高騰が止まらないペットボトルの緑茶飲料。この3月にはコカ・コーラボトラーズジャパンの「綾鷹650ml PETボトル」の税抜き希望小売価格が220円となった
庶民の味方「お茶」がすごい勢いで値上がりをしている。
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【値上がりの影響は空前の抹茶ブーム!?】ペットボトルの緑茶飲料の値上がりが止まらない。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンの「綾鷹(あやたか)650ml PETボトル」の税抜き希望小売価格の推移は2024年10月で180円、25年10月で200円、26年3月には220円となった。同様に伊藤園の「お~いお茶 緑茶 PET600ml」もこの3月に値上げしている。
確かに物価高騰の時代ではあるが、庶民の味方であるお茶にいったい何が起こっているのか? 調べてみると、ここ数年でお茶の世界がガラッと変わっていることが判明。
そして、その変化がペットボトルのお茶の値上がりに大きく影響しているという。その実態を調査してみた!
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まず向かったのは、日本有数のお茶どころ・京都府宇治市から車で約30分の京都府相楽(そうら)郡和束町(わづかちょう)。この和束町は山肌に東京ドーム120個分の茶畑が広がり、高品質なお茶の名産地として別名「茶源郷(ちゃげんきょう)」と呼ばれている。
和束町付近の茶畑の様子
話を聞いたのは和束町で代々お茶の生産を営む「上香園(じょうこうえん)」代表の岡田文利さん。山の斜面に連なるお茶畑を指さして語ってくれた。
「私が子供の頃の茶畑は全面緑色でした。今は多くに黒いシートがかかっています。
今の和束町では5月に入って新芽が伸びる頃には、茶畑全面がほぼシートで覆われ真っ黒になってしまいます」
いったいどういうこと?
「シートで遮光せずに育てるとペットボトルなどのお茶のもととなる"煎茶(せんちゃ)"になります。一方、黒いシートで覆って育てると抹茶の原料になる"碾茶"になるんです。空前の抹茶ブームで茶畑が真っ黒ということです」
つまり、碾茶栽培が多くなり、煎茶が不足しているのがペットボトルのお茶の高騰の一因と?
「そうです。われわれお茶を作る農家は値段の高い碾茶=抹茶の栽培にシフトしています。茶畑の広さは変わりませんから、碾茶を増やせば煎茶を減らすことになります。結果、煎茶の取り合いになって値段が上がる。ペットボトルのお茶の値段が上がるのも自然なことだと思います」
抹茶の原料である碾茶を作るため黒いシートで茶畑が覆われているのがわかる
碾茶シフトにはどのような流れがあったのだろうか。
「先ほども話したように、50年前、私が高校生の頃の和束町のお茶は95%が煎茶で、碾茶は5%ぐらいでした。
最初の変化があったのは忘れもしない1996年。アイスクリームのハーゲンダッツさんが『抹茶アイス』を作りたいとやって来たんです。それまで作っていた煎茶よりもぐーんと高い値段で抹茶を買ってくれるようになりました。
続いて06年になって、今度はスターバックスさんがやって来た。うちも『抹茶ラテ』をやりたいんです、抹茶を売ってくれませんかと。これでさらに和束での抹茶作りに拍車がかかっていったんです。
和束町で代々お茶の生産を営む「上香園」代表の岡田文利さん
さらに、コロナ明け22年の春頃から新たな変化が起こります。
それまで世界的には中国産の抹茶が多く愛飲されていました。しかし円安の影響で世界中からインバウンドがやって来るようになると、みんな日本の抹茶に驚いたんです。中国産に比べて、おいしい、香りもいい、色もいい。そして円安の影響もあって価格も中国産より安い。こぞってお土産に持って帰ろうとなったんです。
その後、日本の抹茶を買い込んで海外に売って儲けようとするバイヤーが抹茶を売ってほしいと言ってくるようになりました。それが一昨年くらいからです。これに合わせて碾茶の価格も1年で3倍近く上がったんです」
【宇治のお茶屋さんもバブルに沸いていた】こうした抹茶バブルの影響を探るべく次に向かったのはお茶どころ、京都府宇治市のJR宇治駅から宇治橋まで続く、通称「お茶ストリート」。
