8月某日。SHO-SENSEI!!のインタビューを行う予定をしていた前日、スタッフの方から連絡が入った。
「明日、車でご自宅までお迎えにいきます」。そんなVIP対応してもらわなくていいですよ、という気持ちでお断りの返事を入れたものの、結局次の日の夕方、SHO-SENSEI!!本人とスタッフ2人が迎えにきてくれた。向かう先は、ここから1時間半くらいかけたところにある、SHO-SENSEI!!の自宅スタジオだ。

車中では、いろんな話をした。SHO-SENSEI!!をインタビューするのはこれで3回目になるが、記事を作るための「取材」からは漏れるような雑談をたくさんした。SHO-SENSEI!!の地元の話も、最近の生活についても、音楽のことも、くだらないことも。普段、限られた時間で記事を作るための「取材」を行うときは、当然アーティスト側の話を聞くことがメインになるが、SHO-SENSEI!!から私の話もたくさん聞いてくれた。

この時間が必要だったから、SHO-SENSEI!!はわざわざ車を出して迎えにきてくれたのだ。効率よく人を配置し、できるだけ失敗や無駄を避け、結果まで最短距離を狙うのが正解とされる傾向が強い世の中で、SHO-SENSEI!!は音楽の中でその真逆の生き方を見せてくれている。だからインタビューという機会においても、自分の音楽を語る上でただプロモーショントークをするのではなく、もっと互いを知った関係性の中で会話をしたいと思ってくれたのだろう。はっきり言って、アーティストが「インタビュー前に雑談の時間がほしい」などと言ってくれたことは、これまでほとんどない。人と人が時間と空気を共有して心の深いところで交わる中から生まれるものの尊さや、資本主義の基準では測り得ない価値観や愛を大切にしている、彼らしい行動だと思った。


SHO-SENSEI!!が住むマンションに到着し、扉を開けると、まるでスタジオのような配置で制作・録音に使うPCやスピーカー、マイク、ソファなどが置かれていた。そしてロンドンから輸入しているという大量のぬいぐるみ、「DESIGN FESTA」で買ったアート作品などが部屋を彩っている。まもなくしてSHO-SENSEI!!の音楽をともに作り上げている、トラックメイカー・10pm、ドラマー・細川千弘(ex. KOTORI)も到着した。そうして今回はチーム・SHO-SENSEI!!に、最新EP『スローバラード』に表れているSHO-SENSEI!!の真髄や、「SHO-SENSEI!!なりのJ-POPを作るための挑戦の軌跡」ついてじっくり語ってもらった。

―いつもここで集まって作業しているんですか?

SHO-SENSEI!!:意外とそうでもないかもしれない。10pmの家のほうが集まるかも。

10pm:たしかに。僕はこの上の階に住んでいるんですけど、曲のアレンジは僕の部屋でやって、アレンジをある程度決めてからボーカルをちょっと変えようってときはここに来て、っていう感じです。

SHO-SENSEI!!:千弘くんも時間があったら呼んで、みんなでやるっていう。

細川千弘:一緒にいて、俺は「これええな」くらいの感じで、10pmがバーって作業する、みたいなことを何時間もやっている感じです。

SHO-SENSEI!!:俺自身、カタい制作が好きじゃないから。曲を作るってなったときに、10時間あったら、意図的に9時間は遊びに使うタイプ。
だから千弘くんがいてくれたらそれだけでいい。作るときに一緒にいて、俺らも楽しくて、仮にアドバイスとかがなかったとしても「ええやん」って言うだけでいいというか。それが一番大事だと思う。横でスマブラしながら聴いて「ええやん」って言うだけで全然いい。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

左から:10pm、SHO-SENSEI!!、細川千弘(Photo by Goku Noguchi)

―今日車で迎えにきてくれたこともそうだけど、何か特別なことをするとかではなくとも、言葉や心を交わすことで残るものってありますよね。車中ではあえてEP『スローバラード』の話をしなかったですけど、感想を率直に言うなら「変化」でした。8月に「シューゲイザー」をリリースしたときから思っていたけど、SHO-SENSEI!!のサウンドが大きく変化したと感じました。それは意図したことでした?

SHO-SENSEI!!:はい。去年11月にアルバム『THE GHOST』を出して、普通に売れなさすぎて。世に売れることよりも、周りの友達とかがアガるかどうかが重要な気がしていたけど、そこの反応も薄すぎて。あとアニメのエンディングのコンペに応募して、ダメで、このままじゃちょっとまずいなと思って。『THE GHOST』は僕的にめっちゃポップスでキャッチーにしたつもりだったけど、ラジオに出させてもらったり、周りのミュージシャンの反応を聞いたら、誰もポップスだと思ってなくて、自分がキャッチーだと思っている部分とみんながキャッチーに感じる部分は違うと気づいたから、簡単に言ったら、それをすり合わせようとした期間でした。
すり合わせた結果、すり合わせがいらないという結論に至った感じではあるんですけど。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

SHO-SENSEI!!(Photo by Goku Noguchi)

―そういう話を2人ともして?

