首相人気に丸乗りした自民党の本音「高市首相はとにかくニコニコ...の画像はこちら >>

スクリーンに映し出された、街頭演説する高市早苗首相と、それを見る聴衆

良くも悪くも今回の衆院選で最も注目を集めたのは、高市〝アンストッパブル〟早苗首相だった。彼女のやらかしぶりに自民党内では困惑が広がった......と思いきや、そうでもないらしい。

今回は首相のアレな言動の数々をプレイバック! それとともに、党内に蔓延していた〝ある空気〟についても取材した。それでいいのか!? 自民党!

【あまりにも軽率】

選挙期間中、どこに行っても大人気だった高市早苗首相。

「物議を呼びそうなことでも恐れず、ニコニコ顔でバーンと言い切る。聞いている側はそんな高市首相に、強さとしなやかさを感じ、『この人なら何かやってくれそう』と期待感を抱く。それが高い支持率になって表れているんだと思います」(自民党関係者)

ただ、その一方で、高市首相は妙に〝やらかし〟が多い。

選挙期間の中盤戦に飛び出た「円安でホクホク」発言はそのひとつだ。

この発言があったのは1月31日、川崎市(神奈川県)で、山際大志郎氏の応援に駆けつけたときのことだった。高市首相は、昨今の円レートについて、こうぶち上げた。

「円安だから悪いと言われるけど、輸出産業にとっては大チャンス。外為特会(外国為替資金特別会計)の運用は今ホクホク状態です」

円安になると製品価格のドル換算額は安くなり、輸出にドライブがかかる。そして、「外為特会」とは、急激な円安や円高が発生した際に、日本銀行が行なう為替介入のために積み立てている資金のこと。

その多くが米国債で運用されているが、円安の影響でその資金の円建て換算額が増えており、現在、約5兆4000億円の剰余金が発生している。

そのことを指して「ホクホク」と言っているのだ。

ただ、為替介入に関連する施策について、歴代首相は市場に影響を与えることを恐れ、慎重に言及を避けてきた。

全国紙政治部のデスクがこう驚く。

「ところが、高市首相は軽々しく円安のメリットを強調するような発言をしてしまった。当然、市場は日本政府が円安を歓迎しているととらえ、円売りオペに走る。実際、この発言で円が売られ、円安が2円ほど進みました。

それでなくても円安で輸入価格が高騰し、庶民の生活が苦しくなっているのに、一国のトップとしてあまりにも軽率すぎます」

発言のブレも目立つ。経済関連でいえば、「食料品の消費税を0%にする」という政策に対する立場も、短い期間での変節が見られた。

「当初の高市首相の立場は『国の品格として食料品消費税の0%を実行すべき』というものでした。それが首相になると、『レジの改修が難しい』と一転、後ろ向きになり、解散・総選挙が決まると、今度は再びこの政策を『私の悲願』と言い出した」

ほかにも「ジャパン・ファンド」構想への態度も豹変した。これは、国の資産(年金積立金、外資準備、国有資産など)をまとめて運用して、その運用益を財源に充てるという、公明党肝いりの政策構想だ。

「高市首相は、ジャパン・ファンドについて、昨年11月の臨時国会では『楽しみにしている。

制度設計ができたら教えてほしい』とベタ褒めだったのに、中道改革連合が目玉公約としてこのアイデアを打ち出すと、『リスクが大きすぎて危険』と評価を一変させました。

この高市首相の立ち回りを、経済政策を情勢に合わせて柔軟に変化させることができると取るか、定見を持たない風見鶏だと取るか、意見が分かれるところです」

【安全保障政策関連でも怪しい発言が......】

26年度末までの安保3文書改訂、非核三原則の見直しなど、高市首相がひときわ力を入れるのが安全保障政策だ。ただ、この得意なはずの分野でもやらかしを連発している。

不用意とも思える台湾有事発言で対中関係を悪化させた高市首相が、「今後は特定のケースを想定したことについては、この場で発言することは慎む」と国会で反省の弁を述べたのは昨年11月のこと。

しかし、それからわずか3ヵ月で再び台湾有事の際の対応を口にし、さらに中国の反発を招くことになった。

台湾有事の際、日米がそれぞれの国民を救出するため共同作戦を行なう可能性がある。そのときに「米軍が攻撃を受けているのに、日本が何もせずに逃げ帰れば、日米同盟が潰れる」と、テレビ番組で発言したのだ。

防衛ジャーナリストの半田滋氏がこうあきれる。

「どういう事態が集団的自衛権の行使を可能とする存立危機事態に当たるのか、その特定のケースには言及しないと国会で表明したばかりなのに、なぜ、また台湾の話をわざわざ持ち出すのか? 言わなくてもいいことをまた言ってしまった、という印象です。

