含蜜糖の専門メーカー・宮崎商店(東京都江東区・宮崎文幸社長)は大正7年(1918年)に創業。江東区は日本の“砂糖製造発祥の地”とされ、創業当時は区内に数十の砂糖業者が存在したが、現在まで残ったのは宮崎商店一社のみ。
創業以来、独自のブレンド技術と手作り製法を貫き、「玉糖」や「粗製三温糖」など“最高のお砂糖”を追求し続ける。

宮崎邦紘専務は同社のマーケティング戦略を統括する。商品の製法へのこだわりについて宮崎専務は「弊社は原料糖と糖蜜をブレンドする際、その日の気温や湿度、原料糖の状態を目検で確認し、最適な配合量を決める。鉄窯での加熱・濃縮工程でも、その日の状態から煮沸時間を分単位で調整する」といった“手作り製法”を強調した。

熟練の目利きと職人技によって生み出される「玉糖」「粗製三温糖」は深いコクと旨味を実現し、サトウキビのミネラルや風味を豊富に残す。大手パンメーカーや菓子メーカーなどで幅広く利用され、味・見た目・香り・栄養面で最終製品・料理に付加価値を提供。製品の差別化・プレミアム化といったユーザーニーズへの対応を図っている。

同社の次なるマーケティング戦略の狙い目は何か?

宮崎専務は「弊社はこれまでBtoB(業務用)に重点を置いてきた。家庭用小袋『玉砂糖』や『ふるさ糖』(=粗製三温糖)への一般認知度はまだ低く、BtoC(家庭用)の売上構成は全体の1割にも満たない。今後は商品ブランディング、認知度を強化することでBtoC部門を強化したい」と力を込める。最近では大手量販店でも「ふるさ糖」を展開しており、家庭用も徐々に広がりを見せつつあるようだ。

現在、東京都内で砂糖を製造する製糖会社は宮崎商店のみ。
「『東京産』を全面に打ち出すことで、商品のブランド価値や付加価値を高めたい」といった考えも示す。同社の砂糖は、「東京の調味料」のコンセプトのもと生まれた新東京定番土産「東京さしすせそ」に選ばれているほか、昨年12月には江東区のふるさと納税返礼品として承認された。今後、東京産のブランド価値に商機を見いだそうとしている。

一方、公式Instagramの投稿内容を充実させることで、フォロワー数は着実に伸長しているようだ。プレゼントキャンペーンや料理レシピといった定番情報のほか、商品の製造工程や従業員へのインタビュー記事などが好評で、「商品の引き合いにつながるといった直接的な効果はないが、インプレッションが増えて弊社HPへのアクセスも徐々に増加している」という。

また、「例えば江東区亀戸の完全予約制のかき氷専門店『冬夏青々』では『玉砂糖』を使用した『玉砂糖ミルク』が大人気の看板メニューとなっている。こうした街の評判店・人気店の情報発信は当社商品の宣伝にもつながる」とし、業務用(BtoB)から家庭用(BtoC)への波及効果にも期待を寄せている。
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