島民によるコーヒー産業化へ前進 徳之島コーヒー生産支援プロジェクトのいま 成功モデル確立にむけ試行錯誤
「AGFコーヒー実証農場」(第二農場)で徳之島コーヒー生産者会の玉誠一代表(右)と泉延吉副会長(19年10月撮影)
2017年夏に伊仙町、徳之島コーヒー生産者会、味の素AGF社、丸紅の4者が契約締結して始動した徳之島コーヒー生産支援プロジェクト。

活動開始して実質4年目を迎える今年、今後の方向性について、電話取材に応じた徳之島コーヒー生産者会の玉誠一代表(75歳)は「コーヒー6次産業化に向けて栽培面積をさらに広げていく必要がある。
人手も足りず若手会員も増やしていきたい」と語る。

活動の主要拠点は、徳之島の南端にある鹿児島県大島郡伊仙町。

若手会員を集うにあたり、島外からの移住者に対しては伊仙町役場ではサポート体制を整えているものの、定住化には自助が基本となる。

栽培面積拡大に伴い猫の手も借りたい状況であるというが、新たな人がコーヒーで生活していくには「まずは我々自らが成功モデルを確立しなければならない。台風にも負けないモデルが1つ確立できれば、安心して若い人を誘うことができる」と述べるのは泉延吉副会長(73歳)。

徳之島の中では一部、森林の中で栽培して生産・販売に漕ぎ着けている向きもあるが、泉副会長が目指すのは、量産が見込める平地での栽培方法の確立。


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「AGFコーヒー実証農場」(第二農場)で徳之島コーヒー生産者会の玉誠一代表(右)と泉延吉副会長(19年10月撮影) 「平地でも風が当たらないように管理できれば間違いなく産業化できる。耕作放棄地を管理しようという話もある」と説明する。

日本全国がコロナ禍に見舞われている現在、人の往来が困難な中で、AGFと丸紅はリモートで支援。昨年10月から毎月1回のペースでリモート会議を開催するなどして情報交換している。

生産者側のリモートインフラを支えるのは、伊仙町にサテライトオフィスを構えるモスク・クリエイション。同社はフリーペーパーを刊行するなどして徳之島の魅力発掘に取り組んでいる。


今後は、平地での栽培方法確立に向けて、丸紅の協力も得て海外での栽培方法を参考に密植による栽培方法を試していく。

島民によるコーヒー産業化へ前進 徳之島コーヒー生産支援プロジェクトのいま 成功モデル確立にむけ試行錯誤
「AGFコーヒー実証農場」(第一農場)の様子(20年撮影)(鹿児島県伊仙町)
「AGFコーヒー実証農場」(第一農場)の様子(20年撮影)(鹿児島県伊仙町) 「現地の様子も見させてもらいぜひ参考にしてチャレンジしてみたいと思った。台風などの風対策にも有効だと考えている」という。

そのほか以下の課題に対応していく。

――冬場の乾燥
――野鳥がコーヒーチェリーをついばむ
――イノシシが土を掘り起こす

後者2つは当面、被害の程度を観察・記録するに留め、冬場の乾燥対策としては水やりを強化し下草を植えていく。

乾燥対策としてあぜ道に下草が植えられている海外の事例を参考に「成木になるまでソルゴー(緑肥)を植え、1m程度に成長した段階でソルゴーをやめて草を植える。
その草は畜産家に相談し、牛のエサとなる草を撒いてもらって刈り取ってもらうことを提案したい」と述べる。

人的課題としては徳之島コーヒー生産者会内の連携強化を挙げる。

島民によるコーヒー産業化へ前進 徳之島コーヒー生産支援プロジェクトのいま 成功モデル確立にむけ試行錯誤
乾燥用の網を持つ泉副会長(20年撮影)(徳之島コーヒー生産者会)
乾燥用の網を持つ泉副会長(20年撮影)(徳之島コーヒー生産者会) 「新しい人には生産者会の規約を読んで目的などを理解してもらってから参加してもらいたい。会の活動としては、もう少し集まりを多くしたい。お互いのスケジュールを“見える化”してお互いに補完しあえるようなシステムが構築できればと考えている」との考えを明らかにする。

徳之島コーヒーの情報発信も強化の構え。
「モスク・クリエイションさんのお力も借りて定期的に畑の映像も流していきたい」と意欲をのぞかせる。