吊り橋は2010年に完成し、2012年8月には修理されていたことが分かった。完成後1年半でなんらかの問題が発生して修理され、その後8カ月で事故を起こしたことになる。
鳳凰県は川沿いにある独特の民家などで人気の観光スポットで、4月末から5月1日のメーデーにかけての連休で、多くの観光客でにぎわっていた。対岸でたいまつ祭りが行われたため1日夜には、多くの観光客が橋を渡って向うところだった。
橋は長さ約30メートルで幅は約2メートル。橋の上には約40人がいたとみられている。「自分も落ちた」という人によると、橋を渡りはじめた時から、両脇に見える橋を支えるワイヤーの細いことが気になっていた。橋を渡る観光客の多くが、力を込めて橋を揺すっていた。
突然、「バン!」という大きな音が轟(とどろ)いて、足元の橋面が一方に大きく傾いた。人々は叫び声をあげながら、川に滑り落ちていった。「水は深くなかったが、子どもがいたら危険だったろう」という。
当初は、橋を支えていた柱が折れたとの見方もあった。
川に落ちた人は当初、24人だったと伝えられたが、人民日報系のニュースサイト・人民網は「37人に更新された」と報じた。自力で川から上がりホテルなどに戻った人がいて、集計に時間がかかったとされる。当初から橋にいた人は約40人とされていたので、全員またはほとんど全員が川に落ちたことになる。
地元当局は未発見の人がいる可能性が否定できないとして、2日午後まで現場の川に小舟を出し捜索に当たると同時に、被害者が川に落とした物品を探した。川の中に取り残されていた人はいなかったという。
橋を管理していたのは、個人経営の事業者で、地元当局は身柄を拘束して調べを続けている。
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◆解説◆
中国では2009年2月にも、四川省で簡易吊り橋のケーブルが切れ、観光客ら28人が転落して重軽傷を負う事故が発生した。この時も、橋の上でとびはねたり橋をゆすった人が多くいた。
世界的に見て、かなり大きな吊り橋が「共振現象」で落下した事故が、過去にはあった。風や行軍の足並みなどが、橋が持つ固有振動数に合致して、想定以上の震動が発生したためだった。
そのため、現在の橋は共振が発生しにくいように細心の注意をもって設計されている。
そこまでの設計や強度を持たせることができない簡易な吊り橋では、利用者にとびはねたりゆすらないように注意を求めることが一般的。また利用者も、自分らだけのグループならある程度まではともかく、多くの人が利用している最中に橋をゆするなどの“悪ふざけ”をしないことが「大人としての常識」だ。(編集担当:如月隼人)