10pm:一番覚えているのが――俺がこのマンションに引っ越すことが決まって、前の家の片付けを手伝いに来てもらったとき、3人で夜通し「俺らが作ろうとしているJ-POPって何やろう」みたいな話を濃くして、そこで「やりたかったのはこういうことなのかもな」って、一気に霧が晴れたというか。そのときに言った言葉とかはまったく覚えてないけど、空気感だけはずっと覚えていて、そのフィルターを通して全曲作っていった感じです。

千弘:いろんなタイミングで、3人で話はしていたんですよ。「次のアルバムについて話すために集まる」とかではなくて、たとえば3人で車に乗っているときに「この曲ってなんでよかったんだろう」「この曲はなんでダメだったんだろう」ということから「俺らがいいとするものに共通している何かがあるんじゃね?」みたいな感じで。その中で「エナジー感」とか、何個かワードが定期的に出たんですよ。それが共通言語として定着していく、っていう積み重ねで今回の6曲ができました。

―まずこのEPに向けて、SHO-SENSEI!!なりの新しいJ-POPを作ろうというマインドが3人に共通して強くあったんだということを理解したんですけど、そこからこの制作を通してみんなが見つけた「ポップスとは何か」の共通言語とは、「エナジー感」以外だとどういうものがありました?

SHO-SENSEI!!:結論は、「この音をしていたらポップスになる」とかはなくて、その人の特徴が最大限に出ていたらそれがポップスなんだなって。世界中で新しいポップスが定期的に生まれてくるけど、その音だったからポップスになったんじゃなくて、その人にとってそれがポップスだっただけで。何か新しいものを足してポップスを作っていくという考えをしていたけど、そうじゃなくて、自分の空気感をなるべく純度高く出すことが一番のポップスへの近道なのかなって思うようになりました。今までのインタビューで矢島さんにもジャンル感のことを言っていたけど、たとえば「ヒップホップっぽい」とか、「邦ロック感」とか、そういうことを意識するのは無駄だなって思ってきた感じですね。

―自分にしか歌えないことを歌う、自分にしか書けない曲を書く、というのは、SHO-SENSEI!!がずっと大事にしていたことではあると思うんです。
ポップスとは何か、このEPを制作する中で他にも掴んだものがありそうですよね。

SHO-SENSEI!!:細かい要素はいっぱいあるですけど……全曲に共通しているのは、やっぱりキラキラしているなと思いました。ファッションでたとえたら考えやすいと思っているんですけど、レディ・ガガや安室奈美恵は「全身キラキラ」。僕は基本的に「無骨にジーンズを履いてレザーを着ているけど、ちょっとキラッとしたベルトがついてる」くらいのキラキラ感。

千弘:ビートを作っているとき、「今のビート、全身スウェットでキメてる感じやから、これにレザーのショルダーバックみたいな要素を足そうや」みたいなことを言って、10pmがバーってやったことがあって。俺は音楽の捉え方が2人と全然違うんです。バンドをやっていたときも音楽を数学的に捉えて話していたし、「この曲のここがいい」というのも全部音符上で考えるような聴き方だったんですよ。だからそうやってファッションに置き換えて話すのは新鮮でした。

SHO-SENSEI!!:俺がコードとかをわかってないから、そっちのほうがやりやすい。しかも、そのコードを使うことは別に重要じゃないというか。たとえば、音がベタッとしていると感じたとして、「じゃあこのコードを入れましょう」とか言うけど、そのコードじゃなくてもよくて。ベタっとしているのを解消することが一番大事で、そこだけを伝えたい。
だから特に制作の最初の部分では、あまり具体的には言わないほうがいいのかなって思っています。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

左から:10pm、SHO-SENSEI!!、細川千弘(Photo by Goku Noguchi)

「銀座の高級クッキー」より「湿ったクッキー」

―このEPが完成するまで各曲でどういうトライがあったのかを、制作順に辿りながら聞いてもいいですか。最初に作ったのは「ラブレタ」?

SHO-SENSEI!!:「ラブレタ」は、しくったんですよ。

―しくった?

