手代木社長は2015年から現職で、三菱商事グループの事業再編という難題に立ち向かいながら、100年の歴史を有するエム・シー・フーズの新たな基盤構築に奔走した。17年10月には三菱食品の100%子会社になり、その際も変化対応の手腕を発揮した。
「祖業の一つであるコーヒー事業は撤退し、三菱商事グループの別の子会社に承継したが、その際、コーヒーの売上が過半であった西日本支店(大阪)を閉鎖。また、もう一つの祖業である茶類事業においても、稼働率が落ちていた静岡工場を閉鎖し、ファブレス化へ。当時の従業員の1/4近い仲間を解雇しなければならず、一番辛かった」と手代木社長は振り返る。
三菱商事からは果汁およびチーズの輸入・調達事業の移管を受けたものの、再編によりコーヒーとココアが切り離されたことで売上は減少。以降、原料を起点とした製造分野へのチャレンジとして家庭用市場向け取引の拡大(BtoC及びBtoBtoC)に注力したほか、飲料製品のファブレス事業を軌道に乗せるなどして盛り返し、今期(3月期)の売上高は、再編前の水準に戻せる見通しとなっている。
家庭用商品の展開にあたり手代木社長が最も腐心したのが品質保証。
「中間業者としての品質保証の考えでは家庭用に通用しない。業歴者を中途採用し品質保証体制を徹底的に強化した。いろいろ課題はあるが、品質保証体制を確立したことで、国内外原料に精通する商社に軸足を置きながら、ファブレスメーカーも目指すという新しいビジョンの礎は作れた」と語る。
一方、バトンを渡される原次期社長は、三菱商事が持つシュレッドチーズ製造会社ジエー・シー・シーに工場責任者として出向し黒字化に導いた実績を持つ。
オーストラリアの粉乳調製品製造会社には、唯一の日本人として乗り込み、従業員と意思疎通しながら現場を切り盛りしてきた。
手代木社長は「目線を落として話をしないとみんなが心を開いてくれない。原さんはそれができる人。製造会社の経営者として現場に立った経験は絶対に活きる」と太鼓判を押す。
原次期社長は「これまで手代木社長の圧倒的な求心力で動いてきたので、社員1人1人が独り立ちし、皆で力を合わせて頑張らなければならない」と語り、人材育成と現場力を活かした更なる成長に意欲をのぞかせる。
事業方針としては、手代木社長の路線を引き継ぎ製造分野へのチャレンジを深掘りしていく。
現在の屋台骨は原材料事業。今後、親会社・三菱食品と「輸入トレーディング・原材料取引」という共通のプラットフォームが構築されると、原材料の事業規模はさらに大きくなる見通しだが、原次期社長は「原材料取引のみに傾いてしまうと“商社の子会社”であった過去の二の舞になってしまう。単なる集約ではなく、消費財に近いところにも事業領域を広げていかないと会社の成長はない」と気を引き締める。
原 勝一郎(はら かついちろう)1972年2月13日生まれ。51歳。