今年も千葉・幕張メッセで2日間開催される、国内最大規模のヒップホップ・フェスティバル「POP YOURS 2025」。今年で4回目となるこのフェスは「2020年代のポップカルチャーとしてのヒップホップ」がテーマ。
開催まで1カ月を切った今、総勢43組の出演者の中からヒップホップ次世代スターをクローズアップ。今回はKohjiyaにフォーカスする。

【画像】『POP YOURS 2024』ライブ写真(全87枚)

2月27日にEX THEATER ROPPONGIで行われた、初のワンマン・ライブ『KJ SZN』を成功させたKohjiya。2024年は「ラップスタア誕生!」優勝、BIM「DNA feat. Kohjiya & PUNPEE」、Kaneee, Kohjiya & Yvng Patra「Champions」といったヒット曲、EP『KJ SEASON2』のリリースなど、まさにKohjiyaのシーズンとなる1年となった。

メロディアスな感じとJ-POPの雰囲気も入れつつ、
でも流れてるのはトラップ・ミュージック、
みたいなところに至りました。

ー初となるワンマン(2月27日、EX THEATER ROPPONGIで行われた『KJ SZN』)では、生バンドでやることも含めて、どういうものを見せようと思いましたか?

Kohjiya 去年の春からクラブでライブをすることが多くて。いろいろ経験を積んできたつもりはあったんですけど、ライブというよりはショーとしてパフォーマンスをしたいなというのもあって、今回はバンドセットを組みました。しかもバンドにはドラマーが二人いるんですよ。あと、僕はヒップホップの中でもけっこうメロディアスなトラップをやってるんですけど、生の楽器と合わせた時の新しさとか面白さにワクワクしていて。そういうフレッシュな気持ちで、どういう化学反応が起こるのか、みんながどう感じるのかを楽しみにワンマンに臨んでます。

ー生バンドでやることで発見はありましたか?

Kohjiya 僕の曲の中でしっとりした、R&Bに近い曲がバンドセットで映えることはわかってたんですけど、姫路のラッパーのljとコラボで出した『New Stars Swag』という作品があって。けっこうバチバチでハードな感じの曲なんですけど、意外とそっちの方もバンドでやると生きて。
歪んだベースがパンクっぽいノリになったりして、面白いんですよ。

ー最初のヒップホップの入り口は?

Kohjiya 小5から聴き始めて、小6から曲を作り始めたんですけど、今ミックスエンジニアをしてるHonda Ranmaruが転校生で小学校に来て。彼はヒップホップのダンス教室に通ってたんです。仲良くなっていくうちにヒップホップをいろいろ教えてもらうようになって、ハマっていったという感じです。当時はダス・エフェックス、モス・デフ、DJプレミアとか、90sヒップホップをよく聴いてました。

ーMADzsというクルーも結成しますよね。

Kohjiya 小6から中1にかけて結成されたんですけど、最初は俺とRanmaruの二人で、中学の時にAURALが入って三人になるんです。ちょうどMCバトルが流行ってた時で、自分もやってみたんですけど、めちゃくちゃ下手くそで。諦めて。曲を作る方向に転向したんです。

ーCD-Rを150枚配っていたんですよね。

Kohjiya SoundCloudで配信し始めてた時に、CD-Rにダビングして。
それをクラブとか友達とか欲しい人に配ったりするというのを、中3ぐらいの時にやりました。

ーデビュー曲のタイトルは「17!!」ですから、17歳だったんですよね。

Kohjiya 高1の時にKohjiyaという名前に変えて、そこからソロも始めて、真剣にやっていこうとなって。その時に長崎の10個上の先輩、KORKさんが長崎でやってたイベントに出させてもらうという縁があったんです。そこから「17!!」をKORKさんの主宰するレーベル、Island State Musicから出させてもらったのが始まりになります。

