サントリーの飲料、アジア・オセアニアに商機 各国の知見共有する一大拠点を新設
斎藤和弘社長(サントリー食品インターナショナル)
「アジアで連続的二ケタ成長目指す」斎藤社長

大手飲料メーカーのサントリー食品インターナショナルは、1月1日付でアジア・オセアニアの組織を統合して新設したアジアパシフィックリージョン(APAC)に軸足を置き成長を加速させる。9日の決算発表会で斎藤和弘社長は「APACを当社全体の成長ドライバーとしてアジアで連続的に二ケタ成長を目指す」と意欲をのぞかせる。


アジアの経済成長やアジア・オセアニアで新型コロナウイルス感染症の影響が比較的小さくコントロールできている点がAPAC新設の背景。オセアニアが飲料において成長市場である点にも着目する。

「オーストラリアとニュージーランドは成長しきった市場ととらえる向きもあるが、実は飲料でいうとまだまだ伸びている。エナジードリンクは二ケタ近い成長を遂げたとも言われており、伸びている市場だと理解している」と述べる。

サントリーの飲料、アジア・オセアニアに商機 各国の知見共有す...の画像はこちら >>
斎藤和弘社長(サントリー食品インターナショナル) 統合シナジーは、アジア・オセアニアが別々に輸入していた原材料や容器素材を一本化することで見込む。

加えて、APACを各国市場・各リージョンの優れた知見・ノウハウなどをグループ全体で共有化するセンターオブエクセレンスの拠点とする。「例えばアジアリージョンでは、原材料を購入して商品を運ぶノウハウは、各国でさまざまな開発を行っているため知見が積み重なっており、これらの知見を世界中に伝えていくことが可能となる」と説明する。

センターオブエクセレンスで共有化される知見は、コアブランドで行われるイノベーション技術、収益を伴った売上成長戦略(RGM)、営業・流通戦略――の主に3つ。これにAIによる需要予測・オペレーションの効率化・高度データ分析のデータ・デジタルソリューション(DX)の推進を組み合わせて共有化していく。

サントリーの飲料、アジア・オセアニアに商機 各国の知見共有する一大拠点を新設
ベトナム・インドネシアで展開している「TEA+」(サントリー食品インターナショナル)
ベトナム・インドネシアで展開している「TEA+」 これにより、日本リージョンに取り入れられるものとしては「海外では小売のプレイヤーがかなり絞られてきている。その中でどう振る舞うかといったことや、価格戦略については、北米や欧州に一日の長があり、日本でも十分に活用できる道はある」とみている。

構造改革は、以前から課題となっている日本の自販機事業とスペインを中心とする欧州の業務用ビジネスで加速していく。
「21年はこの2つの構造改革にとって、もっとも重要なフェーズを迎える年として取り組んでいく」という。

自販機事業は、AIを活用した商品陳列や無線によるルートの最適化などオペレーション効率を図るとともに、昨年7月に開始した法人向け健康経営支援サービス「SUNTORY+(サントリープラス)」の拡大やアミューズメント性の追求に取り組む。

これらの取り組みについて木村穣介取締役専務執行役員ジャパン事業本部長は「19年頃から自販機の構造改革に取り組み今年はそれを加速していく。『SUNTORY+』はコロナの影響で自販機の導入が少なかったが、コロナ終息後に一気に広めていく。アミューズメント性もコロナが収まれば、『ドラゴンクエストウォーク』のような楽しみも強化していく」と語る。

サントリーの飲料、アジア・オセアニアに商機 各国の知見共有する一大拠点を新設
コロナで“右脳”需要にも着目。写真はNZで人気のエナジードリンク「V Energy」(サントリー食品インターナショナル)
コロナで“右脳”需要にも着目。写真はNZで人気のエナジードリンク「V Energy」 商品・ブランド展開では、コロナで定番ブランドの力強さを再認識。「イノベーションというと今までにないものをつくるイメージがあるが、われわれのコアブランドでイノベーションすることが最も大事で、今後もコアブランドイノベーションで磨き続けていく」(斎藤社長)。

コロナでストレス解消やリフレッシュといった“右脳”需要にも着目する。「日常生活や仕事の環境が大きく変わる中、やはりストレスに対してリフレッシュを目的としたエナジードリンク、炭酸、コーヒーカテゴリーの伸びが世界中で顕著であった。人の往来が引き続き制限される中、今後も成長が見込める右脳需要に対しても引き続き迅速に攻めていく」との考えを示す。

新カテゴリーの創造では「ボス」ブランドの海外展開を強化し、RTDコーヒー(コーヒー飲料)カテゴリーを創造していくほか、海外でのノンアルコールRTDの展開も積極的に推進していく。


ノンアルコールRTDは、APACが推進役になるとみられる。「日本ではノンアルコールビールやノンアルコールのカクテルが伸びており、他のアジアのリージョンでも日本の嗜好がみられている。なるべく早い段階で発売を検討したい」と語る。
編集部おすすめ