SHO-SENSEI!!:「J-POPを作ろう」ってなったときに、俺の中の「J-POPっぽい」の一番のシグネチャーは米津玄師の「Lemon」だったから、「Lemon」を論理的に考えたんです。これはディスとかではなくて、有名なJ-POPのインストって「何でもねえな」という話になって。何でもないインストを作るって本当に難しいんですよ。「ラブレタ」は何でもないものを目指して、何でもなくしたら、普通に「何でもねえや」ってなっちゃった。そういうことではなかったなって。綺麗にしすぎたという感じですね。かっこよくならなかった。

10pm:J-POPのサウンドを勉強して、今までやったことなかった手法でギター、ピアノ、ストリングスとかを駆使した結果、「なんか全然違うな」ってなったというか。曲自体は好きなんですけど、SHO-SENSEI!!の曲として聴いたときに、これは全然SHO-SENSEI!!ではないなと思って。
でも「ラブレタ」という曲を作ったことに関しては、めっちゃよかったなと思います。「ラブレタ」を経て、残りの曲を作るときに曲ごとにアプローチを変えられたので。

―この部屋にピアノもバイオリンもあって、「オトナの簡単ピアノ がんばらずに弾ける初心者のJ-POP」という教本もありますけど、それは今回SHO-SENSEI!!なりのJ-POPを模索するために手に入れたもの?

SHO-SENSEI!!:いや全然。バイオリンは1か月くらい前、メルカリで8000円で売ってたから買ってみました。タトゥーとか入ってる感じでシャツとかを着てバイオリンを弾いたら、かっこよくね?と思って買っただけです(笑)。「きらきら星」だけ弾けるようになりました。ピアノは2年前くらいに買って、「真夏の果実」だけ練習してワンコーラスはいけるようになったけど、それがギリです(笑)。お母さんがピアノの先生だったので小さいときはやっていたんですけど、全然できないですね。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

SHO-SENSEI!!(Photo by Goku Noguchi)

―曲ごとにアプローチを変えて、学びを得ていく過程の中で、次に出した「エリー」ではどういうことを考えました?

SHO-SENSEI!!:「エリー」はまたちょっと話が違うんですよ。デモ自体は3年前からあったんです。デモのまま出せばよかったなって、今はめっちゃ思ってます。岡本太郎美術館に「美しいものだけが美しいわけではない。醜いものにも醜悪美という美しさがある」みたいな文章が書いてあるんですけど、「エリー」はそれを思いました。デモは、汚いし音も外しているけど、あれが美しかったなって。デモはリアルシットだったんですよ。それを作り直すとか綺麗に録ること自体が間違えていた。たとえるなら、好きな人のために作ったけど湿っているクッキーか、めちゃくちゃ高い銀座のクッキーか、みたいな。銀座のクッキーのほうがみんな美味いって言うけど、俺にとっては湿ったクッキーのほうが美味しかった、という感じです。

千弘:J-POPに共通しているのって、いくらごちゃごちゃしていてもパッケージとしてまとまっているものだと思うので、それが銀座のクッキーだとして、銀座のクッキーのほうが美味いって全員が言うんだけど、この曲は特に湿ったクッキーのほうがよかったかもな。

SHO-SENSEI!!:でも死ぬ前に思い出すのは、昔もらった湿ったクッキーだと思う。死ぬ前に、誰かにお土産でもらった銀座のクッキーは思い出さない。

千弘:それはそう。

―たくさんの人に好まれて、週間チャートのトップ10に入るのは銀座のクッキーですよね。

SHO-SENSEI!!:誰かのために作ったけど湿ってしまったクッキーは、週間チャートのトップ1にはならなくとも、何かが起これば日本の名曲トップ3に入る可能性があると思う。だって、尾崎(豊)の曲、湿ったクッキーありません?

―たしかに。めちゃくちゃわかります。

SHO-SENSEI!!:振り返ると、それをトライしたかったなって思います。でも真剣にやったこと自体は何も間違ってないし、悪いとは思ってないです。この経験を次に活かそうっていう気持ちです。

千弘:新しく録った「エリー」も、俺は純粋にいいと思ってる。ミュージックとして聴きやすいし、「ラブレタ」くらいからオートチューンも外していて、ショウタロウ(SHO-SENSEI!!)が歌っている感じとかが上手いことパッケージできていると思う。今回のEPは、声がめちゃめちゃ変わったと思うんですよね。意外とオートチューンがなくてもいいというか、重要なのはオートチューンを使ってショウタロウが歌うことではなかったなって、今回で思ったかもしれないです。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

細川千弘(Photo by Goku Noguchi)

誰もが知っている言葉だけで歌詞を書く理由

―今回のEPにおける歌い方や声の処理の変化は、すごく心が掴まれたところでした。順を追って聞かせてもらうと、さっきも言ったけど「シューゲイザー」は8月にリリースされたタイミングで、SHO-SENSEI!!のディスコグラフィの中で大きな変化を感じた1曲でした。これはどういうトライをしようとする中で生まれた曲だったんですか?

