北京市、天津市、河北省の京津冀(けいしんき)エリアを電気自動車バッテリーの回収・リサイクルのモデル地域にしようと、大規模な試験プロジェクトが動き始めた。工業情報化部・省エネルギー総合利用司の高雲虎・司長を団長とする視察チームが、同エリアを視察し、北汽新能源汽車や天津銀隆汽車などの電動車メーカーや、北京普莱徳、天津力神、北京匠芯、天津猛獅などのバッテリーメーカーを訪れ、電動車バッテリー回収・リサイクル事業の現状と問題点を確認した。
工業情報化部は、8月1日から施行する「新エネルギー自動車用動力蓄電池のリサイクル管理に関する暫定弁法」の準備を進めている。

 「暫定弁法」では、全国統一の「トレーサビリティプラットフォーム」を構築し、動力蓄電池の生産、販売、使用、廃棄、回収、リサイクルの全過程の情報を収集・管理する。各プロセスで回収・リサイクルの義務を履行する責任者を監視する体制を整える。動力蓄電池の回収責任は、自動車を生産する企業にあるとされている。

 中国の新エネ車市場は、右肩上がりの拡大を続けている。中国汽車工業協会のまとめによれば、今年1~4月の国内販売は、前年同期比149.2%増の22万5000台に伸びた。うち電気自動車(EV)は130.5%増の16万8000台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は226.7%増の5万7000台に積み上がっている。

 中国では2009年にEVについて補助金を出すなどの奨励策を導入し、2017年末の累計保有台数は180万台と世界全体の半分を超えるシェアを持つまでになった。2010年代前半に製造されたバッテリーは既に寿命を迎えているため、2018年には17万トンものリチウムバッテリーが廃棄される見通しだという。

 公開資料によると、2018年の廃動力バッテリー回収量は、中国全体で前年比130%増の6万5000トンに拡大すると見込まれる。2020年の回収規模は、25万トンを超えると試算された。

 バッテリー廃棄物には、重金属のコバルトやニッケル等のレアメタルが含まれ、車載用畜電池の原料等に再資源化できる。
一方、適切に処理されなければ水路や土壌を汚染しかねない有害な残留物が含まれているため、慎重な廃棄物処理が必要になる。トレーサビリティプラットフォームは、拡大する新エネ車市場に対応するための再利用による畜電池需要に応えるとともに、環境汚染対策の側面がある。

 京津冀(けいしんき)エリアで実験された成果は、全国統一の追跡情報システムへと整備される。中国政府は、2020年までに新エネ車を年間200万台販売し、2025年までに自動車生産全体の5分の1を占める700万台の販売を目標にするなど、EVは戦略的に重要な振興産業に位置づけられている。将来は世界的な新エネ車メーカーを国内に複数作ろうとしている。国内に大量に保有するバッテリーのリサイクルは、新エネ車市場育成の面でも重要な国家的プロジェクトに位置づけられている。(イメージ写真提供:123RF)


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