今回のリストでは、そんな犬たちの中からアニメキャラや人間の言葉を話す”喋る犬”を除き、リアルな犬のみを対象に、15匹の名犬を厳選して紹介する。
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15位:ブルーザー(『キューティ・ブロンド』2001年)

ピンクをここまで着こなせる犬は、そう多くない。しかしブルーザー・ウッズは完璧にやってのけた。演じたのはムーニーという保護されたチワワで、子犬のときにスタジオ・アニマル・サービスのトレーナーに引き取られた。ブルーザーは、主人公エル・ウッズの常にそばにいる相棒。バカな元カレを嘆いているときも、法律の勉強に励んでいるときも、彼は常にエルの側で心の支えになっている。ムーニーは2009年の続編『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』にも出演。今作では、動物愛護法案を巡ってワシントンD.C.で奮闘するエルに寄り添う。劇中ではブルーザーの母犬(演じるのはタコベルのCMでおなじみのチワワで、ムーニーと同じトレーナーによって訓練された)が登場し、ブルーザーがゲイであることも発覚──議員の飼うロットワイラーとドッグスパで”逢引”していたのがバレるのだ。これはまさにキャラクターとしての成長の証!—Alison Weinflash
14位:アインシュタイン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』1985年)

史上初のタイムトラベラーは、マーティ・マクフライではない。エメット・”ドク”・ブラウン博士(クリストファー・ロイド)の愛犬であるシープドッグのアインシュタインこそが、その栄誉を担う。
13位:ドッグ(『ジョン・ウィック』シリーズ 2014~2023年)

人と犬の絆の核心にあるのは”忠誠心”。その意味で、ジョン・ウィックが動物保護施設から救い出したこのピットブル以上に忠実な存在はいないだろう。重傷を負った彼が自らをホチキスで応急処置するシーンのあと、この犬と目が合う──それだけで、ウィックはこの”灰色の美しい子”を解き放つ決意をする。亡き妻が遺した子犬を殺された喪失感の中で出会った新たな相棒。名前は「ドッグ」あるいは「ボーイ」と呼ばれるが、実際にはメスの犬が演じていたという。シリーズを通して、彼女はウィック唯一の忠実なパートナーとして、またコンチネンタルホテルの”常連”として、活躍し続けるのだった。—Maria Fontoura
12位:ウィンキー(『ドッグ・ショウ!』2000年)

Warner Brothers/Everett Collection
「神さまはテリアが好き」──そう歌うのは、クリストファー・ゲスト監督による2000年のモキュメンタリー映画で、キャサリン・オハラとユージン・レヴィ演じるクッキー&ジェリー・フレック夫妻。彼らの愛犬ウィンキー(演じるのは本物のショードッグ、カナダチャンピオン”アーチンズ・ブリロ”)への愛を込めた歌だ。リングの中でも落ち着いた自信を放ち、クッキーが怪我をしてしまった際には、不器用なジェリーが代わりにハンドラーを務めるというアクシデントにも動じない。
11位:アポロ(『ザ・フレンド』2025年)

Matt infante/Bleecker Street
演技力やトレーニングも大事だが、映画に出る犬にとって最も重要なのは”表情力”かもしれない。2025年公開の映画『ザ・フレンド』で注目されたのは、なんと体重約68キロのグレート・デーン”ビング”。チャーリー・チャップリンの生まれ変わりとまで言われるほど、その表情で観客の心を揺さぶった。自死した飼い主を失い、心に傷を抱えた犬・アポロ役を演じるビングは、123分の上映時間のほぼすべてに登場。人間の俳優でも表現が難しいような深い悲しみを、見事に表現してみせた。監督のひとり、デヴィッド・シーゲルはRolling Stoneにこう語っている。「これまで出会った中で一番”気負いのない俳優”だった。彼の存在には本当に引き込まれるよ」。
10位:フーチ(『ターナー&フーチ』1989年)

©Buena Vista Pictures/Everett Collection
1980年代末には、トム・ハンクスと犬がバディを組む刑事コメディをスタジオに売り込むことが、ごく当たり前に行われていた時代だった──それを象徴するのがこの映画『ターナー&フーチ』。よだれダラダラのフレンチ・マスティフ”ビーズリー”が、ハンクス演じる刑事の相棒フーチとして登場。名優ハンクスにも負けない存在感でスクリーンを支配する。特に印象的なのは、リヒャルト・シュトラウス作曲「ツァラトゥストラはかく語りき」に乗せてスローモーションで登場するシーン。ハンクスに向かって全力で突進し、豪快に倒す演出は、まさに”名シーン”のひとつだ。—David Fear
9位:バクスター(『アンカーマン』2004年)

CBS/Paramount/Getty Images
ロン・バーガンディにとって仲間は多いが、本当の意味で心を許す存在は、愛犬バクスターただひとり。サンディエゴ屈指のニュースキャスターである彼の親友は、なんと橋から落ちても、熊に襲われても無事でいられる最強のボーダー・テリア。バクスターは、ロンの自己中心的な幻想を優しく指摘する存在でもあり(「君は僕の核心を突くんだ、バクスター!」という名台詞も)、ふたりが同じ頭部矯正ギアを装着して寄り添う姿には、唯一無二の絆を感じさせる。—D.F.
8位:ジャック(『アーティスト』2011年)

