ロネッツはニューヨークを拠点とした数年間の活動を経て、1963年に発表した「Be My Baby」で爆発的な人気を博すようになる。この曲は元ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを筆頭に、多くのミュージシャンからも愛された。ロニーはみずからの強力なボーカルで、若い恋心がもつ圧倒的な高揚感と絶望的な底力を表現し、「Be My Baby」はロネッツによる5曲連続トップ40ヒットの第1号となった。
ロネッツはビートルズとローリング・ストーンズの両方とツアーを行ったあと、1967年に解散したが、ロニーはその後も断続的にレコーディングを継続。エディ・マネーからジョーイ・ラモーンまでタッグを組み、2016年に最後のソロ・アルバム『English Heart』をリリースしている。「(フィル・スペクターは)私から歌を取り上げた。もうレコーディングさせてもらえないんじゃないかと気が気じゃなくて、胸が張り裂けそうだったわ」 2016年、ロニーはローリングストーン誌にこう語っている。「だからこそ、もっと歌いたいと思うようになった」
ロネッツ「Be My Baby」(1963年)
ドン、ドドン、クラップ! 不朽の輝きを放つオープニングのドラムビートから、オーケストラの弦楽器とカスタネットで作られたウォール・オブ・サウンドに乗せて、ロニー・スペクターがジェットコースターのように”whoa-oa-oas”と歌ったことで、「Be My Baby」はすぐさま名曲となった。ハル・ブレインによるドラムのイントロについて、ロニーは「まるで天国にたどり着いたようだった」と回想している。「何もかもがフィットしたの。すべてがパズルのようで、私の声が入ることでパズルは完成。その瞬間、このレコードはヒットすると確信した」。
最終的に、この曲はヒット曲以上のものとなり、カルチャーの試金石となった。マーティン・スコセッシはこの曲を映画『ミーン・ストリート』の舞台設定に使い、テイラー・スウィフト、ジーザス&メリーチェイン、エイミー・ワインハウンなどがドラムビートを引用している。ブライアン・ウィルソンはこの曲について、「ある意味、驚かされたというより、自分がもう一度生まれ変わったようにすら感じた」と語っている。「あの曲を一度聴いたら、永遠のファンになってしまいそうな感じ」 K.G.
ロネッツ「Baby, I Love You」(1963年)
「Baby, I Love You」のサビを聴いたときの高揚感は、何物にも代えがたいものがある。若いハート(とホルモン)が熱狂的にぶつかり合うスリルと、疑問をかき消すほどの力強いバックビート。フィル・スペクターがジェフ・バリー、エリー・グリニッチとともに作曲した「Baby, I Love You」は、「Be My Baby」に続く曲として1963年にリリースされた。”ああ、あなたも同じ気持ちだと言ってほしい”ロニーは感極まりながら懇願する。
ここでバックシンガーを務めていたシェールは、1974年に自身のバージョンを発表。フィル・スペクターがプロデュースしたラモーンズの1980年作『End of the Century』でも同曲は取り上げられ、シングルカットされている。ブルース・スプリングスティーンは、1975年のニューズウィーク誌のカバーストーリーで、この曲を「宇宙が衝突する音」と表現している。J.F.
ロネッツ「Sleigh Ride」(1963)
1963年にフィル・スペクターが制作したクリスマス・アルバム『A Christmas Gift For You From Phil Spector』に収録され、ロネッツにとって最大のヒット曲となった「Sleigh Ride」(アンドリュー・シスターズのカバー)を聴くまでは、本当の意味でホリデーシーズンを迎えられたとは言えない。鈴の音色、馬のいななき、ロックンロールの高揚感、そしてロニーのスモーキーで魅力的な歌声が雪を溶かすように響き渡る。
ロネッツ「Walking in the Rain」(1964)
ロンドンを旅したロニーは、夫妻ソングライター・デュオのバリー・マン&シンシア・ワイルに、ロンドンで過ごした時間に魅了されたことを話した。「イギリスの雨と霧が好きだと伝えたの」と、彼女は振り返る。そのイメージを踏まえつつ、二人はこの夢みたいなバラードを作り上げた。ここでは10代特有のロマンチックなファンタジーと、疲れ果てた孤独が完璧にミックスされている(”彼はどこにいるの?” 雨を愛する理想的なボーイフレンドの資質を説明したあと、ロニーはこう尋ねる)。フィル・スペクターは「Walking in the Rain」の冒頭で不吉な雷鳴を響かせ、オペラのような雰囲気を演出した。この曲はロネッツ最後のトップ40ヒットとなった。J.D.
ロネッツ「So Young」(1964年)
ロネッツ「Why Dont They Let Us Fall in Love」(1964年)
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ロネッツ「(The Best Part of) Breakin Up」(1964年)
ロネッツ「Do I Love You?」(1964年)
ロネッツ「I Can Hear Music」(1966年)
ロニー・スペクター「Try Some, Buy Some」(1971年)
ロニー・スペクター&ザ・Eストリート・バンド「Say Goodbye to Hollywood」(1977年)
エディ・マネー「Take Me Home Tonight」(1986年)
ロニー・スペクター「You Cant Put Your Arms Around a Memory」(1999年)
ロニー・スペクター「Id Much Rather Be With the Girls」(2016年)
ロニー・スペクター「How Can You Mend a Broken Heart」(2016年)
From Rolling Stone US.