キャンディスが3月27日に発表する『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』は、彼女が幼い頃から親しみ、「今の自分をつくりあげた」と語る女性シンガーたちの名曲カバーを纏めたアルバムだ。キャンディスと山崎が意気投合した経緯を語った前回の記事に続いて、今回は2人に「カバーすること」について深く語ってもらった。
―山崎さんも2007年に、『COVER ALL YO!』『COVER ALL HO!』という洋楽/邦楽のカバー集を発表されてますが、ミュージシャンにとって「カバー」っていうのはどういうものですか。
山崎:おぉ……なんだろう。影響を受けた音楽を自分のフィルターを通して表現することが、すごくスリリングなんですよね。自分の体を通すことで、自分の立ち位置がわかるというか。そういうプロセスですかね。そこにはもちろん、尊敬の気持ちもありますし。
―『COVER ALL YO!』では、スティングの「Englishman In NewYork」だったら”ロイヤルストリングスとボサノヴァを一緒に”、モンキーズの「Daydream Believer」では”ウクレレの音色を添えて”というふうに、曲ごとに独自のテーマを設けられていました。そんなふうに、自分ならではの解釈を付け加えることも大切なんですかね。
山崎:そうですね。ただ歌ったり弾いたりするだけじゃない。
キャンディス:すごくよくわかります、私も同じ意見です。やはり一番大切なのはリスペクトだと思います。
―変な話かもしれませんが、リスペクトしているミュージシャン本人に自分のカバーを聴かれることも場合によってはありえますよね。キャンディスは今回のアルバムで、ノラ・ジョーンズの「The Nearness of You」を取り上げていますが、その一方でノラがゲスト参加している曲も収録されている。となれば、彼女の耳に入る可能性は高そうです。
キャンディス:そう考えるとクレイジーですよね(笑)。でも実は、すでに彼女の前で歌ったことがあるんですよ。2016年に初めてブルーノート東京に出演したとき、ノラもちょうど来日してたのでライブを観に来てくれて。本当に影響を受けたアーティストなので、そんな機会に恵まれたのは光栄だし嬉しかったです。
―山崎さんも2002年、来日していたポール・マッカートニーの目の前で「All My Loving」の弾き語りを披露しています。
山崎:死ぬかと思いましたよ!(笑)
―出だしのコードを間違えてしまったんですよね。
山崎:そうそう、ポールに「それ違うよ」って言われて(笑)。
キャンディス:ハッハッハ! きっと心臓がバクバクしてたんでしょうね。
―キャンディスが生前のプリンスに「雪さえも溶かすほどの声」と絶賛されたのは有名なエピソードですよね。彼の曲をカバーしたことは?
キャンディス:彼の曲で一番好きだった「ザ・ビューティフル・ワンズ」をカバーして、その動画をプリンスに送ったことならあります。あのときはかなり緊張しました(笑)。2014年頃の話で、映像では私がローズピアノを弾きながらプリンスのポートレートを描いているんですけど、彼はそれを観て「思わず泣きそうになった」と言ってくれたんです。素晴らしい体験でした。(YouTubeを開いて、山崎に向けて)この絵を描いたんです。
山崎:これ自分で描いたの? すごく上手いね!
キャンディス:そのうち山崎さんの絵も描かせてください。きちんとポーズをキメてもらって(笑)。
―『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』について、まずは山崎さんの感想が知りたいです。
山崎:トリオ編成や小節の取り方などにジャズを感じたけど、どの曲にも自由な解釈が施されているし、何より歌を大切にしている印象を受けました。「あ、この曲やってるんだ」と嬉しくなったりもするけど、彼女のアレンジがしっかり加わっているから、カバーアルバムの醍醐味をしっかり味わえるはず。(収録曲リストを眺めながら)それにしても、錚々たる顔ぶれですよね。
キャンディス:みんな今の私を作ってくれた人たちです。そういったミュージシャンへのトリビュートですね。最初のほうに出会ったのはニーナ・シモンで、それが8歳くらいの頃。そのあとにノラ・ジョーンズ、ダイアナ・クラール、ロバータ・フラックを聴くようになり、10代の頃にジャズのクラスで学ぶようになってエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、ビリー・ホリデイのことを知りました。それから、ローリン・ヒルやシャーデーも好きになったという感じです。
―今回トリビュートされているミュージシャンのなかで、山崎さんが特に好きなのは?
山崎:ノラ・ジョーンズの最初のアルバムを聴いたときは、やっぱりびっくりしましたよ。「うわ、すごく音がいいな!」って。だからフェイバリットですよね。
キャンディス:「Killing Me Softly」のオリジナルはロバータ・フラックだけど、私が先に聴いたのはローリン・ヒルのカバーだったんですよ。そういう思い出もあったりするから、収録曲を14曲まで絞るのは悩みました。もっと長いリストを作ることだってできるので、また機会があれば続編にチャレンジしてみたいです。
山崎:あとは男性ボーカルのカバー集もやってもらえたら嬉しいな。それこそプリンスとか、スティーヴィー・ワンダーとか。
キャンディス:実は、そのアイディアも用意していて。デューク・エリントン、オスカー・ピーターソン、ルーサー・ヴァンドロス、ジョン・メイヤー、それに私の父。やりたい曲やプロジェクトはたくさんあるので早く取り掛かっていきたいです。