ー2021年の「Rob (feat. ¥ellow Bucks)」で最初に注目を集めましたよね。

Kohjiya 僕が曲を作ったらKORKさんにLINEで「新曲が出来ました」って送ってたんですよ。自分のフックとヴァースだけが入ったものを送ったら、「これいいね。ちょっとBucksに聞いてみてもいい?」って言われて。そしたら次の日に返ってきたんです。最高にうれしかったですね。BucksさんとはMVの撮影で東京に行った時に初めてお会いして。
オーラがスゴくて、カッコいいなと思いましたね。

ー2024年は飛躍の年になりましたが、その前の2023年にはIOやKEIJUと一緒に曲を作っていますよね。

Kohjiya 『KJ SEASON』をリリースして、「Racin' feat. Kohjiya」(IO)が出たぐらいのタイミングですね。大学を辞めることを親に話して。それが就職先になるんだったらいいよと言われたんです。IOさん、KEIJUさんとつながったのは本当、KORKさんのおかげですね。KORKさんが長崎から一人で東京に出てきた時に出会った仲間が、KANDYTOWNとその周辺だったんです。「DREAMIN' BOI ISSUE pt2」とか「Kick Back」のデモも、IOさん、KEIJUさんに聴かせてくれて。それで、「こいつヤバいね」って認めてくれたみたいです。

ー一緒に曲を作ってみてどうでした?

Kohjiya 僕が「Racin」を書いて、IOさんにフックを歌ってもらって、ヴァースも書いてもらって。そういうやり取りはしてたんですけど、KORKさんから「今日の夜、空いてる?」という連絡が来て。スタジオに行くと、IOさんのレコーディング、ミックスをやってて。
その時に初めて会って会話をしたんですよ。IOさんもKEIJUさんも、自分のルーツがあって、自分のスタイルが確立されてますよね。だけど僕のような若造の意見もいいねって言ってくれて。自分のスタイルとマッチするものは取り入れてくれたんです。クリエイティブの思考が固くなかったのがカッコいいなと思いましたね。あと、KEIJUさんが『Speed Tape』のリスニング・パーティをCÉ LA VI Tokyoでゲリラ的に開催して、僕も呼んでいただいたんですけど、AMG GTとかヴェルファイアが道玄坂にボンボンボンって並んで、客演の人たちが集まってて。そこにみんなが乗り込んで、CÉ LA VIの下の立体駐車場に列を作って入っていくんです。その日の興奮の影響があって、東京のナイトライフを落とし込みたいと思って、「Denied」が生まれたんです。

ー90年代のブーンバップが好きだったところから、今のスタイルに至るまではどのような道のりでしたか?

Kohjiya 僕は単純に知的好奇心を満たすのが好きで。最初はブーンバップにハマってたんですけど、現行で流行ってるトラップに比べると、更新されるものが少なかったし、主流ではなかったので、現行の音楽を聴こうってなったんです。だから、最初はノー・メロディでラップして、正統派で男な感じでやってたんですけど、それに飽きた時に、流行ってる音楽や韓国のラップも聴き始めて。メロディアスな感じとJ-POPの雰囲気も入れつつ、でも流れてるのはトラップ・ミュージックみたいなところに至りました。


Kohjiyaが語る、POP YOURSで迎える“次の章” 「俺は苦悩すら楽しむ」


「次は13~14曲ぐらいのアルバムを出したいなと思ってます」

ーフックはキャッチーだけれど、ヴァースのラップでは難しいフロウもやっているし、ビートに対してずらしたりもしていますよね。キャッチーなこととテクニカルなことを両立させているんですよね。

