トランプ米大統領がまたひとつ大統領令に署名するその瞬間を見届けるべくホワイトハウスを訪れたラップロッカー、いや今やMAGAの代弁者となったキッド・ロックは、ナッシュビルでも指折りのデザイナーに特別な衣装を発注した。

【写真】伝説のテーラー、マヌエル・クエヴァス

現地時間3月31日、ホワイトハウスでキッド・ロックの姿を見逃すことはまず不可能だった。
ただでさえ、彼がアメリカの権力の中枢——大統領執務室(オーバル・オフィス)——で、トランプ大統領のすぐそば、リゾリュート・デスクの横に立っていたのだから。それも、コンサートチケットの転売を規制する新たな大統領令への署名式という場面でのことだ。

だが彼が注目を集めたのは、なにもその”立ち位置”だけではなかった。むしろ、人々の目を引いたのは彼がまとうド派手なトラックスーツだった。イーグル(鷲)を二羽、星条旗、そしてこれでもかというほどのラインストーンで飾られた、まさに”愛国”を背負った服装だ。

「ラインストーンは何百個もついていて、ひとつひとつの間隔はせいぜい1センチもなかったわ」と語るのは、伝説的なウエスタン・ウェアのデザイナー、マヌエル・クエヴァスの妻、オフェリア・バスケス。夫婦でこのスーツを手がけた彼らのもとに、キッド・ロックが連絡してきたのはおよそ1カ月前のこと。91歳になるマヌエル——通称マヌエルは名だけで通っている——に「アメリカ建国250周年を祝うためのユニフォームを」とオーダーが入ったのだ。その証が、ロックの左腰にあしらわれた「250」の赤・白・青の刺繍である。

「とにかく急ぎの注文で、3週間しか猶予がなかったんです」とオフェリアはローリングストーン誌に語る。「だから、私たちはキッド・ロックの自宅まで採寸に行きました。彼が希望するモチーフをどんどん挙げて、それを持ち帰ってスタジオで一気に制作に取りかかったんです」

ロックが挙げたモチーフは、オフェリアによれば「独立を象徴する”アイコニック”なもの」。
だが、デザインの主導を握ったのは、彼女の夫マヌエルだった。マヌエルはかつて、ロデオ・テーラーの開祖と呼ばれるヌーディ・コーンのもとで修行した人物だ。

ビジョンを固めると、マヌエルはスーツの”魔法をかける役”を妻に託した。「マヌエルはすべてをデザインしました。『この案どう思う? この旗の感じは?』って、私に何度も聞きながら。で、最終的に刺繍は私が担当したんです」とオフェリアは語る。「とても特別な一着になりました」

そしてこの”超・愛国スーツ”は、あなたにも手に入れられる可能性がある。ただし条件がある——ナッシュビル近郊のマヌエルのアトリエに予約を入れ、採寸を済ませ、そしてそれなりの覚悟で財布を開くこと。

「正直、いくらだったか覚えていないんです。というのも、同時に黒いスーツとか、他の服も一緒に作っていたので」とオフェリアは言う。「でも、少なくとも300万円以上はかかったと思いますよ」

from Rolling Stone US
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