ここ3カ月、米中関係はますます悪くなっている。両国間に存在する問題が慎重にうまく解決され、その影響が他の地域に及ばないことを祈っているが、もし米中関係が悪くなれば、両国だけでなく、アジア(ひいては全世界)のほかの国にも悪影響が及ぶことになる。アジアには、「スイギュウの喧嘩が芝生に及ぶ」ということわざがある。これは、小さな国はいつも踏みにじられる運命にあることを意味している。
過去10年間、経済の影響力や貿易、人的交流などの面で、中国と東南アジアは距離を大いに縮めてきた。今年はASEAN(東南アジア諸国連合)と中国との間の自由貿易協定(ACFTA)が効力を発し、関係者たちはみなこの18億人からなる世界最大市場が誕生することに歓呼している。
中国は東南アジア諸国を援助している。例えば、カンボジアの雄大な国会ビルは中国の援助を得て建てられた。また、中国の観光客の購買力も、東南アジア諸国にとってプラスとなっている。しかし同時に、ASEANはマイナスの点も潜んでいることに気付いている。例えば、タイの農産物はすでに中国からの輸入品に負けている。
より幅広い観点から見ると、20カ国の国民を対象としたあるアンケートの結果では、中国をマイナスの存在と見る人は非常に多く、特にフィリピンでは、半分以上の回答者がこのような考え方を持っている。
これに比べ、米国に対する考え方は主に肯定的であるようだ。米国もまた、ASEANとの第1回サミットを通じて友好的な姿勢を示し、インドネシアやメコン川サブ・リージョナル経済圏を含む東南アジアの一部の国に改めて注目し始めている。
中国と米国がともにASEANに興味を持つことは、この地域の諸国にとっては間違いなく良いことである。しかし、両国が自身の勢力範囲を広げようとすれば、次々と問題が生じることになる。この情況を避けるため、ASEANは団結して、この両大国と共存する政策を打ち出さなければならない。
どの国も自分の利益を求めるため、これは簡単なことではないが、一部の重要問題において、東南アジア諸国が共通認識に達することも可能である。例えば、ダライ・ラマ問題や台湾問題において、ASEANには一致した政策があり、仏教国のタイでさえ1993年以降にダライ・ラマを接待したことは一度もない。ACFTAは、もう一つの共通認識を代表するものと言える。
中国は絶えず発展し続けており、今後も引き続き発展するだろう。しかしこの発展が、ASEANの産業や企業との競争を激化させている。また、米国は確かに金融危機で大きな影響を受けたが、依然として数多くの分野でリードしている。
したがって、アジア諸国は、米中のどちらかを選択するのではなく、「和」を以って両国と接触するという道を模索すべきである。東南アジア諸国を2頭のスイギュウの間の芝生に例えると、東南アジアは十分なスペースを作り出し、スイギュウたちに仲良く草を食べさせる必要がある。(編集担当:米原裕子)
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