ざらつきや刺々しさのある言葉を選んだ
──前作『Groovism』から4年のタームを置いてのリリースは、わりと理想的なのでは?
K:前々作『ROUTE 09』から『Groovism』まで、べストやソロを挟んだとは言え6年空いたので、ジリジリと詰めてきたね(笑)。バンドと弾き語りをやりつつ、サポートやマネジメント業務(笑)を入れると、どうしてもこれくらいの時間はかかっちゃうかなぁ。
──この4年の間にソロ・ライブも精力的に行なってきましたが、その活動の成果が今回の作品づくりにフィードバックした部分はありますか。
K:あるね。ソロは気がつけばもう10年以上やってて、サイドワークだけどライフワークでもあって。バンドとは別腹的な部分もありつつうまく並行してやれればいいと思ってるんだけど、切り離すこともできないからね。だからフィードバックはしてると思う。
──ここ何年かは一枚入魂と言うよりも一曲入魂でアルバムづくりをしているようにお見受けしますが。
K:メジャーの最初のアルバムからずっとそんな感じだよ。俺たちがやってるのはオーソドックスなロックだし、最少編成でずっとメンバーも一緒だから、たまには何か変えたいとなっても、一体どこを? って話なわけで(笑)。だから目新しさを出すために、前作ではエンジニアを変えてみた。今回は音的には前作の延長線上で行こうと思いつつ、前作ではやらなかったゲスト・ミュージシャンを招いて数曲やることを漠然と考えてた。いつもコンセプチュアルにやることは考えてないし、テーマみたいなものもないしね。
──そこをあえてテーマらしきものを挙げるとすれば、未来に対して希望を持てない時代を抗うロックンロール・アルバムと言えませんか。暗いトンネルの中をさまよって閉塞感や絶望ばかりを感じながら、それでも光を求めて出口を探していると言うか。
K:言葉にすると野暮になるからあまり口にはしないけど、そういうことはどこかで思ってるかもしれないね。
──と言うのも、「魔法など とっくにもう/夜明け前に 解けちまった」と唄われる「自由と闇」、「立ち尽くしているうちに/虚しさに苛まれて」と唄われる「警鐘スキッフル」、「ぼう然とするしかない」「釈然とするはずがない」と唄われる「FANG」など、本作の歌詞はいつになく内向的なものが多いなと思って。
K:現実を直視したり、社会に対して少し批判的なワードを使うだけでそういうふうに取られてしまうかもしれないけど、言葉が与えるインパクトほど強くものを言いたいわけでもないんだよ。ギターの音色を選ぶのと同じように言葉のざらつきや刺々しさを選んでるところがあるんで。だから自分の偽らざる思いを必ずしもそのまんま歌詞にしてるわけでもない。
──とは言え、「THE OTHER SIDE OF THE END」のように聴き手の背中を押してくれるような明るく前向きな曲でも、終止符の向こう側へ果敢に跳び越えようとする、困難な時代に抗う気概みたいなものを感じるんですよね。
K:そういう感じは多分、自然と出たのかな。ここ数年の間に自分の感じていたことが。
──今回も非常に洗練された粒揃いの楽曲群ですが、アルバムづくりに向けて一気に書き上げたんですか。
K:いや、前作を出してツアーをひとしきりやった後に、1曲ずつ溜めていった感じ。新規のツアーやワンマンをやるたびに新曲をなるべくやるようにしていてね。
──8月から9月にかけて本作の先行発売ツアーを敢行されましたが、今回の新曲群もライブでの反応が良かったんじゃないですか。
K:お陰様でね。8割の曲は最低でも一度はライブでやってたけど、馴染みの薄い曲も多いし、2曲は書き下ろしで。リリース前にそれらを聴いてもらうのはなかなかスリリングだけど(笑)、楽しんでやれたよ。
──本作は全体の構成もよく練られてあるなと思って。ドライブ感溢れるヒリヒリしたナンバーの「MOJO FIRE」をコンパクトに聴かせてから雄大で包容力のある「THE OTHER SIDE OF THE END」をじっくり聴かせるなど、導入部からして一気に引き込まれますし。
K:こうしてアルバムを何枚も出してきて気づいたんだけど、俺はわりとバランスを取るタイプなんだよね。たとえばラモーンズ的に偏った方向へ振り切る潔さに憧れたりもするけど、自分がやるとなるといろんなタイプの曲を集めたものをつくりたくなる。だからつい全体のバランスや流れを考えてしまう。