SHO-SENSEI!!:これも2、3年前からデモがあって、でも歌詞がハマらなかったものを仕上げたという感じです。10pmの「BPM130くらいのシューゲイザー系に、前半トラップビートを入れてチャラいヒップホップ系のノリで言葉を入れたら面白いんじゃないか」っていうアイデアが最初だったけど、その匂いは一切なくなっていますね。三連符の曲のメロディって全部似ているなと思ったから、目標としては三連符の中で言葉だけを追える曲にしたいなと思っていました。

10pm:このトラックを2、3年前に作ったときから今まで、忘れたことはなかったくらい個人的にすごく好きで、唯一、「これは絶対に曲にしたほうがいい」ってずっと言ってて。当時インスタライブをしながら作っていて、それをXanseiが見ていて「めっちゃいいね」って言ってくれて、「シューゲイザー」が出る前にたまたま会ったときも「俺、これ覚えてるよ」って言ってくれました。2、3年前で、しかもインストだけだったのに、覚えてくれていたんだなって。然るべきときに出るんじゃないかなとはずっと思っていたから出てよかったです。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

10pm

―EPのタイトルにもした「スローバラード」は、SHO-SENSEI!!がリスペクトする忌野清志郎さんの曲名であり、歌詞にもオマージュが入っていて。

SHO-SENSEI!!:これもリアルシットな、ズル剥けな曲ですね。オマージュ的に入れたというより、地元の市営駐車場で清志郎の「スローバラード」をかけたときの話なので、もしそのとき違う歌をかけていたらそのタイトルになっていたかもしれない。これは歌詞が一番上手くいったなと思いました。

―それは、どういうポイントにおいて実感しているんですか?

SHO-SENSEI!!:僕は人の歌詞や文章を見て、接続詞や助詞を入れ替えても成り立つものが好きじゃなくて。意識してみてほしいんですけど、文章の「は」「が」「も」「に」とかが変わっても意味は変わらない歌詞って、世の中にめっちゃ多いんですよ。でも清志郎、THE BLUE HEARTSとか、僕がすごいと思う人の歌詞は「は」とか「が」を変えたら意味が変わるんです。たとえばTHE HIGH-LOWSの「サンダーロード」の素晴らしい歌詞とか、〈他に道は ないんだろ〉が「他に道も ないんだろ」になっちゃったら、この意味は成り立たないじゃないですか。しかも難しい言葉が出てこない。みんなが知っている言葉だけで、その言葉以外では表すことのできない感情を表しているのが素晴らしいと思っていて。本もカフカの『変身』、『星の王子さま』とかは、難しい言葉が一切出てこなくて絵本みたいなんですよ。それでも底知れぬ深さを感じるじゃないですか。それって、一番難しいことで。僕の「スローバラード」の歌詞は、僕の中で一番、子どもしか使わないような言葉だけでちゃんと文学になっていると思うから気に入ってます。

―なぜSHO-SENSEI!!が、みんなの知っている言葉や、みんなが生活で使う言葉で歌詞を書いているのかがわかる、大事な話ですね。

SHO-SENSEI!!:それは別に歌だけじゃないと思う。言葉に関するものは全部そうだと思います。たとえばバイトで誰かにものを教えるとき、難しい言い方はしないし、知っている言葉しか使わないじゃないですか。言葉って伝えるものだから、相手がわかりやすい言葉を使うべきだと思う。だから僕は歌詞で難しい言葉言い回しをしたくないと思っています。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

左から:10pm、細川千弘、SHO-SENSEI!!(Photo by Goku Noguchi)

―それは人とコミュニケーションするときのSHO-SENSEI!!なりの誠実な姿勢の表れでもありますね。歌い方の変化について聞くと、特に今までと違う類の感情が伝わってくる歌になっていると思ったのが「スローバラード」や、1曲目の「赤い車」でした。「赤い車」はサビのメロディも新鮮で。「赤い車」「スローバラード」「シューゲイザー」とか、名前を知らない人が聴いたら「ロックバンドかな」と思うようなサウンドじゃないですか。

千弘:耳に届く情報としてはバンドっぽいですよね。

10pm:「赤い車」を作ったときはフォーク、カントリーをめっちゃ聴いてました。あと、アンダーグラフの「ツバサ」もリファレンスとしてありました。結果、僕はこのEPで一番好きな曲です。