Kohjiya フックはみんなが歌えた方がいいと思うので。僕がずっと難しいヴァースを歌って、フックも難しいメロディで歌ってたら、みんなも疲れるだろうし、歌ってる自分も楽しくないだろうから。箸休めじゃないけど、ガッツリ飯を食った後はデザートみたいな感じにしてます(笑)。僕は宇宙語のフリースタイルで曲を作るんですけど、フックで歌って、ラップをして、歌って、そういう感じでスタイルが自然と出来ていったのかなと思ってます。音楽にはリズムとメロディという制約があるじゃないですか。宇宙語で作ったものに音をハメないといけないから。でも自分が伝えたい言葉がどうしてもハマらない時は、オフビートでやって、ルールを無視してやってみると、どうにでもなるんですよ。それでオフビートで歌うことが多いです。

ーアルバムのタイトルも『KJ SEASON』にしているし、2024年は本当に自分のシーズンに変えてしまいましたよね。そこに向けて考えたこと、狙ったことはありますか?

Kohjiya 僕とチームでプランを考えてやっていく感じなんですけど。
高校を卒業したタイミングで東京に住み始めて。全然ライブをしてなくて、日常のルーティンとして、一生曲を作ってたんですよ。『KJ SEASON』も『KJ SEASON 2』もその時に作った曲なんです。ヒップホップの中でいろんなバリエーションの曲が溜まっていった時に、夏に合う曲は夏のタイミングで出したいとか、いろんなタイミングで出したい曲が出てきて。それのリリースするタイミングをまとめていったら、スケジュールが出来てきて。コメント欄でも「休め」とか言われてるんですけど(笑)。でも、事細かにスケジュールを決めてた以上に、「ラップスタア誕生!」で優勝を獲れたことはデカかったですね。

ー「ラップスタア誕生!」は勝ちに行った感じですか?

Kohjiya 優勝を目指してました。

ーファイナルはぶっつけ本番だったんですか?

Kohjiya そうです。リハーサルスタジオを借りてめちゃくちゃ練習したんですけど、当日は「練習しない」のがカマシでしょと思って。あとはメンタルを落ち着かせるだけだから。近くのホテルに友達と集まって、しゃべって遊びながら落ち着かせて、その上で臨みましたね。

ーライブでのポーズがリル・ヨッティで始まり、ケンドリック・ラマーで終わるのがヘッズでしたね。

Kohjiya わかる人はわかるというのが好きなので。あと、そういうチョケをやることで自分の緊張を少し落ち着かせました。

ーあの時のMCで、高校の時に父が亡くなったり、一緒に上京してきた仲間がいなくなったりしたことも言いつつ、PAINではなく、音楽を愛して楽しんでいる姿をみんなに見てほしいと語っていましたよね。そういう感じは曲にも出ていると思って。過去の出来事や内面のことを歌う時も、ネガティブには聴こえないんですよね。

Kohjiya ラッパーって、辛かったこととか昔の下積みの時期を頑張って、一分一秒、自分が向上することを考えて、ひたすら努力して耐えるんだという人が多いと思うんですよ。でも俺は違うと思ってて。俺はきついと思ってやったこともないし、ラップはずっと楽しいと思ってやってるから。 他の人からしたら、きつくて努力してるように思われるかもしれないけど、俺は苦悩ですら楽しくやりたいから。例えば、友達と一緒にいてお金がなかったとしても、それはそれで楽しいし。本当に楽しんでやってる人たちは、辛いだろうけど別のベクトルで楽しいと思えてるはずなんですよ。俺は音楽、ラップの才能があったので、楽しいとしか思わなかったし、努力もしてこなかった。ノー・ダメージ、ノー・ストレスでできてたし、「Broke Boy Rich」でもそう歌ってるんです。ただ、『KJ SEASON2』の時は病んでた時でもありましたね。

ーテーマ的にそういう曲も多いですからね。

Kohjiya でも結論では悲しいとは言ってなくて。「辛いけれど俺は信用を積み上げていくんだ」みたいな覚悟があって。最終的にはそういうオチになってる曲なのかなとは思います。

