3月30日に髙島英也氏から引き継ぎ、サッポロビール社長に就任する野瀬裕之氏。コロナ禍中だが、髙島氏は「大変な状況だが、マンネリが一番良くない。
ここは新体制でいくべき」と社長交代を決意。切れ目を生じさせないよう、野瀬氏は引き続きマーケティング本部長を兼任する。

就任にあたり野瀬氏は「お酒は人を楽しくもでき、悲しい時には寄り添ってもくれる。自分の人生でもそのようなことが多くあった。お酒の無限の可能性を信じたい」と語り、その上で二つの目指す姿を挙げる。

一つ目はイノベーションカンパニーだ。
同社はもともと北海道開拓使としてゼロからビール産業をスタートした。「これからもお客様の生活を変える企業でありたい」。

2つ目は、個性豊かなブランドカンパニーだ。「全社員がお客様の満足の追求によって喜びが増える会社でありたい」。

今年のサッポロビールは、二極化が進む消費者に対して「圧倒的なプレミアム価値とリーズナブル価値」の提供を目指している。コロナ禍の中、プレミアムな商品と、リーズナブルな買いやすさを求めるという、1人の消費者の中での2極化が進んでいるとみており、ビールではプレミアム化を図り、日常の家飲みには手軽に満足感が得られるブランドで対応する方針だ。
野瀬氏は「一つ一つの商品をどの位置付けにするのか、ビール・新ジャンル・発泡酒を同質化させないやり方を検討し、2つの大きな価値にどう向き合うのかを徹底的に追求する」と話す。

その中でも特に「ヱビスビール」に注力する意向だ。今年はブランドコンセプトも変え、その多様性を知ってもらうことを戦略のポイントに置く。第1弾として「ヱビス」3品を1月中旬製造分から刷新。缶は2月まで累計で前年同期比110%と好調だ。

また3月から「3Dヱビスビール記念館」やオンラインイベントなど、「消費者接点をユニークで面白いものに変えていきたい」(野瀬氏)と意気込む。
また「絶品ヱビスの店」施策も展開を始め、飲食店での提供品質向上を追求したい考えだ。「多様なマリアージュなど、飲食店の協力を求め、外食需要が戻ってくる日に向けて準備を進めたい」(同)。

昨年から北米事業をサッポロビールの連結決算に加え、国内外で酒類事業を展開する企業となった。26年には海外売上げ3千万箱、うちサッポロブランド1千万箱を目指す。

カナダではRTD商品を展開、米国でも機能系商品を投入した。中国ではECを含め挑戦し、欧州では新しい体制を構築し始めている。
「バリューチェーンにおいてグローバルなシーンを含めた取り組みを、サッポロビールの中でコントロールできることを強みとしていく」(同)。

コロナ禍の収束見通しは立たない。野瀬氏も「飲食店は大変な苦労が続き長期化している。1、2月も厳しいスタートになっており、予断を許さない」と語るが、今年もサッポロビールの理念体系に基づく一貫したマーケティング戦略「いちばん星マーケティング」を進める。「誰かのいちばん星でありたい。あえて言えば、広く浅くではなく、狭く深くありたい」といい、「一人一人の心を動かす物語でお客様を虜にし、お酒と人との未来を創りたい」。