開口一番。
「抹茶だけだと今年は去年の売り上げと比べて、3割から4割アップしています」
と言う。トビアスさんは今の世界的な抹茶ブームの理由のひとつはコロナ禍だと指摘する。
「コロナの世界的流行で、どうしたらコロナにかからずに過ごせるかを皆さん一生懸命ネットで検索したと思うんです。
そんなとき、お茶、中でも抹茶がいいと知られていったのだと思います。飲むだけでビタミン、アミノ酸、ポリフェノールが簡単に取れる。血圧の上昇を抑えるし、美容にもいいらしい。
また、煎茶はお湯で抽出するだけですが、抹茶は茶の葉を粉砕してその粉ごと飲む。その分、栄養や体にいい成分をたくさん体に取り込めることもコロナ禍で評価されたポイントだと思います」
お茶の店「とび園」のスイス人店主ベーア・トビアスさん。やはり海外で人気のようでインバウンドのお客さんが多い
さらに宇治の抹茶の品質の良さもバブルを生んでいるという。
「宇治の抹茶は葉だけを丁寧に取るんです。
得意先のフランスのカフェオーナーは少し前まで、中国産の抹茶と日本の抹茶の両方を使っていました。でも今は、品質がいいからと全部宇治の抹茶に切り替えてくれました。
同様の理由で、去年1年で抹茶を50㎏買ってくれた海外の得意先があります。そこが今年になって6月までの半年間だけで、去年の3倍以上の160㎏を注文してくれました。
今年後半の注文はこれからですが、このままのペースだと、去年の売り上げ量の約6倍に増加する計算になります」
【煎茶の主要産地でも少しずつ変化が】空前の抹茶バブルが煎茶の高騰に影響しているのはわかったが、煎茶をメインで作っているという鹿児島の状況はどうなのだろうか。
鹿児島のお茶の魅力を情報発信している「鹿児島県茶業会議所」の担当者はこう語る。
「全国のペットボトルのお茶の半分以上は鹿児島産。鹿児島がペットボトルのお茶の主要生産地のひとつであることは確かです。
ただ、昨今は抹茶の本場である京都に行ってもほとんどいちげんさんは断られてしまうようで、鹿児島に抹茶が欲しいと言ってくるようになりました。結果、碾茶の生産に転換する農家さんの割合が年々増えています。
また、昨年の特殊事情として、アイリスオーヤマさんがペットボトルのお茶業界に新規参入されました。基本的には、抹茶ブームによる慢性的な煎茶不足、そこに新規事業主の参入という事情が追い打ちとなり、煎茶の価格がぐんと上がってしまったというわけです」
昨年は特に、煎茶の中でもペットボトル向けによく使われる秋冬番茶という低価格帯の煎茶が高騰したという。
「本来なら春に取れる一番茶の値段が最も高くて、二番茶、三番茶とだんだん安くなり、最後の秋口に取れる『秋冬番茶』が最も安くなるはずなのに、なぜか昨年は安くなるどころか、いつもの年の5、6倍と一番茶の値段を超えるまでに高騰したんです。
本来ならお茶の質に合わせて値段が上がるものなんですが、お茶の質が低くなるほど値段が上がっていくという普通では考えられないことが起きました。この秋冬番茶の高騰の理由も先に述べたふたつの要因ではないかと予想されます」
今後も高騰は続くのだろうか?
「続くことも見込まれますが、これがお茶離れにつながらないかと心配しています。農家さんにとっては確かにお茶の値段が上がるのはいいことかもしれませんが、昨年の5倍、10倍に価格が上がるとなると、消費者の皆さんがお茶は高いから飲まない、水を飲んでいればいい、となってしまいそうです。そうなると本末転倒ですから」
冒頭に紹介したペットボトルのお茶「綾鷹」の製品製造・販売を担うコカ・コーラ ボトラーズジャパンにも今後の見通しを聞いた。
「製品価格にはさまざまな要素が影響します。近年は茶葉原料といった原材料だけでなく、資材費や物流費の上昇、さらには為替相場の変動による影響の長期化といった要素もあり、製品価格への影響は複合的なものになると考えています」
消費者にとってはもちろん困るお茶の高騰だが、生産者も高騰に困っていることがわかった。今後の価格推移がどうなるかに注目だ。
取材・撮影/ボールルーム 写真/PIXTA(ペットボトルイメージ)
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