──アナログ盤のA面、B面のような構成のようにも感じますね。本作の目玉のひとつである「自由と闇」はA面の最後のほうに入れたみたいな。
K:普段からアナログ・レコードばっかり聴いてるから、自然とそういう流れを学んでいるのかもしれない。
オルガンで参加したメンフィス・ソウルの重鎮
──その「自由と闇」ですが、あのハイ・リズム・セクション(メンフィス・ソウルの名門レーベル〈ハイ・レコード〉のサウンドを支えた黄金のリズム・セクション)のチャールズ・ホッジスにオルガンを弾いてもらうことになった経緯を聞かせてください。
K:「自由と闇」はメンフィス・ソウルのマナーに則った曲なので、オルガンを入れたいなと思って。たとえば細海魚さんやエマーソン北村さんに頼めば最高なのは目に見えてるけど、その部分もいつもの感じから一歩踏み込みたくてね。ちょっと夢を追ってみようと思って、a flood of circleの佐々木亮介に軽く相談したんだよ。彼はソロのミニ・アルバム(『LEO』)をメンフィスのロイヤル・スタジオでレコーディングしたことがあるから。今は大きな音源データでもネットを介せばやり取りできるから物理的には可能だけど、メンフィスの重鎮にデータのやり取りでダビングなんてことをやってもらえるかどうか、ちょっと酔ってる日に(笑)亮介にLINEで探りを入れたわけ。そしたら「絶対にやってくれますよ」と言ってくれた上に、すぐにコーディネーターさんと繋いでくれてね。
──実際、二つ返事でOKが出たんですか。
K:曲のラフ音源と譜面を送ってくれと言うから送って聴いてもらったんだけど、次の日にはもう「やるよ」とOKの返事が来た。
──亮介さんが絶妙なトスを上げてトントン拍子で話が進んだと。
K:うん。最高のキラーパスを出してくれた(笑)。
──亮介さんのアルバムでもエンジニアを務めたローレンス・ブー・ミッチェルが録音に参加したそうですね。
K:うん。〈ハイ・レコード〉という〈スタックス〉と双璧を成すレーベルでプロデューサー、エンジニア、オーナーを務めたウィリー・ミッチェルというメンフィス・ソウルの重要人物がいて、アル・グリーンやアン・ピーブルス、オーティス・クレイといった人たちの名盤を生み出した人なんだけど、そのウィリーの息子さんがブーで、父親からロイヤル・スタジオを受け継いでオーナーをやってるわけ。彼自身、グラミーで年間最優秀レコード賞を取ったこともある腕利きのエンジニア/プロデューサーなんだよ。チャールズ・ホッジスは御年71歳のレジェンドだし、宅録したデータをギガファイル便で送るなんてことはさすがにおやりにならないから(笑)、どうしてもスタジオは使わなくちゃいけない、と。それでどこかリーズナブルなスタジオででもやってくれるのかなと思ったら、なんとロイヤル・スタジオで録る、と。チャールズのハモンド・オルガンが常設されてるから、そこで録るしかないってことみたいで。ロイヤル・スタジオは映画(『約束の地、メンフィス~テイク・ミー・トゥ・ザ・リヴァー』)でも映っていたけど、誰が来て録音する時でも、ドラム、オルガン、ベースアンプの位置を変えないらしいんだよ。
──アル・グリーンが70年代に数々のグラミー受賞ヒット曲を世に送り出す拠点だった頃からずっと変わっていないと。
K:そういうこと。で、最初は誰かアシスタントみたいな人が隙間で録音してくれるのかな? と思ったんだよ。実際、それで充分だし。そしたらブーが録ってくれててさ。
──オーソドックスなロックンロール・バンドであるGROOVERSが、データのやり取りという文明の利器を活用するとは面白いですね。
K:それができる世の中なんだから、そこは恩恵にあずかろうと思って。これがバンドを始めた20数年前なら、マルチ・テープを送らなきゃいけなかったり、実際に行かなきゃいけなかった。もちろん今だってバンドでメンフィスに行って一緒に録音できたら最高だろうけど、旅費だけでレコーディング総費用の半分は飛ぶだろうから(笑)。
──ゲストを迎えたのはもう一曲、ピアノの伊東ミキオさんとハープのKOTEZさんが参加した「警鐘スキッフル」がありますが、これは軽快で楽しいロックンロールに徹していますね。
