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――オートオークションだけでなく食品事業でも広範囲な事業展開をされていますね。まず、これまでの100年間について総括していただけますか。
荒井 当社の本業はもともと米穀卸売。私も学生時代から卸売市場で実家の手伝いをしてきました。約30年前から参入したオートオークションは順調な業績で、ビジネス全体の約8割に達しています。
しかし、当社の起源は米穀卸売。私自身、食品への思い入れは強くあります。
――具体的な事業計画は。
荒井 柱となるのは「小売」「卸」「農産」「健康志向食品」。この4本柱を軸に事業を拡大させ、2025年までに食品事業売上高で1千億円を目指します。内訳は、卸・小売550億円、農産350億円、健康志向食品100億円としています。
――オンガネジャパンを御社グループに迎え入れましたね。
荒井 昨年12月にオンガネホールディングス傘下の「オンガネジャパン」、こだわり地方食品の卸販売、店舗事業「インパクトワン」、九州産原料の生産加工に特化した「九州こだわりファーム」の3社が当社グループに加わりました。
――グループ化の背景は。
荒井 当社の食品流通事業の商圏は関東ですが、オンガネHDは西日本を中心に事業拡大してきた有力企業です。また、食品の輸出入および製造販売も得意。それぞれの商圏が異なるので、マーケットの相互補完・拡大、さらに取扱商材の拡充を見込めます。「強力なシナジーが見込める」という双方の考えが一致し、グループ化に至りました。
――オンガネジャパン代表取締役の岡本昭宏氏は、地方市場がシュリンクする中、本格的な海外事業展開の準備が必要で、荒井商事が持つ海外ルートがその推進力になるとしています。また海外営業の推進にはグループ内でメーカー機能を持つ意味が大きいと説明しています。
荒井 そうですね。一次産業のポジションを確保することは重要です。今後「アライファーム」との連携によって、生産者と消費者をつなぐ事業がさらに拡大すると思います。「オンガネジャパン」については、年商を倍増させ100億円とするのが当面の目標です。シナジーを創出し、互いに目標達成を目指します。
――オートオークション事業については。
荒井 コロナ禍で厳しい局面を迎えている外食産業および職を失いつつあるプロ調理人を支援するため、自動車で移動販売できる「キッチンカー」をレンタルする事業モデルを検討しています。
改造が必要なキッチンカーは改造コストが参入障壁になりがちです。販売するメニューに合わせたキット化でロットを増やせば低コストを実現できます。またコロナが収まって社会環境が変化しても当社の海外ルートで販売することができます。
――なるほど。最後にビジョンである「日本の価値を世界に」については。
荒井 青果だけでなく加工食品を含め日本の「もの作り」が持つ高い品質、価値観を世界に広めていくということです。オンガネジャパンもそうですが、今後海外輸出を念頭に、ECによるビジネスモデルの構築を進めます。そのための布石の一つとして、首都圏では食品バージョンの「Apple Store」的ショールームを出店しECをメインに販売します。価格での勝負の小売業ではなく、「インパクトワン」のように地方名品を発掘し、差別化した商品を販売します。さらに、生産から販売までの一気通貫で、荒井商事ブランドの農産物を販売したい。青果業界ではまだないと思いますが、チャレンジしていく。
加工食品では2年後をめどに、パック米飯の工場も建設を予定しています。輸出立地に優れた九州で製造し、中国や台湾への輸出も視野に入れています。
――たくさんの事業構想をお持ちですね。
荒井 これまでの100年間で当社は成功も失敗も繰り返してきました(笑)。