中国で、湖南省にある景勝地、張家界の山「乾坤柱」が、ヒット映画『アバター』に登場する「ハレルヤ山」の原型だとして、「アバター・ハレルヤ山」または「ハレルヤ山」と改名されるとのうわさが広まり、批判の声が高まった。現地では25日、「命名式典」が行われた。
法制日報が伝えた。

■映画『アバター』つながりで地元は“有頂天”

 「乾坤柱」の別名は「南天一柱」。頂上は標高1074メートルで、約150メートルの柱のような形状だ。頂上部分には木が生い茂っている。

 『アバター』に登場する「ハレルヤ山」の原型が話題になったきっかけは、北京を訪れた同作品のキャメロン監督が「原型は(安徽省の)黄山」と発言したことだった。中国のインターネットで「違う。張家界の乾坤柱だ」との意見が発表され、議論に火がついた。同映画のCG(コンピュータ・グラフィック)チームが2008年12月に張家界を訪れ、同作品の素材として大量の写真を撮影したことが分かり、「ハレルヤ山の原型は乾坤柱」との結論に落ち着いた。

 これに飛びついたのが、現地の観光業関係者だ。「乾坤柱」は、張家界の中でも「袁家界地区」にある。袁家界管理委員会の宋志光主任は25日、「乾坤柱」の前で「ハレルヤ山に正式改名する」記念式典を開催した。

 張家界市観光局でも公式サイトに「アバター・ハレルヤ山は乾坤柱です」などと掲載。
ただし同局は後になり「原型が乾坤柱であることを強調しただけで、正式改名する意図ではなかった」などと説明した。

■おエラいさんは「いいんじゃない」…ネットでは怒りの声

 改名について、湖南省人民代表大会の張金鳳代表(省議会議員)は「世界的大ヒット作品のおかげで、張家界は1銭も使わずに世界的に有名になる。改名は割に合う」と賛成。袁家界管理委員会の宋主任も「西洋にこびるのではない。乾坤柱の風景は中国だけでなく、世界のものだと、価値をアピールするため」などと主張した。

 インターネットでは「改名」を批判する声が相次いだ。「山の名は祖先が残したもの。映画を利用して勝手に変えることは許されない」、「世界を目指すなど、きれいごとを言うな」、「ついでに、張家界市の名もアバター市に変えてしまえ」といった意見だ。

 法律の専門家は「地名変更には法的手続きが必要。現地政府も公聴会を開くなど、関係者・住民の意見を広く求めるべきだ。勝手に変更すれば、違法行為になる」と指摘した。

 一方、袁家界管理委員会の宋主任は「地名の変更ではなく。
観光スポットの名称を変えるだけ。問題ないはず」と主張。張家界市人民代表大会常務委員会の任厳龍副主任(市議会副議長)も、「地域全体の名を変えるならば、省あるいは国の承認を得るなど厳格な手続きが必要だが、規模が小さい観光スポットの名称変更なら、不必要だ」との見方を示した。

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◆解説◆
 中国では、雲南省迪慶チベット族自治州中甸県が2001年、シャングリラ県(香格里拉県)に名称を変更した。シャングリラは、イギリスの作家ジェームズ・ヒルトンが1933年に出版した小説『失われた地平線』に登場する理想郷(ユートピア)。その原型になったとの主張だが、「シャングリラのヒントになったのは、1カ所だけではない」との批判もある。

 07年には雲南省普〓市が「プーアル市」と名称変更。特産のプーアル茶をアピールする思惑だった。(〓はさんずいに「耳」)。(編集担当:如月隼人)

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