K:お飾り程度の鍵盤は自分でも少し弾けるけど、あんなに速いR&Rピアノは弾けないから上手い人にお願いしたくて。ハープも自分ではあんなふうに吹けないし、ここはぜひKOTEZ君に、と。スキッフル・ビートのロッキン・ブルーズをビシっとキメたかったから、思いっきり得意分野の人たちに協力してもらった。適材適所(笑)。
──その一曲前の気怠くブルージーなナンバー「LOST STORY」とは対照的ですね。
K:そうかもね。
──ゲスト勢に全面的に参加してもらうのではなく、2曲限定で参加してもらうのがGROOVERSらしいと言うか、一彦さんなりのバランス感覚と言うか。
K:全部の曲にゲストを入れるのも可能だし、それはそれでいい感じに仕上げられるとは思うけど、そこまでは考えなかったね。それもバランスを考慮してなのかな。意図的にバランスを取ろうと思ってるわけじゃないけど、自然とそうなるんだろうね。
ラフさと構築された良さを両立させたい
──「FANG」はカッティングするギターと動きまわるベースラインが心地好い、洗練されたアーバンソウルといった趣ですね。
K:自分なりにソウル・ファンクを意識したと言うか。いい感じのコードリフができたからこの方向で行きたいと思ってね。
──傍観者ぶっていると野性の牙(FANG)を抜かれるぜという、これもある種の警鐘を唄った曲に感じましたが。
K:そんなところかな。“FANG”というフレーズが単純にいいなと思って。
──ミッドテンポで滔々と唄われる「いにしえランプ」もまたメロディアスでロマンティックな名曲で、アルバム終盤のハイライトですね。
K:「自由と闇」がバラッドだとしたら、もう一曲、別のタイプのメロウな曲を入れたくてね。アナログで言えばB面の終わりのほうに。A面とB面に一曲ずつメロウな曲が入ってるのが好きなのもあって。
──よくアイルランドの音楽で多用されているブズーキの音色が絶妙なスパイスとなって、曲の叙情感をさり気なく盛り立てていますね。
K:ブズーキをマンドリン代わりに使うのが好きでね。マンドリンの1オクターブ低いチューニングにしてるんだけど、アイリッシュ・ブズーキの本来のチューニングとはちょっと変えてる。それだと上手く弾けないから、独自のチューニングで。
──歌のテーマとしては、運命の針路を導いてくれる象徴として古いランプを登場させた感じですか。
K:ロマンティックな解釈だね(笑)。ちょっとレトロ感を出すツールとして使ったところはあるかな。「いにしえランプ」は実は自分の中では、臭みも含めてあえて80'sに寄せたところがあるんだよ。80'sの、バラードでもないんだけどちょっとメロウな曲ってあったじゃない? ポリスとかホール&オーツとかポール・ヤングとか。ああいう人たちがやるメロウな曲のコード進行とかのイメージを隠し味的に意識してみた。誰にも気づかれない隠し味かもしれないけど(笑)。
──いろんなタイプの曲を織り交ぜながらも、最後は「SUNRISER」のようにシンプルでブルージーなロックンロールで締めるのがGROOVERSらしいですね。
K:重ためだったり壮大だったりするバラード的な曲で締めるのもアリなんだけど、最近は小気味良いロックンロールで締めたくてね。軽快で重苦しくない曲で終わらせたくなることが多い。
──いちギタリストとして音色や録り方にこだわった部分は今回ありましたか。
K:どうだろうな。前作ほどああでもない、こうでもないとアンプのツマミをいじってないと思う。わりとラフだったかもしれない。基本的にはジャズマスターとグレッチの2本を使って、テレキャスターが時々出てくる感じ。あとは何か別の音がないかな? って時に4本目が出てくるみたいな。今回は曲が呼んでる音色を真剣に探すって感じじゃなく、もうちょっとラフだった。
──良い意味で年々ラフになってきている感じですか。
K:適当にやってるわけじゃないんだけど、たとえば「LOST STORY」みたいにストーンズっぽい曲は気分的に絶対テレキャスターとかさ。コード・リフで押しまくる「気晴らしが必要」みたいな曲ならフェンダーのシングルコイル系で太めの設定だよな、とか。最近はそういう気分とか感覚を優先させてるね。
──すでに四半世紀を超えるバンドだし、プリプロで細かいニュアンスを伝えることを特にしなくても一彦さんの思い描く設計図通りにレコーディングできる感じなんですよね?
