9月12日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開される『オアシス|ネブワース1996:DAY2 Sunday 11th August』。伝説的ライブを記録した映像作品が、ソニーPCLの最新技術「RS+」によって4Kデジタルリマスターで蘇る。
10月に控える来日公演を前に、オアシスの絶頂期を劇場で追体験できる本作。その制作背景とリマスターの舞台裏に迫った。

ソニーPCLチームが語る、リマスターの舞台裏

1994年、アラン・マッギーに見出されてクリエイション・レコードからデビューした時点のオアシスは、まだ何者かもよくわからないうちから自信満々、マンチェスターから出現した謎のロックンロール超新星だった。それから瞬く間に『Definitely Maybe』(94年/全英4位)、『(What's The Story) Morning Glory?』(95年/全英1位)と2枚のアルバムが大ヒット、インディ・ロックの枠を飛び越えて全英で、そして世界で愛されるバンドへと急成長した彼らは、デビューからわずか2年でブリティッシュ・ロックの聖地、ネブワースでの公演を実現する。ローリング・ストーンズレッド・ツェッペリンピンク・フロイドといった”レジェンド”クラスのバンドがキャリアを重ねてからたどり着くその巨大な野外コンサート会場に、彼らは2日間で25万人を動員。オアシスが単なる人気バンドからロック界の頂点へと登り詰め、ひとつの現象になった瞬間だった。

その伝説的なライブを記録した『ネブワース1996』は、2021年にパッケージ化されてからBlu-rayでさんざん観てきた作品。来日前に劇場でも上映されるのか⋯⋯ぐらいの軽い気構えで試写会に足を運んで、あまりの変わりっぷりに仰天してしまった。レストアと4K化によって格段に鮮明さを増した映像はもちろん凄いが、それに加えてサウンドの臨場感が桁違い。波動がじかに伝わってくる迫力満点のドラム、目の前で熱々のチューブアンプが鳴っているかのようなギター⋯⋯そして何より、実際にオーディエンスに囲まれているような感覚に陥る歓声のリアルさがインパクト大だ。これはまるで、生で観るオアシスのコンサートそのものではないか!

今回のリマスターを担当したソニーPCLのチームにぜひ話を伺いたいと思い、映像面は福西将展さん(RS+エンジニア)、音響面は劇場用音響調整を担当した岩名路彦さんに、いくつか質問を投げかけてみた。

『オアシス|ネブワース1996』4Kで甦る伝説的名演、生のライブさながらの臨場感はどう実現した?

『オアシス|ネブワース1996:DAY2』場面写真(Photo by Jill Furmanovsky)

―まず、技術的にはどんな手法でマスタリングし直したのか教えてください。


福西:今回の劇場公開に際し、画に関しては「RS+(アールエスプラス)」というソニーPCL独自の高画質化ソリューションを採用していただきました。ノイズのコントロールと超解像アップスケールを使用し4K化を行っています(※RS+詳細はこちら)。

岩名:音響面では、Blu-rayの5.0chマスター音源をベースに、劇場上映にふさわしいサラウンド体験を目指して再構築を行いました。ソニーの音源分離技術を活用し、BassとDrumの音を抽出して新たにLFE(低音効果)を作成しています。通常のMix済み音源からの再構成では難しい部分も、分離技術により高解像度で再現することが可能となりました。全体のバランスを調整しながら、楽曲としてのグルーヴ感を意識したMixを行っています。

―映像の鮮明さも凄いですし、ボーカルのクリアさ、ギターやドラムが眼前で鳴っているかのようなサウンドの生々しさに驚きました。画と音の差は、旧版と比べてどんなところにあるでしょう?

福西:特に人物の表情にフォーカスし、劇場の大画面で細かい表情や会場の雰囲気が感じられるようにチューニングしています。

岩名:「Cigarettes & Alcohol」や「Supersonic」など、オアシスのレコーディング盤でも印象的なキックのイントロがある楽曲では、原盤との整合性を意識して調整をしています。また、耳につきやすい帯域を抑え、低音の土台を強化することで、ギターのリアルさやライブの迫力を劇場空間で最大限に引き出しています。

―ライブならではの魅力として、オーディエンスの存在感もグッと際立ち、〈観客が参加してこそ初めてオアシスのライブ〉と改めて思いました。その辺も狙いにあったのでしょうか?

福西:おっしゃる通りネブワース公演は25万人のオーディエンスが一体となった音楽体験の場を意図した作品でしたので、その制作意図をくみ取り、熱狂や息づかいまで伝えられる表現を作業時に意識しました。


岩名:まさにその通りで、ネブワース公演は25万人のオーディエンスが一体となった音楽体験の場でした。音響面でも、観客の歓声や反応を際立たせることで、ライブの熱狂や空気感を再現することを意識しています。劇場での音量設定にも細心の注意を払い、「小さすぎず、大きすぎず」という絶妙なバランスを追求しました。

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単に技術の進歩の問題だけでなく、彼らリマスターチームが『ネブワース1996』を劇場という空間でどう表現すべきか、細部まで考え抜いて作業してくれたことがわかって、長年のオアシスファンとしては嬉しい限り。いよいよ開催が迫ってきたオアシス日本ツアーの前に、これほど生々しくライブを疑似体験できる場は他にないだろう。

場内を埋め尽くしたファンと若きバンドが交歓して一体となっていく様は、この時この瞬間にしか起こり得ないマジックに満ちている。予測可能なお約束だらけのライブとは何がどう違うのか、ぜひとも劇場に足を運んで、鳥肌を立てながら体感してほしい。

