「ソープ代は経費になりますか?」
そんな"男たちの永遠の疑問"が、いま改めて注目を集めている。
きっかけは、東京大学の教授が関係先に対して風俗店での接待を"おねだり"していたと報じられた、いわゆる"東大教授への収賄"疑惑だ。
公的立場にある人物による不適切な要求として批判が集まった一方で、多くの人がニュースを見て内心こう思ったのではないか。
【で、結局ソープって経費になるの?】一般的に、キャバクラやガールズバーでかかった費用は接待交際費として認められるケースが多い。その一方で風俗はどうなのか。この"わかるようでわからないライン"こそ、多くの人が気になっているポイントだろう。グレーな領域に踏み込むこの疑問について、夜職に強い税理士であり現役ホストでもある"夜のプロ"、夜野仁先生に話を伺った。
「まず経費とは、簡単にいうと"自分の売上を上げるための必要な費用" のことを指します。この件に関していえば、接待というよりも見返りアリのものなので、経費の概念から外れますね。そもそも東大教授は公務員にあたるため、仕事に関係する相手から接待を受けることは原則できません。つまり"利害関係のある相手におごってもらうのはNG"ということ。そうした関係があると公平な判断ができなくなる恐れがあるからです」(夜野氏)
いわば、「仕事の延長としての接待」と「個人的な欲求のための支出」はまったくの別物だということだ。
その上で、キャバクラやガールズバーなど女性が接客するいわゆる"飲み屋"でかかった料金や、食事代金は基本的に経費扱いになるのに対して、なぜ風俗は経費にならないのか。
「接待交際費になるケースは"会話があるのかどうか"が大きなポイントとなります。複数人で飲みに行った場合、無言で飲むとは考えられない。商談もしくは仕事にまつわる会話があっただろうと見なされるため経費になります。ただ、性的サービスがメインである風俗はプライベートだと判断されてしまう。どうしてもビジネス目的という証明がしにくいというわけです」(夜野氏)
"会話"という一見あいまいな要素が、経費かどうかを分ける大きな基準になるというのはなんとも現実的だ。
極論だが、接待する側とされる側のふたりで風俗店を利用し、プレイの前に商談をした場合は経費になるのか。そう尋ねると、夜野先生は「面白い視点ですね!」と笑って次のように答えた。
「確かに商談をしていたら良いのではないか?という話ですが、日本ではどうしても風俗=享楽というイメージが強いので、税務的にもかなり厳しく見られます。実態としてどこまでが仕事なのかを説明できないと難しいでしょうね」(夜野氏)
やはり"風俗=プライベート"という前提は、そう簡単には覆らないようだ。
そこで「どうしても風俗でかかったお金を経費にしたい!」という人向けに、夜野先生がこっそり"グレーゾーン"ともいえる事例を教えてくれた。
「tecoというサービスがあるのですが、これは簡単に言うと、ギャラ飲みアプリの延長線上にあるマッチングサービスです。
ギャラ飲みの延長でそういう関係になった、という説明が成り立ちやすく、飲食や会話の時間もあるため、"商談を伴う接待"として処理されているケースも一部では存在します。僕自身は利用したことはありませんが、去年、経費計上している方が複数いて、内容を確認した上で問題ないと判断された事例もありました。
ただし、これはあくまで個別の事例ベースの話です。サービスを利用したからといって自動的に経費として認められるわけではありませんし、利用実態や説明内容によって判断は大きく変わります。税務的にはかなりグレーな領域なので、安易に"経費化できる抜け道"として考えるのは危険でしょうね」(夜野氏)
完全にアウトではないが、誰にでも使える抜け道でもないーーそんな絶妙なラインが、現実には存在しているようだ。結論として、ソープを経費にできるかどうかは"ほぼ不可能に近いが、条件次第でグレーゾーンは存在する"というのがリアルなところになるだろう。
とはいえ、その判断は極めてシビアで、税務調査の現場では「本当にビジネスに必要だったのか」が徹底的に問われる。安易に"経費にできるらしい"と自己判断するのは、リスクが高すぎると言えるだろう。ぶっちゃけ、"欲望"と"経費"の境界線は、思っている以上にあいまいで、そしてシビアなのだ。
今回の東大おねだり教授問題は単なるスキャンダルにとどまらず、「どこまでが仕事で、どこからが私的なのか」という現代人のリアルな線引きを浮き彫りにしたのかもしれない。
だからこそ最後にひとつだけ、夜野先生の言葉を繰り返しておきたい。
「判断に迷うなら、必ず顧問税理士に相談してください」
そのひと手間が、"後から痛い目を見る未来"から自らの身を守ることになる。
●夜野仁
税理士としてホスト・キャバ嬢・風俗嬢など夜職従事者の税務相談を多数手がける一方、自らも歌舞伎町でホストとして活動する異色の税理士。2026年2月、著書『夜職税理士 歌舞伎町の底辺と頂点で目撃した、税金と人生の実録』(イマジカインフォス)を発売。自身の経験と実例をもとに、夜の街の"金と税金"のリアルを綴っている。
取材・文/吉沢さりぃ
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