また、邦人の保護・輸送は警察権行使、米軍を助ける武力行使は集団的自衛権行使で、まったく別の法体系、概念下にあるものなんです。なのに、高市首相はその異なるものを混同している。首相は自衛隊の最高指揮官という立場なのですから、もっと自衛隊法を勉強してほしいと思います」

同じテレビ番組で、北朝鮮を「核保有国」と発言したことも物議を醸している。

日本政府は北朝鮮を核保有国と認めていない。テレビ番組とはいえ、公的な場で日本の首相がそれを追認するのは初のケースだ。

「核保有国は1968年の核拡散防止条約(NPT)発足以前から核を持ち、国際法で核所有を認められているアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5ヵ国だけ。それ以外の国の核保有を国際社会が認めれば、核が世界に拡散しかねない。

だから、日本も北朝鮮を核保有国としての地位を絶対に認めないというわけです。高市首相の発言はNPT体制加盟国としての自覚に欠ける発言と、国際社会から指弾されてもおかしくないものでした」

【〝ドタキャン〟への臆測】

党首討論の番組(2月1日、NHK)をドタキャンしたことも見逃せない。

今回の2月総選挙は戦後最短の選挙期間となる16日間。党首討論会は有権者にとって政権選択の貴重な判断材料であるのに、高市首相は持病のリウマチ悪化を理由に、オンエア30分前に突然、出演を取りやめることを番組に通達したのだ。しかし、このドタキャンにはある疑いがある。

「代役として党首討論に出た田村憲久政調会長代行は党首討論が予定されていた2月1日、早朝から選挙区の三重1区で遊説スケジュールがびっしり詰まっていました。なのに、当日の午前8時台にはNHK入りしている。

田村氏の三重から東京までの移動時間を考えれば、党首討論キャンセルは前夜に決まっていたとしか考えられません。

高市首相は数々のやらかしゆえに、党首討論では野党からの厳しい追及が予想されていました。それが嫌でリウマチ悪化を理由に逃亡したとの臆測が駆け巡ることになりました」(前出・政治部デスク)

高市首相は衆院解散を表明した際、その大義のひとつに「国論を二分するような大胆な政策に果敢にチャレンジするため」と答えている。ただ、この大胆な政策がなんなのか、ついに明らかにすることはなかった。

有権者に白紙委任を求め、衆院選に勝利したらその後のことは「思うとおりにやらせてもらう」とでも言わんばかりの物言いには一抹の不安を覚える。

ジャーナリストの青木理氏はこう話す。

「高市首相を見ていると、人々の排外的な感情をあおるような勇ましい言動が多い。そして、その感情をテコに一気に大転換を成し遂げようと狙っているように感じます。ただ、先人の知恵と経験に学び、少しずつ物事を変えていくのが保守の態度。

信任を得たから、権力を握ったから為政者はなんでも好き勝手していいわけではない。保守を自任し、これだけ支持率の高い首相だからこそ、高市さんにはもう少し慎重に権力を行使してほしいと思います」

【「次の安倍首相」】

これらの高市首相の言動に自民党議員や官邸周辺は困惑しているのではないだろうか? 前出の自民党関係者はその疑問にバッサリと答える。

「NOですね。『高市首相は次の安倍晋三首相になるかも』と党内は思い始めている。

異論はあるが、今は支えようという動きのほうが強い。

衆院選前は高市首相に自民党内からも疑いの目が向けられていました。特に昨年11月の台湾有事発言のとき、そして年明けに麻生太郎副総裁や鈴木俊一幹事長への相談なしに解散・総選挙を決めたとき。

さらには内閣支持率は高いのにそれが自民支持に結びつかず、地方選挙で連敗を重ねていたときも『高市でやれるのか』という声はありました。

しかし、衆院選に入ってからはそんなムードは雲散霧消。いくら失言をしても〝高市人気〟は衰えない一方、自民党そのものへの逆風は強いまま、という状態の中で、自民党議員たちは高市人気にすがるしかなくなったからです。

今や党内には『高市首相はトランプ米大統領みたいだ』という見方もあります。言っていることはめちゃくちゃで、前言撤回もよくするけど、間違いは認めない。周囲に相談なく独断で決めてしまうことも多い。

なのに、それらが政治的なダメージにあまりつながっていない、というところが似ているワケです」

この自民党関係者によると、今、党内にこんな考えがひそかに蔓延しているという。

「世論やマスコミなどに向けて高市首相が自身の政策を説明する機会を減らしてもOK。各論は各大臣がやり、首相には大所高所から大まかな方向性だけを示してもらえばいい。

あとはとにかくニコニコと笑って有権者に手を振ってもらえば、自然に支持が集まる。この現象は、選挙が終わった後でも同じではないか――」

高市首相の勢いは、止まらないのか?

写真/共同通信社

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