綿矢りささんの書く小説に出てくる女性主人公はいつもヒトクセあるように思う。『インストール』然り、『蹴りたい背中』然り。
ただ、この書評の筆者が男だからなのかも知れないが、若い女性のとげとげしさみたいなものが見えて、それはそれで新鮮だ。

 3年ぶりとなる最新作『勝手にふるえてろ』(綿矢りさ/著、文藝春秋/刊)の主人公・ヨシカなんかまさにそうだ。26歳のOL、経理の仕事をしていて、処女で、“元”おたく。とは言っても、自分はどういう人物かを知ってもらうためにアニメイト2時間を男性に望むあたりは普通に“おたく”だ。元とかつけなくても全然いいのではないか。
 ヨシカは男性経験がない、その理由は結婚を前提とした恋愛を望んでいること。
そして、初恋の人をずっと想っていること。猛アタックを仕掛けてくる同僚と、初恋の人の間で揺れるヨシカ。とは言ってもヨシカの独善的な思考回路は、あまりにもモテない人特有の「都合のよい解釈」に彩られていて、なかなか身に染みる。今、ドラマ化もされている人気漫画『モテキ』と同じ匂いを感じた。

 そう、この小説に出てくる人物、誰もが滑稽なのだ。そして私たちの普段の生活も、きっとこういう風に小説となれば、滑稽に見えるんだろう。
自分が輝いていると思っても、いくら悲劇のヒロインぶっても、滑稽なのだ。だから、私はその結末を見届けたあとに、あははと笑ってしまった。そんな「あはは」と笑う結末でもないのに。

 あくまでも筆者の印象だが、もしあなたが男性の場合、じっくり考えてから本作を手にとって欲しい。女性の世界というのは、おそらく男性には分かるようで分からないものなのだろう。女性の世界を分かっていると思っている人は、思い込みにしか過ぎないのではないかと考えて欲しい。
私は正直分からないし、本作を読んでより分からなくなった。だから、女性から相談とか愚痴を受けたときは「ウン、ウン」と頷くだけにしようと思う。分からないから聞くだけしかできないのだ。
 なお、本作は電子書籍も同時に発売されており、iPadやiPhoneで読むことができるので、本が苦手という人は電子書籍で読んでみてはいかがだろう。価格は紙が1200円、電子版は1000円。
(新刊JP編集部/金井元貴)


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