―キャンディスさんは5月に来日公演が控えていますが、お二人がステージ上で共演する日も期待したいです。
キャンディス:山崎さんのスケジュールが空いていれば大歓迎ですよ。
山崎:いやいや……光栄です(笑)。

キャンディス・スプリングス
『私をつくる歌 ~ザ・ウィメン・フー・レイズド・ミー』
2020年3月27日(金)リリース
https://jazz.lnk.to/twwrmPR
〈収録曲〉
1.デヴィル・メイ・ケア feat. クリスチャン・マクブライド(ダイアナ・クラール)
2.エンジェル・アイズ feat. ノラ・ジョーンズ(エラ・フィッツジェラルド)
3.アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー feat. デヴィッド・サンボーン(ニーナ・シモン)
4.パールズ feat. アヴィシャイ・コーエン(シャーデー)
5.エックス‐ファクター feat. エレーナ・ピンダーヒューズ(ローリン・ヒル)
6.アイ・キャント・メイク・ユー・ラヴ・ミー feat. アヴィシャイ・コーエン(ボニー・レイット)
7.ジェントル・レイン feat. クリス・ポッター(アストラッド・ジルベルト)
8.ソリチュード feat. クリス・ポッター(カーメン・マクレエ)
9.ニアネス・オヴ・ユー(ノラ・ジョーンズ)
10.これからの人生(ダスティ・スプリングフィールド)
11.やさしく歌って feat. エレーナ・ピンダーヒューズ(ロバータ・フラック)
12.奇妙な果実(ビリー・ホリデイ)
13. ラッシュ・ライフ(サラ・ヴォーン)*
14. ユーヴ・ガット・ア・フレンド feat. 山崎まさよし(キャロル・キング)*
( )はトリビュート・アーティスト
*日本盤ボーナス・トラック
キャンディス・スプリングス来日公演
2020年5月17日(日) 名古屋ブルーノート
2020年5月18日(月)19日(火)20日(水) ブルーノート東京
キャンディス・スプリングス日本公式ページ
https://www.universal-music.co.jp/kandace-springs/

山崎まさよし
『Quarter Note』
発売中
YAMAZAKI MASAYOSHI CONCERT TOUR 2020”Quarter Note”
3/20(金・祝)兵庫県 たつの市総合文化会館赤とんぼ文化ホール 大ホール 17:00 / 17:30
3/22(日)愛知県 名古屋市公会堂 大ホール 17:00 / 17:30
3/27(金)北海道 ZEPP Sapporo 18:00 / 19:00
3/29(日)茨城県 龍ヶ崎市文化会館 17:00 /17:30<振替公演>
4/4(土)愛媛県 しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール) 17:00 / 17:30
4/5(日)徳島県 阿南市文化会館・夢ホール 17:00 / 17:30
4/11(土)新潟県 新潟県民会館 17:30 / 18:00
4/12(日)長野県 須坂市メセナホール 17:00 / 17:30
4/17(金)大阪府 オリックス劇場OPEN18:30/START19:00<振替公演>
4/25(土)熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール<追加公演> 17:00 / 17:30
5/2(土)三重県 シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢(伊勢市観光文化会館)17:00 / 17:30
5/5(火・祝)岡山県 岡山市立市民文化ホール 17:00 / 17:30
5/6(水・振)広島県 広島NTTクレドホール 17:00 / 17:30
5/8(金)神奈川県 神奈川県民ホール 17:30 / 18:30
7/2(木)東京都 中野サンプラザホール 18:00 / 19:00<振替公演>
※以下の公演は延期
3/1(日)茨城県 龍ケ崎市文化会館 大ホール
3/8(日)東京都 中野サンプラザホール
3/14(土)大阪府 オリックス劇場
http://www.office-augusta.com/yama/