キユーピーは育児食事業から撤退する。来年8月末までは生産を継続するが、すでに事業終了を惜しむ声が多く寄せられている。


▼同社によると、少子化による市場環境の変化が事業を終える直接の理由ではない。共働き世帯増加や男性の育児参加などにより、市場は今後も緩やかな拡大が続く見通し。

▼原資材や製造コストの高騰が落ち着く気配はない。売上も伸び悩む中、おいしさと品質に妥協しないキユーピーの精神を貫き通せるか否かが事業継続の判断基準になったのだろう。育児食の多くを生産してきた鳥栖工場では来夏以降、別の品目を生産することになる。従業員の雇用も守られるようだ。

▼同社は65年という長きにわたり、子どもの成長を支援してきた。何事にも代えがたいノウハウは残り、別の形で子どもたちの食と健康に貢献することになる。今回の件で育児食事業は社会的価値の高いビジネスだと再認識した。ゆえに撤退は難しい決断だったと思われる。当たり前に存在していた商品がなくなる寂しさはあるが、次の展開がどのような形になるか楽しみにしたい。
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