ヤクルト本社は、今後10年のビジョンを定めた「Yakult Group Global Vision 2030」を策定した。6月24日にオンラインで開催された説明会には、前日の23日、社長に就任したばかりの成田裕氏が登壇。
社長就任の抱負を語った。

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当社は、創始者である代田稔博士が、感染症が驚異であった時代に乳酸菌の力で腸を健康な状態に保つことで病気を予防できるのではないかと考え、1935年に乳酸菌飲料「ヤクルト」を製造販売したところから歴史がスタートしている。

その後、事業を拡大していく中、私は海外事業所の立ち上げや国内の食品営業など多くの仕事に携わってきた。中でも海外事業が長く、インドネシアやイギリスでは自ら現地で「ヤクルト」の普及啓発に取り組んできた。商品を飲んでいただいたお客さまから「調子が良くなった」「生活の質が向上した」といった感謝の言葉をたくさんいただいた。言葉の壁に直面することもあったが、健康という世界共通の願いがあれば心は通じ合えるものと感じた。
世界の人々の健康で楽しい生活作りに貢献する、という当社の理念は普遍的なものであると実感した。

現在、世界は新型コロナウイルスのパンデミックの渦中にある。人々が自分の健康や身近な人の健康の大切さを今ほど実感したことはないのではないか。「ヤクルト」は健康に対して豊富なエビデンスのある商品だ。言葉の違いや文化、食習慣の違いはあるが、継続的に、根気よく、健康に対する乳酸菌の有用性を説き、ご理解していただき、飲んでいただくことにより、お客さまにぜひとも健康になっていただきたい。こうしたことを積み重ねることで、世界中のどこにあっても、必ず事業は成功すると確信している。
その信念を胸に、日本発の「ヤクルト」を世界中の人々に、これまで以上にしっかりとお伝えしていく。

一方、当社にできることはまだまだほかにたくさんあるのではないかと思っている。私たちは今、乳酸菌飲料「ヤクルト」を中心に、飲料、食品、医薬品、化粧品などの事業を展開しているが、現在の事業領域にとらわれることなく、長年のプロバイオティクス研究から得られた経営資源を活用することで社会課題の解決に貢献できるのではないかと思っている。

世界を見渡してみると、健康に関する社会課題はさまざまなものがある。そのソリューションも多様だ。情報技術や生命科学、宇宙科学などではこれまでにない進化を遂げている。
ダイナミックに変化する社会の中で、私たちは何ができるのか。人々の健康や社会課題に対して、地球環境の保全に対し、どのように貢献していくべきなのか、それに対する私たちの答えが「Yakult Group Global Vision 2030」だ。

私たちの次の10年に必要なこと、経営資源をフルに活用し既存事業の基盤を強化しながら、新たなリソースの獲得などを通し事業領域を広げていくと同時に、グローバルに事業を展開する企業として、また健康に貢献することを使命とする企業として、地球環境にも健康にも取り組んでいくことによりステークホルダーの期待に応え続けていくことが大切だと考えている。

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成田裕氏(なりた・ひろし)=1951年10月8日生まれ、69歳。神奈川大学経済学部卒業、1974年入社。国際部長(03年6月)、取締役(07年6月)、取締役専務執行役員食品事業本部長(15年6月)、同経営サポート本部長(17年6月)、同国際事業本部長(19年6月)などを経て、6月23日から現職。