福西:リマスタリングによって1枚ベールを剥がすことができればという感覚で作業しました。ステージ上だけではなく観客の生き生きとした表情や熱狂する瞬間をクリアに出すことができたのではないかと感じています。スマートフォンやSNSがなかった時代ならではの、純粋に音楽で会場がひとつになった瞬間を劇場に足を運んでいただき追体験していただけたら嬉しいです。

岩名:絶頂期の熱狂を、映像と音響の両面から圧倒的な臨場感で体験できる本作。ぜひ劇場で、あの伝説の夜を再び味わっていただければ嬉しいです。


2025年に体感する『ネブワース1996』の魅力

改めて4Kリマスターで観た『ネブワース1996』で、ドラマーがアラン・ホワイトに交代してリズム隊が安定、ツアーで力をつけてきたバンドの歯車がしっかり噛み合っていることを実感できた。やはり「Roll With It」のような曲は、アランの絶妙なドラミングがあってこそ。初期の演奏と比べるとグルーヴ感の違いが明白だし、リアムの声もよく出ている。主にリアムの素行が原因で最低のライブになってしまうこともあったが、そういう時の彼らとはまるで違って、このネブワース2日目、8月11日のライブは、すでに王者の風格を感じさせる。

しかしまだ表情にあどけなさすら残るリアムとノエルのMCは、堂々たるライブパフォーマンスとは対照的にガキっぽさ丸出し。コンプライアンスぎりぎりの発言から意味不明なコメントまで実によくしゃべる。こんな大舞台まで来て、ステージから客に酒の飲みすぎを注意するロッカーなんてノエル・ギャラガー以外に考えられない。そもそものっけからノエルが興奮気味に発する有名な言葉、「This is history!!(これは歴史なんだ)」からしてかわいすぎる。長年の確執を越えてリユニオンが実現した現在のツアーでは兄弟ともにMC控えめ、当時とはライブでの立ち居振る舞いがかなり変わっており、そこに注目して見比べるのも一興だろう。

何しろ名曲だらけのセットリストだから名場面もてんこ盛りで、ある意味クライマックスの連続と言える内容。これまではシングル曲に気を取られていたが、4Kリマスター版ではブラス・セクションが参加した「Round Are Way」の華やかさに心を奪われた。上機嫌なのが伝わってくるリアムの歌いっぷりもなかなかだし、終盤に「Up In The Sky」まで組み込んでしまうアレンジの妙は実に見事。
ノエルのコーラスもいい味を出しているので聴き逃さないでほしい。

同様に、こうした特別な場ならではのパフォーマンスとして、生のストリングス入りで歌われた「Whatever」にも素直に感動した。自宅のオーディオ環境では何となく流して観ていたシーンだったが、こういう豪華絢爛な演奏を大音量で聴くと、リアムの歌の良さと共に、楽曲の良さがストレートに伝わってくる。

もはやネブワースのオアシスの代名詞ともなった決定的名場面が、「Champagne Supernova」でのジョン・スクワイアとの共演。この年の4月にストーン・ローゼズから脱退したばかりのジョンが黒のレスポールを抱えて現れる立ち姿、自然と全身から発せられるカリスマ性には何度見ても圧倒される。2022年にリアムがネブワースで公演を行なった際にも同じようにジョンはこの曲で舞台に立ち、満員の観客を喜ばせた。さらにその後、2024年にリアム・ギャラガー&ジョン・スクワイアがコラボアルバムを作ることになるなんて、96年のオーディエンスに言っても誰も信じないだろう。

※上掲動画は『オアシス|ネブワース1996』DAY1

また、もうひとつの大きな見どころとして、96年当時は制作の準備段階にあった3枚目のアルバム『Be Here Now』(97年)から、「My Big Mouth」を早くも演っていて、これがとんでもなく素晴らしいことを強調しておきたい。プロダクションの問題で随分過剰なサウンドになってしまった感のある『Be Here Now』のバージョンと比べて、”うまくいけばこうなっていたかもしれない”オアシスのもうひとつの未来像を、この日の「My Big Mouth」から夢想せずにはいられなくなる。

奇跡のリユニオンが実現した今は、リアムがリードボーカル、ノエルがコーラスで、兄弟の声が混ざり合う瞬間が多いこの日の演奏が、どうにも感情を揺さぶってくる。今の精悍な顔つきになった2人とはかなり違う、夢と野心に溢れたイケイケのリアム&ノエルが、大観衆をコントロールして一体になっていく……文字通り夢の一夜と言えるロックスペクタクルを、オアシスが本当に来てしまう2025年の今こそ、劇場で隅々まで味わい尽くしてほしい。

『オアシス|ネブワース1996』4Kで甦る伝説的名演、生のライブさながらの臨場感はどう実現した?
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『オアシス|ネブワース1996:DAY2 Sunday 11th August』
【劇場用4Kデジタルリマスター版】
2025年9月12日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー
鑑賞料金:一般2,300円/学生・障がい者1,800円(税込)
上映時間:約112分
制作年:2021年
配給:カルチャヴィル
協力:ソニー・ミュージックレーベルズ
© Big Brother Recordings Ltd
公式ホームページ:https://www.culture-ville.jp/oasisknebworth0811

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『オアシス|ネブワース1996』4Kで甦る伝説的名演、生のライブさながらの臨場感はどう実現した?

『モーニング・グローリー:30周年記念デラックス・エディション』
2025年10月3日リリース
新たなアンプラグド・バージョン5曲を収録
①限定2CD/②3LP/③デジタルの3形態で登場
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/Oasis/info/575184

『オアシス|ネブワース1996』4Kで甦る伝説的名演、生のライブさながらの臨場感はどう実現した?

ベストアルバム
『Time Flies...1994-2009』(2CD限定仕様リマスター盤)
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