米フロリダ州タラハシー出身のポップ・パンク・バンド、メイデイ・パレード。フロントマンのデレク・サンダースとドラマーのジェイク・バンドリックが、20年間の歩みと新作『Sweet』について語る。


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キャリア初期のツアー時代、メイデイ・パレードにとって毎晩がパーティだった。新しい街を訪れては熱狂的な少人数の観客の前で演奏し、地元の人々と友達になり、そして夜は必ずどこかでパーティを開き、泊まっていた。朝になれば、デレク・サンダース(Vo)、ジェイク・バンドリック(Dr)、ジェレミー・レンゾ(Ba)、アレックス・ガルシア(Gt)、ブルックス・ベッツ(Gt)の5人がバンにぎゅうぎゅう詰めになって乗り込み、疲労困憊しながらもまた次の街へと向かった。当時、彼らは10代後半から20代前半。まるで大学生活にパンク・ロックの要素を加えたような日々だった。

「人生であれより素晴らしい体験って、そうそうないと思う」とサンダースはRolling Stoneに語る。「バンドが始まったときのあの感覚は、まさに魔法のようだった」。バンドリックも全く同意見だ。「ワイルドな生活だったけど、本当に楽しかった」と彼は言う。そんな思い出を振り返る機会が最近増えてきたのは、バンドの20周年記念が迫っているからだ。

結成から20年、止まらない歩み

2005年にフロリダ州タラハシーで結成されたメイデイ・パレードは、2006年のEP『Tales Told By Dead Friends』を数千枚配布して、Warped Tourで注目を集めた。翌年、Fearless Recordsと契約後、彼らはフェスの常連となり、デビュー作『A Lesson In Romantics』でエモの第三波を象徴するバンドとして確固たる地位を築く。
アルバムには「Jersey」や「Miserable at Best」といった爆発的なアンセムや感傷的なバラードが収められ、即座にジャンルのクラシックとなった。

彼らの代名詞とも言えるのは、失恋や葛藤を歌ったドラマティックで引用しやすい歌詞。昨年には人気ポッドキャスト『Call Her Daddy』のアレックス・クーパーが、思春期の”鬱系オルタナ”フェーズで聴いていたバンドとして名を挙げ、シンガーソングライターのザック・ブライアンも、深夜に心をえぐるような彼らの楽曲への想いをSNSで語っていた。

進化と継続の象徴として

数多のバンドが解散や活動休止に追い込まれる中、メイデイ・パレードの20年にわたる継続は特筆すべきことだ。2024年には『A Lesson In Romantics』収録の「Jamie All Over」がRIAAプラチナ認定を受け、100万以上のセールスとストリーミングを記録。彼らの楽曲が今も広く聴かれていることを証明した。

今年は20周年ツアーのほか、Warped Tourの記念公演(D.C.およびオーランド会場)への出演、さらにノスタルジックなWhen We Were Youngフェスにも3度目の登場が決定している。サンダースはWarped Tourの30周年を心待ちにしており、「あの経験に代わるものはない」と語る。「昔のように、みんなと会って、遊んで、笑いたいんだ」

新作『Sweet』と20周年の集大成

バンドは20年を振り返るべく、3部作アルバムのリリースを計画。その第1弾となる『Sweet』がついに先日リリースされた。当初は通常のアルバム制作だったが、サンダースがアニバーサリーを意識したことで計画を一新。「もっと壮大なことをやってみようって思った」とサンダースは語る。
「ちょっとした実験だけど、やるなら今だと思った」

『Sweet』は、長年のプロデューサーであるザック・オドム&ケネス・マウントが手がけ、従来のポップ・ロックを軸に新たな展開を見せる。リード曲「By the Way」にはThird Eye Blindの影響が感じられ、「4,000 Days Plus The Ones I Dont」や「Whos Laughing Now?」は「これまでで一番ポップ・パンク寄りだ」とサンダースは言う。後者にはKnuckle Puckのジョー・テイラーが参加し、怒りを倍増させている。

とはいえ、バンドの本質を見失わないようにもしている。例えば「Toward You」や「Who We Are」では、従来のポップ・ロック的なやさしさも健在。「あまりに冒険しすぎると、”なんか変わっちゃったね”って言われかねない」とバンドリック。2015年作『Black Lines』での実験を経て、「どうすればファンが愛してくれる部分を残しつつ、新しい要素を加えられるか」を考えたという。

セットリスト、友情、そして未来へ

20周年ツアーでは、全アルバムから楽曲を選び、セットリストを構築。「ヒット曲も深掘り曲も、できるだけ詰め込んで特別な空間にしたい」とサンダースは語る。「キャリアを祝うことが目的なんだ。各アルバムから1曲ずつはやりたい」

過去のライブセットを見返す中で、「あの頃を懐かしく思わないわけがない」とサンダースは語る。「20年という時間を、今までとは違った視点で見られるようになった」とも。
ツアー漬けの生活が続いた彼らにとって、振り返る余裕がなかったことも事実。「今ようやく、僕らがどれだけ変わってきたかを実感できた」

今では、パーティに明け暮れた10代ではない。それでも、初期のツアーバンで築かれた友情があったからこそ、20年という節目を迎えられた。「一緒に成長してきた仲間なんだ」とサンダース。「バンドが壊れる原因って、大抵はメンバー同士の不和なんだけど、僕らはうまくやってこれた」と語る。10歳で音楽を始め、12歳でブルックスと出会ったサンダースにとって、それは幼少期からの夢だった。「こうして今でも夢を追えてるって、本当にありがたいことなんだ」

思い出に立ち返ることで、彼らは初期の魔法を今も再現しようとしている。「これからどれだけ続くかは分からないけど」とバンドリックは言う。「始めた頃も、どれくらい続けられるかなんて分からなかった。気づけばもう20年だよ」

エモとポップ・パンクの橋渡しをしたメイデイ・パレードが語る、結成20年の現在地

Photo by ELI RITTER

from Rolling Stone US
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