伊藤忠食品の21年3月期は売上高が前年比0.7%減の6千567億円、営業利益が13.4%増の50億円で着地した。コロナ禍で対外的な営業活動は「ほぼ空白の1年」(岡本均社長)であったが、社員の意識改革が進み社内的には「有意義な年」(同)だったと振り返る。
中計2年目となる今期は「厳しい中でも、3期連続の増益を達成するという覚悟を示す計画」を打ち出した。決算会見での岡本社長の話をまとめた。

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【2020年度の総括】一部取引先の取引形態変更などで売上高と売上総利益が減少したものの、不採算取引の改善などにより、すべての段階で利益は前年を上回った。

業務用や外食の取引が不振の一方、巣ごもり需要によりスーパーは年間を通して好調だった。営業活動自粛による販管費の改善もあり、利益は当初の見通しを上回った。

対外的な営業活動については、ほとんど空白の1年だった。
年度の最初はパニック的に需要が爆発し物流も混乱したが、その後は高止まりで鎮静化した。コロナ禍で不安な中、ロジスティクス部隊をはじめ社員がよく頑張ってくれた。

これまでウエートを置いてきた、帳合や売上げを取りに行くというところから、より進んだ形で食品メーカーや小売業の方々と一緒になって消費者に響く提案をしていこうと、われわれの会社そのものが意識改革をしなければならない中計初年度であった。

対外的に行動できる機会が少ない中、さまざまな啓蒙活動やビジネスコンテストを通し、社員のコミュニケーションを深めることができた。すぐに行動の変化につながるかと言えば、実践はこれからになるが、社員の意識変革、具体的に何をすべきかという内部の意識固めの1年としては有意義であった。

足元では緊急事態宣言が出ている状況だが、19年度末パニック的になったことを考えると、もう少し厳しい数字になるかと思ったが、4月下旬の段階でもそこまで下がってはいないという印象だ。


【今期の計画】ワクチン接種の状況や五輪の開催いかんも含め、まだまだ不透明な部分が多く、想像してもあまり意味がない。落ち着いたら落ち着いたで、また違う経済環境に向き合わなければならない。

そういう状況を踏まえると、この時期にこうなるだろうと予見し計画を組むのは、あまり正しい認識ではないと思われる。したがって、今年度は現状からあまり大きく変わらない形での計画設定となった。

しかし、コロナの状況によって大きなアゲンストの風が吹いた時に耐えられるべくバッファーを盛り込んだ上で、厳しい中でも3期連続の増益を達成するという覚悟を示した計画となった。

中計2年目として引き続き、既存事業の基盤強化とリテールサポート機能の進化を図り、最終年度へ向けさらなる成長が目指せる強固な基盤作りの年としたい。