▼数年前、瀬戸内で同様の話を聞いたのを思い出す。小魚が取れなくなり佃煮メーカーがやむなくそれを使った商品を終売した。「取れないものはどうしようもない」と嘆いていた。同じころ、海苔メーカーの幹部が「今はいかに販売先を広げるかで悩んでいるが、そのうち原料を手に入れるのに苦心するようになるだろう」と危惧していた。その不安は、思っていたよりも早く現実のものとなった。
▼第一次産業を取り巻く課題を、消費者も店頭価格の高騰という形で実感している。コメの高騰がそれに拍車をかけた。こうした中、農水省は今年度の主食用米の生産量が増加する見通しを発表。価格上昇による、生産者意欲の高まりが背景にある。
▼政府は目の前の価格抑制策を急ぐが、継続的な安定供給につながる政策を両立できるかが問われる。そして、問題を抱えるのは米農家だけではない。