K:そうだね。だから本格的なプリプロはほとんどやらない。レコーディングの前に1回か2回は確認のリハをやるけど、それはプリプロとは呼べないかも。設計図を書きすぎないほうが良かったりするから。ただ全然しないのもなんだからね。こう見えてレコーディングはちゃんと構築していくのが好きだから。どんな音にしよう、どういうダビングが粋か、どういうアンビ感で行くのがゴキゲンかとかにはこだわるけど、演奏自体はラフって言うか。ラフさと構築された良さが両立してるようなものを目指してる。それは毎回そうだね。
時代の流れに左右されない音楽
──前々作の『ROUTE 09』以降、緻密さとラフさの塩梅はかなり理想的なところまで来ていると思いますが。
K:そう思う。潤沢な予算を使って日数をかけてつくるやり方ではないけど、それができないなりのやり方を覚えたところがあるのかもしれない。それはやっぱり重ねてきた歳月もあるし、3人でずっと長くやってきて勝手知ったる部分が大きいんじゃないかな。だからと言ってあまりテキトーなのもイヤだし、レコーディングにはレコーディングのマジックがあるし、スタジオ・ライブみたいな感じでレコーディングするのは好みとしてはあまり好きじゃない。録音ならではの、凝ったことをやる楽しさも味わいたいからね。俺はビートルズなら後期のほうが好きだったし、レコーディングは記録と言うよりも録音芸術だと思ってるから。
──なるほど。ちなみにストーンズだとどの辺りの作品が好きですか。
K:好きなのは『メイン・ストリートのならず者』から『スティル・ライフ』あたりの時期かな。もちろん現在も含む、全体的に好きなのは前提だけど。『レット・イット・ブリード』とか過渡期の感じも大好きだし、当然初期にもたくさん好きな曲はある。ストーンズは作り込む感じじゃないラフなイメージも強いけど、逆に1日中テープを回しっぱなしとか、時期によっては1年かけてるとか、ああいうのは単純に憧れもあるよね。
──でも実際のところどうなんでしょう。潤沢な予算を使ってアルバムをつくってみたいですか。
K:もし予算的に余裕のある状況だとしても、今の時代にそぐわない気もするね。時代のスピード感を全く無視して浮世離れした感じでやるならアリかもしれないけど、ちょっと違うのかなと思う。
──予算をかければ『RAMBLE』のように優れた作品ができるかと言えば、そういうことではないと思うんですよ。
K:ああ、なるほどね。もしそういう状況が許されるのであれば、『RAMBLE』とはまた別のスタイルの作品をつくるかもしれないね。
──アルバム・タイトルの『RAMBLE』は「自由と闇」に出てくる“うつろう”とか、時代を“さまよう”といったニュアンスで命名したんですか。
K:ストーンズで言えば「ミッドナイト・ランブラー」の“RAMBLE”だね。さまよったり漂っていく感じ。ホントは2ワードか3ワードで若干凝った感じと言うか、しかも歌詞に出てこない言葉を使ったタイトルにしたかったんだけど、いいのが思いつかなかった(笑)。
K:これに味を占めて、じゃあ次作もまた…とかね(笑)。GROOVERSは時代の流れに左右されない音楽をやってるし、そこは大きな強みでもあるし、やれることはまだたくさんあると思う。今やヒットチャートの1位から10位までの曲にひょっとしたらギター・ソロなんて1曲もないかもしれないけど、それが今の時代のメインなら俺たちもそうするかってことには絶対ならないしね。
──ギター・ソロはおろか、ギターの音が全然鳴ってない曲も増えてきたように感じますね。
K:そういう状況が面白くないとは思わないけど、俺たちがやってる音楽はもはや絶滅危惧種だよね(笑)。だからと言って心細くなるとか、いまだにこんな音を出してていいのか? とかは全く思わない。そこがダメなのかもしれないけど(笑)。
──結成当初からブルースやソウルに根差した大人っぽい音楽をやっていたから、近年やっと地に足がついてきたと言うか、身の丈に合ってきたところもあるでしょうね。
