9月18日は、1931年に満州事変が発生してから81周年の日だ。中国にとって、9月18日は「9.18国恥(国辱)記念日」であり小学校時代から教えられる社会的常識だ。
中国新聞社は日本政府による尖閣諸島の国有化により、「81年後の今日、中日関係は改めて重大な試練に直面した」と報じた。

 満州事変とは奉天(現・瀋陽)郊外の柳条湖で日本軍が南満州鉄道の線路を爆破した事件。中国側の破壊活動に見せかける日本軍側の謀略で、被害は小規模だったが日本軍は「相手側が先に手を出した」ことを口実に約5カ月で満州全域を占領した。

 中国で9月18日は「国辱記念日」であり、各地で「愛国イベント」が展開される。今年(2012年)の場合、瀋陽市は午前9時18分から3分間、防空サイレンを鳴らすことに決めた。テレビやラジオは番組を中断して、「国辱を忘れるな。中華を振興せよ」のメッセージを放送する。市内の目抜き通りでは、自動車にクラクションを鳴らすことを求める。

 その他、蘭州(甘粛省)、昆明(雲南省)、成都(四川省)などでは空襲警報を鳴らし、防空演習を実施する。広西チワン族自治区、安徽省、山西省など省全体の防空演習を行う地域もある。

 中国において9月は「対日関係の微妙な月」とされる。3日は対日戦争の勝利記念日(解説参照)であり、18日は満州事変勃発の国辱記念日、一方で29日は1972年に戦後の日中国交正常化が実現した日だ。


 中国新聞社は「今年は本来、中日国交正常化40周年だった」と指摘し、「歴史をしっかりと記憶しておくことはそもそも、平和を大切にし、歴史の悲劇を再現することを避けるためだ」と主張。「しかし今年9月、満州事変から81周年にあたり、日本は逆に『島を買う』ことを選択し、中国人民の感情を改めて傷つけた」、「日本は歴史を無視して一方的に行動し、国交正常化40周年という時点における、熱気を急下降させた」と論じた。

 同論説は中国共産党機関紙である人民日報が9月14日付で掲載した「日本は理性を取り戻さねばならない」と題する論説を改めて紹介した。同同論説は、「日本は現在に至っても、誤った歴史観に固執し、侵略の歴史を美化するばかりか、歴史的な罪の責任を転嫁しようとまでする」と主張。

 同論説は、日本が2010年の防衛大綱で示した動的防衛力や、防衛庁の防衛省への格上げについて「さまざまな口実で軍備を拡充し、地域の緊張局面を次々に作り出している」、「釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)問題における日本の悪劣な行為は、世界の反ファシスト戦争の勝利の成果と、勝利を基盤に築かれた国際秩序に対する公然たる蔑視(べっし)と挑戦だ」、「国家の運命と人民の幸福というカードを握り締めて冒険的な賭けをすれば、日本は大損を喫する。日本は理性を取り戻さねばならない」と論じた。

 中国新聞社は、日本による「尖閣諸島国有化」で盛り上がった反日感情が、9月18日が近づくにつれ、「満州事変勃発」と結びついて、ピークを迎えているとの見方を示した。

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◆解説◆
 日本では昭和天皇が国民に終戦を告げる「玉音放送」を行った8月15日が「終戦記念日」とされている。

 しかし国際的には、日本が降伏文書に署名した9月2日を「戦争終結の日」とする場合が一般的。連合国側の「勝利が確定した日」としては、むしろ9月2日の方が法的にも意味を持つとされる。

 ソ連は当初、対日戦勝利祝賀会を行った9月3日を「対日戦勝利記念日」としていた。中国(中華民国)は同日を記念日として引継ぎ、1949年に発足した中華人民共和国も同日を「勝利記念日とした。


 韓国と北朝鮮は8月15日をそれぞれ「光復節」、「祖国解放記念日」としている。日本式に8月15日をもって「日本の敗戦と“植民地”放棄が決まった日」としている国は珍しい。

 中国は尖閣諸島について「もともと中国領だった」と主張。日清戦争(1894-95)における中国の敗北に乗じて、日本が奪い取ったとの認識だ。したがって、「ポツダム宣言を受諾した日本は、中国に返還すべきだ」と主張している。

 ただし、19世紀末に日本が実効支配していたにもかかわらず、中華民国(台湾)と中華人民共和国が同諸島の領有権を主張しはじめたのは1971年だ。日本の敗戦にともない尖閣諸島は沖縄とともに米軍の軍政下に置かれた。中国は抗議も領有権の主張もしなかった。

 中国側の論理にもとづけば、中国は「第二次世界大戦を共に戦って勝利した米国が、自国領を長期にわたって占領していること」に異論を申し立てずに放置したことになる。(編集担当:如月隼人)
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