Weintsein Co.
フランスの俳優ジャン・デュジャルダンが、ほぼ無声のこの映画で無声映画スターを演じ、アカデミー主演男優賞を受賞したのは確かだ。だが、作品賞にも輝いたこの映画の真のブレイクスターは、愛らしいジャック・ラッセル・テリアの”アギー”だった。演じたキャラクターの名前も、そのまま”ジャック”。主人の栄光も苦境も共に歩み続けた忠犬ジャックは、多くの観客の心をつかみ、「Uggieをオスカー候補に!」というキャンペーンまで立ち上がるほどの人気を集めた。
7位:リン・ティン・ティン(『北国のはじまり』1923年)

Everett Collection
映画界における”犬の元祖”と言えば、やはりリン・ティン・ティン。もちろん彼以前にも、ドイツ・シェパードの”ストロングハート”など人気犬スターは存在していたが、この”有名な警察犬ヒーロー”こそが「犬が人間を救う映画」というジャンルを確立させた立役者だ。1920年代において、映画のタイトルに名前が載る数少ない”スター俳優”のひとりでもあったリン・ティン・ティンは、当時の観客にとってまさにアイコン的存在。彼の豊かなフィルモグラフィーの中でも代表作として知られるのが、1923年のこのドラマ。カナダの荒野で罠猟師と心を通わせる物語は、まさに原点にして頂点だ。—D.F.
6位:スヌープ(『落下の解剖学』2023年)

2023年のアカデミー賞にノミネートされた法廷ドラマ『落下の解剖学』で、フランスのボーダー・コリー”メッシ”が人間の共演者たちを喰う存在感を見せつけた。監督のジュスティーヌ・トリエは、彼についてこう語っている。「あの犬には”眼差し”と”魂”がある。だから人々は彼を本物の俳優のように扱っているのだと思う」。たしかに納得できる。劇中でスヌープがアスピリンを飲まされ、ある人物の無実を証明するために苦しむシーンでは、荒い息遣いやぐったりとした姿を見事に演じ、観客を驚かせると同時に、拍手を巻き起こした。
5位:アスタ(『影なき男』1934年)

TV Guide/Everett Collection
クラシック映画に登場する名犬を語るうえで、このワイヤー・フォックス・テリア”アスタ”(本名:スキッピー)を外すことはできない。洒落者の探偵コンビ、ニック&ノーラ・チャールズ夫妻の事件解決に大いに貢献したこの犬は、シリーズの人気を支える重要なキャラクターだった。機転が利き、勇敢で、むしろこのトリオのリーダー的存在ともいえるアスタ。初登場シーンでは、ノーラを引きずるようにしてホテルのラウンジへと現れ、主従関係の逆転ぶりがユーモラスに描かれている。シリーズ初期3作ではスキッピーが演じ、後期3作では、同じトレーナーによって育てられた別のテリアたちが役を引き継いだ。—D.F.
4位:ブランディ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』2019年)

Andrew Cooper
マンソン・ファミリーと戦って勝てるほどタフなピットブルが、他にいるだろうか? 元スタントマンのクリフ・ブースに忠実に寄り添うブランディ(主に”サユリ”という名のピットブルが演じた)は、ディナーの時間に鳴かずに待つことを条件に、クリフから食事をもらう。そんな関係性のなかで、ブランディは物語後半、シエロ・ドライブのリック・ダルトン邸に押しかけてきた凶悪なヒッピーたちを相手に、本気の”牙”を見せつける。「編集してるときに思ったんだ。彼女はすごい女優だって」と語ったのは監督クエンティン・タランティーノ。ブランディは、カンヌ国際映画祭の”パルム・ドッグ賞”を堂々受賞した。—D.F.
3位:トト(『オズの魔法使』1939年)

Everett Collection
”ドロシーの友達”の元祖であり、”ニセ魔法使いの正体暴き”の名手、さらには”悪い魔女と戦う”活動家でもある名犬トト。本名を”テリー”というケアーン・テリアのことを知っている人は少ないかもしれないが、「あのちっちゃな犬も一緒に狙われてる!」という名台詞と共に、マーガレット・ハミルトン演じる魔女がドロシーと”リトル・ドッグ”トトを狙っていたことは、誰もが知っているはずだ。
2位:バディ(『エア・バッド』1997年)

©Buena Vista Pictures/Everett Collection
「犬がバスケットボールをしてはいけないなんてルールはない」──そしてこのワンコは本当にダンクする! 少年が犬と出会い、共にトレーニングを重ね、犬が試合を支配する──そんな典型的なスポ根ストーリーを、説得力たっぷりに成立させたのが、ゴールデン・レトリバーの”バディ”。トレーナーのケヴィン・ディ・チッコによって育てられた彼は、バスケットだけでなく、アメフト、サッカー、野球、ホッケーまでもこなす万能スポーツ犬だった。残念ながら、映画のヒット後まもなくバディはこの世を去ったが、その遺志は後続の『エア・バッド』シリーズにしっかりと受け継がれている。—D.F.
1位:ラッシー(『名犬ラッシー 家路』1943年)

Everett Collection
小さなコリー犬が、巨大なカルチャーアイコンになるまで──”ラッシー”という名前を聞いただけで、12歳から82歳までの誰もが思い浮かべるであろう、あの美しい犬の姿。それこそが、”ラッシー現象”のすごさだ。エリック・ナイトの短編小説を原作に、MGMが制作した一連の映画のなかでも、ロディ・マクドウォールや幼い頃のエリザベス・テイラーと共演したこの1943年の作品でラッシーは一躍人気者に。以降、テレビ、ラジオ、本、リメイク映画などあらゆるメディアに登場する不朽のスターとなった。初代ラッシーを演じた”パル”はその後も、多くの作品でその血統が受け継がれていった。—D.F.
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