SHO-SENSEI!!:「赤い車」はキーでいったらGメジャーなんですけど、J-POPのヒット曲のほとんどはGで。僕はGが苦手だったんですけど、それを克服した曲です。Gメジャーに対して自分の声の旨味の出し方を探して、「この歌い方をしたら自分の声でもかっこいい」っていう歌い方でやったから、結果、歌い方が変わったって言われるようになりました。歌い方を変えようと思ったとかでは全然なくて、インストとキーに対して自分の声がかっこよく聴こえる形で歌っただけです。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

左から:10pm、細川千弘、SHO-SENSEI!!(Photo by Goku Noguchi)

―もうひとつ。「ひとり」は『スローバラード』期以前のテイストを感じました。この曲だけ頭にタグも入っているし。このEPに唯一、ヒップホップの曲を入れたのは、どういう思いからだったんですか?

SHO-SENSEI!!:目標としては、他の曲とテイストが違うと感じさせたくなかったんですけど、さすがに無理でした(笑)。ヒップホップ系の後輩の曲作りを手伝っていたら、俺もラップしたくなって遊びで作ったやつです。

―この記事が出る頃にはツアー『SHO-SENSEI!! スローバラード TOUR』が始まっていますが、このEPの制作を経て、ライブはどうなりそうですか? これまでも生ドラムとヒップホップのビートの掛け合わせ方を追求されていましたけど、今回のEPの曲を持ってツアーやフェスを回ると、リスナーの中のSHO-SENSEI!!のイメージとかフロアの景色が変わりそうですね。

千弘:これまでのトラップとかが流れている曲は、ドラムのテンション的にバンドでライブをしている感覚とはまた別だったんですけど、今回のEPの曲はやりやすそうだなって漠然と思いますね。もともと2人がDJセットでライブをやっていたところに、僕が上モノ的なアプローチでドラムが入ったので最初は難しかったんですけど、ちょっとずつ見えてきている感じがします。

SHO-SENSEI!!:それはワールドレベルでトライしている人がいっぱいいて、まだ正解ができてないって感じだと思う。

千弘:世界中でこの悩みを抱えている奴らがいるんだろうなって。まだ名前がついてないジャンルみたいな感じだと思うんですよ。すごく難しいことをやっていると思う。

SHO-SENSEI!!:たまに海外のライブ動画でやばい曲といいドラムの組み合わせがあって。多分、それは世界中でみんなリファレンスにしていると思う。俺らもめっちゃ見てます。

SHO-SENSEI!!:でも結局、このEPの曲は全力で歌えたら何でもいいかなと思います。いいと思う曲を作ったから、あとは真剣に歌うだけっていう、ミニマムな思考です。今評価されているものはいっぱいあるけど、そこに惑わされないようにしないといけないって思います。いいものは100年経ってもいいから、いいものを作ろうという気持ちです。『THE GHOST』が売れなさすぎて、アニメタイアップのコンペも上手くいかなかったからやばいと思って、売れたいと思って売れそうな曲を作ろうと思ったけど、1年経った結果、全然違うところに辿り着きました。

―友達がアガってくれるような作品ができた自信はありますか?

SHO-SENSEI!!:そう、それが一番大事だったから。ヘアメイクをやってくれているやつが「月の石」のビデオを撮りたいって言ってくれて。もう何年も一緒にいるけど、初めてそんなことを言ってくれたし。友達の反応はよかったから、第一関門はクリアかなと思います。

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

Photo by Goku Noguchi

Edit by Yukako Yajima

<INFORMATION>

SHO-SENSEI!!と盟友10pm&細川千弘が語る、「湿ったクッキー」みたいなポップスを作るミニマル思考

SHO-SENSEI!!『スローバラード』
配信中
https://lnk.to/pIaoM3ID

SHO-SENSEI!! スローバラード TOUR
2025年10月3日(金)神奈川 横浜BAYSIS
2025年10月8日(水)大阪 大阪 BIGCAT
2025年10月13日(月・祝)新潟 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2025年10月24日(金)香川 高松TOONICE
2025年10月25日(土)岡山 岡山YEBISU YA PRO
2025年11月14日(金)宮城 仙台Darwin
2025年11月21日(金)愛知 名古屋Electric Lady Land
2025年11月24日(月・祝)静岡 浜松FORCE
2025年11月28日(金)広島 広島SECOND CRUTCH
2025年12月5日(金)北海道 札幌 BESSIE HALL
2025年12月10日(水)福岡 福岡DRUM Be-1
2025年12月18日(木)東京 Spotify O-EAST

https://eplus.jp/shosensei/

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