト・マローンの素顔に迫った独占ルポ
 
ポスト・マローンとジャスティン・ビーバー(Justin Bieber/Instagram)

「ジャンル分けなんてくだらない」そう話すマローンにとっては、ビーバーとのコラボレーションも21サヴェージとの共演も同一線上にあるのだろう。その一方で、黒人文化に根差したアートフォームの分野で大きな成功を収める白人の自分が、紛れもないアウトサイダーであることを彼は自覚している。

日没を迎えた数時間後の時点で、マローンはコール オブ デューティとゴーストリコン、そしてレスリングゲームのWWE2K18をプレイし終えていた。ゲームと銃以外にも、彼は『POWER / パワー』や『サバイバー:宿命の大統領』等のテレビドラマにも夢中だという。ニュースはチェックしているかという問いに、彼はこう答える。「俺が興味があるのは、テレビとかで報じられないニュースだ。陰謀説とかそういうやつだよ。世の中は説明がつかないイカれた物事で溢れかえってる。ケムトレイルとかな」。陰謀説に対する興味は皮肉か本物かと尋ねた。「本物さ」。彼はそう答える。「誰でも見境なくスタンガンで攻撃するような連中だからな」

午後8時をまわり、プロープストたちは『マイティー・ソー』の新作を観に出かけるも、マローンは家で過ごすことを選んだ。ダラダラしたい気分なんだと彼は話す。ツアーの合間を縫って、彼はセカンド・アルバムの制作に励んでいる。完成間近だというそのアルバムには、ニッキー・ミナージュ、タイ・ダラー・サイン、ジョン・メイヤー、トミー・リーとのコラボレーションが収録される予定だという。「ジャンルの枠を超えた作品にしたいんだ」 

自宅内にあったスタジオは閉鎖したものの、彼が300万ドルくらいで購入を検討しているという、ユタ州北部の1万3000平方フィートを誇る豪邸には、新たなホームスタジオを作る予定だ。約7エーカーという広大な敷地を有し、「2階建てベッドが30台くらい導入される」というその新居は、彼の仲間たちにとっては最高のパーティ会場となるだろう。また人里離れたその場所は、彼とアシュレンが好きなだけXboxをプレイし、バイクを乗り回し、誰にもとがめられることなく射撃を楽しむ、2人だけの楽園になるという。「あのあたりじゃ何もかも自由なんだ」。マローンはそう話す。「サプレッサーが合法的に売られてるくらいだからな。ユタ州じゃ銃の携帯も認められてる。バックポケットに銃を入れたままスーパーに入ってってもおとがめなしだ。まさにカウボーイの世界さ」。彼は笑みを浮かべてこう話す。「待ちきれないよ」




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