ー「10toes」を聴くと、こういうビートでもやるんだ?と思いました。

Kohjiya あれは普段やるようなビートではないけど、SminoとかSabaみたいなオルタナティブなヒップホップもスゴく好きで。たまにそういうビートに乗りたいと思って。「Shine」もけっこう変な感じなんです。「10toes」はトラップっぽい感じでメロディを作って乗せたらどうなるかなと思って。フリースタイルっぽく乗せたらいい感じになりましたね。

ーライブの方では、去年はPOP YOURS、THE HOPEともに、客演で出ずっぱりでしたよね。

Kohjiya 修行の時期だったので、基本的に時間が空いてたら絶対に動くようにしてて。「行ける?」って聞かれたら、「行けます」って、全部出てました(笑)。

ーPOP YOURS 2024では曲も作りましたよね(Kaneee, Kohjiya & Yvng Patra「Champions」)。

Kohjiya たまたまスタジオにいた時にオファーが来て、KMさんのビートを聴いたんですよ。「このビート、ヤバいな」ってなって。「これ、絶対にフック、譲りたくない。絶対に歌いたい」と思って。一番最初に作ってやろうと思って、すぐに録って。フックもヴァースも書いて送って。「これでお願いします! あと、構成とかはお任せします」って言ったんです。その後にKaneeeくんとYvng Patraのヴァースが届いて。いろいろ話し合って、セッションをして。こういう尺でこうしていこうと話をして、決まりました。本田圭佑みたいに、打ちたいと思ったらフリーキックは譲れないタイプなんです(笑)。

ー今年のPOP YOURSではどういうライブをやろうと考えています?

Kohjiya 前回は5分だったのが、今回はできる曲がいっぱいあるし、他のラッパーと一緒にできる曲もあるので。作戦を練ってる途中です。

ー2025年の予定は?

Kohjiya 2025年はアルバムを1枚リリースして、Zepp規模のワンマン・ライブを東京以外の場所でもやりたいなと思ってます。『KJ SEASON』と『KJ SEASON2』は一応ミニアルバムと定義していて。次は13~14曲ぐらいのガチガチのアルバムを出したいなと思ってます。

ー長い目で見て考えていることはありますか?

Kohjiya この前、KORKさんが企画したBRIDGEというイベントが長崎で初めて行われたんですよ。それは定期的にやって少しずつ規模を大きくしていくんですけど、僕もその時に手伝いたくて。地元に貢献できる男になりたいと思ってますね。

POP YOURSオリジナル楽曲
「PAGE ONE」
唾奇, Kohjiya
配信中
https://popyours.lnk.to/PAGEONE
Lyrics by 唾奇, Kohjiya
Produced & Mixed, Mastered by Craftbeatz

POP YOURS 2025
日程:2025年5月24日(土)・5月25日(日)
時間:開場9:30 / 開演11:00
会場:幕張メッセ国際展示場9~11ホール

出演者:
DAY1:5月24日(土)
¥ellow Bucks
ANARCHY
Benjazzy
BIM
Charlu
eyden
Fuji Taito
IO
Jinmenusagi
JP THE WAVY
Kaneee
KM
kZm
LANA
7
SEEDA
3House
Watson

NEW COMER SHOT LIVE
STACK THE PINK
Tete
TOKYO世界
ziproom

OPENING DJ
DJ YUTO
(AtoZ)

DAY2:5月25日(日)
JJJ
Bonbero
DADA
Daichi Yamamoto
Elle Teresa
G-k.i.d
Jin Dogg
Kohjiya
Kvi Baba
lil soft tennisMIKADO
NENE
PUNPEE
STUTS on the WAVE
swetty
唾奇
Yo-Sea

NEW COMER SHOT LIVE
DAB
5Leaf
lilbesh ramko
Tade Dust

OPENING DJ
MARZY
(A to Z)

チケット:Sold Out

YouTube生配信
DAY 1 https://www.youtube.com/live/cnn17Qch2Iw
DAY 2 https://www.youtube.com/live/akuYSyDd0D8
編集部おすすめ