K:徐々にフィットしてきたのかもね。ライブでは特に昔の曲も今の曲も同じように楽しめると言ってくれる人が多くて、嬉しいね。ずっと変わってないし、変わったことはやれないし、そういうバンドなんじゃないかな。まあまあイケてると自分では思ってるよ(笑)。
30年近くトリオ編成をやってきた理由
──GROOVERSに限らず、ロックンロールの世界ではメロディもリフもコード進行も出尽くした感がありますよね。その中でまっさらな新曲を生み出す難しさが絶えず付きまとうと思うのですが。
K:時々、リフで引っ張りたいのにいいのが出てこないとか、ここにフックになるフレーズが欲しいのに出てこない、なんてことは当然あるよ。トリオで弾きながら唄うから、「これは4人編成の場合のギターだな」みたいなことはできないし。わりと何でも弾きながら唄えるほうだけど、そういう意識は常にあるね。でもトリオ編成は人数が少なくて手が足りないけど、逆にそれだけ自由でもある。だからこそやりがいもあるし面白い。
──やれることはだいぶやり尽くしたはずなのに、こうしてまた『RAMBLE』のように鮮度の高い作品を生み出せるのは純粋にすごいことだと思うんですよ。
K:そう言ってもらえると嬉しい。俺はバランス型で、なおかつリフ大臣だから(笑)、一度やったリフやアレンジが被るのが昔はイヤだったんだけど、キャリア的に2周目、3周目に入ってもうそろそろ許されるんじゃないか? と思うようになった。そこは長くやってきたご褒美って言うかさ。だってトリオだよ? こんなに長くやってたら、もう一人ギターが欲しいとか鍵盤を入れたいとか思ってもおかしくない。ところがそうでもない。こだわってるわけでもなくて、トリオ以外のバンドはやりたくないってことでも全然ないんだけどね。もう30年近くボーカルを探してるんだけど、なかなか見つからなくて(笑)。いい人がいないから自分で唄ってるんだよ(笑)。
──30年近く唄い続ければ立派なベテランですよ(笑)。でも歌に関しては石橋凌さんやSIONさん、佐野元春さんなどのサポートで学べたことがいろいろとあるのでは?
K:そうだね。一番最初にやったサポートが頭脳警察で、その後に友部正人さんのサポートをやったこともあったし、そういう替えのきかないタイプの素晴らしい先輩シンガーたちの横でギターだけを弾く喜びはすでに味合わせてもらってるし、だから余計にGROOVERSは自分で唄うトリオ編成で別にいいかなと思ってるのかもしれない。
──この26年の間に11枚のオリジナル・アルバムをコンスタントにリリースしてきたのは、結果的にかなり理想的なペースと言えませんか。
K:今はさすがに毎年1枚は出せないけど、平均したら2、3年に1枚は出せてることになるからね。
──気がつけば息の長いマラソン選手のような存在になったとも言えますね。
K:息の長い活動をするのが理想だったしね。ストーンズみたいなバンドを尊敬してたし、目指してもいたんだけど、走ってるフォームは短距離走がいいんだよ。その走り方だと長距離はムリ、みたいなさ(笑)。だけどこれで四半世紀以上やってきたし、今さらフォームは変えられないし、無理に変えようとも思わないかな。
──あと4年経てばメジャー・デビューから30周年を迎えることになりますね。
K:ああ、そうか。今回のアルバムは4年ぶりだから、次もこのペースなら周年のタイミングで出せるんだね。そこで全曲にゲストを入れるとか、今までやらなかったことをやれば楽しいかもね。単純な興味としてやってみたいことはまだけっこうあるんだよ。海外でレコーディングしたりとか、リック・ルービンや、あるいはトム・ダウドみたいな人に完全にお任せでプロデュースを頼むとか。あとはもう一人ギターを入れてみるとか、まさかのボーカルを入れてみるとか?(笑) でも昔から好きだったことを今もずっとやれてるのは幸運なことだと思う。普遍性のあるロックンロールを鳴らしながら、今の時代においても光る輝きを出したい。俺がやりたいのは今も昔も結局のところそういう音楽なんだろうね。
ライブ写真:三浦麻旅子