チルド麺市場の伸長は、コロナ禍で「少し手間がかかってもいいから、外食品質のようなものを(家庭で)食べたいというニーズが高まった」(大手メーカートップ)という生活者の意識や行動変化を受けたものだが、特徴的だったのが「汁なし」の躍進。
「単身世帯、若年層のユーザーが増えたことで、外食でよく食べられているつけ麺やまぜ麺といったメニューが家庭内で消費される機会が増えたのでは」「小売がコーナー展開し始めた」(同)というように、チルド麺市場全体の伸びを大きく上回り、メーカーによっては汁なし商品の売上高が前年比3~4倍となった。
チルド麺市場での汁なしのシェアは数パーセントに過ぎないが、「チルド麺売場でつけ麺やまぜ麺商品が売られていることを知らない消費者も多い。(小売店の)取り扱いも増えていくものと考えている。TVCMも投入し、認知拡大を図る」(同)とし、さらなる間口拡大に取り組む考え。
汁なしをリードする日清食品チルドは2021年、「本格」をキーワードとする商品として、「つけ麺の達人 新東京 鶏油しょうゆ 2人前」(税別360円)、「まぜ麺の達人 新東京 鶏油まぜそば 2人前」(同360円、写真㊤)や、有名店とのコラボ商品として「千里眼監修 冷しまぜ麺 2人前」(同400円)といった高付加価値タイプで話題性のある商品を発売。
シマダヤは、「流水麺 冷しつけ麺 豚骨魚介醤油味 2食」(同320円、写真左下)を発売するほか、女性層をターゲットとする淡麗系のつけ麺「鶏醤油つけめん 2食」「あごだし塩つけめん 2食」(同330円)、さらには「鯛だしまぜそば」(同330円)など高価格帯の汁なしを拡充した。
チルド麺市場のトップブランド「マルちゃん焼そば3人前」が好調に推移する東洋水産も汁なしに注力。「北の味わい つけ麺」シリーズに、期間限定で「濃厚えび味噌味 2人前」(同300円)を投入。
2020年の家計調査統計(総務省)=表=では、チルド麺は和風麺、中華麺ともほぼすべての項目で前年を大きく上回った。積年の課題とされてきた若年層のトライアルが進み、一定程度定着したことが数字に表れた形だ。2021年度は、コロナ禍で取り込んだ若年層をいかに維持・拡大するかが課題。汁なしの動向は、21年度のチルド麺市場を占うという点で注目される。