10月12日のオーストラリア戦は辛うじて勝ち点3を奪い、森保一監督も「俺たちは生き残ったぞ」と雄叫びを挙げたが、11月のベトナム代表(11日)、オマーン代表(16日)とのアウェー2連戦で勝ち点を落とせば、自力2位以内はおろか、3位も危うい状況になりかねない。
新型コロナウイルスの影響が続き、容易にメンバーを呼べない環境下ということで、追加招集の堂安律を含めて28人体制で挑む今シリーズ。やはり気になるのはFW陣だ。絶対的1トップの大迫勇也がオーストラリア戦で右ひざを負傷。離脱を強いられた。11月3日のベガルタ仙台戦で復帰し、6日の徳島ヴォルティス戦では先発復帰。
本人は「足は問題ない」と断言したが、環境適応や移動・時差などを考えると、2連戦で続けてフル稼働させるのはリスクが高い。少なくとも1試合は別の人間を先発させるくらいの采配を森保一監督は考えるべきだ。
大迫以外の1トップ候補者としては、セルティックで絶好調の古橋亨梧、オーストラリア戦で値千金の2点目を演出した浅野拓磨、J1で21ゴールと得点王街道をひた走る前田大然がいるが、いずれもスピードタイプ。身長差のあるベトナム戦は高さとヘディング力が1つのカギになると見られるだけに、そこで存在感が増してくるのが、東京五輪世代のエースFW上田綺世だ。182㎝の彼ならばクロスやセットプレー時にしっかりとターゲットになってくれる。
法政大学時代から東京五輪代表候補に名を連ね、2019年にはコパ・アメリカ、EAFF E-1選手権でA代表として出場している点取屋は当時から「大迫の後継者筆頭」と目されてきた。今夏の東京五輪でもエースFWとしての期待が高かった。が、直前のケガで出遅れたことで、もともとは予備登録だった林大地にスタメンの座を譲る羽目になった。
「東京五輪は分岐点。活躍すれば海外が見えてくる。
「なんでたくさんゴールを取ったか言われると難しいですけど、安定した出場時間と毎試合毎試合の課題克服、自分の意識の転換が大きいのではないかなと。チームが勝つために点を取るのがFWの本質だと僕はずっと言っていますし、それを全うしていくことだけを考えています」と10月23日のFC東京戦後にもコメントしていたが、今が上り調子なのは確かだろう。
心身の充実ぶりは11月7日の浦和レッズ戦でも伺えた。
彼自身のシュート数は2本にとどまり、今季J1ゴール数も13のままだが、チームの3連勝に貢献しているのは紛れもない事実。常勝軍団復活に努力している姿は多くの人々が認めている。
「まずは僕ら選手たちが試合に勝たないと。
その意識は日本代表においても同じはず。どんなに内容的に押し込んでいても、シュート数で上回っていても、勝利しなければ意味がない。98年フランスW杯の日本代表である相馬監督は、自身も味わった97年アジア最終予選の紆余曲折の経験を踏まえ、勝負の厳しさを伝えようとしているのだろう。
今回、初めて最終予選に招集された上田はその魂をしっかりと引き継ぎ、ピッチ上で示していく必要がある。それでこそ、常勝軍団のエースFWだ。
「代表に来る選手はいろんな特長を持っている選手が多い。日本が勝てればいいので。そこはブレずにしっかりとチームが勝てるようにしたいと思います」と大迫はフォア・ザ・チーム精神を改めて強調した。上田もそのメンタリティを踏襲しつつ、自分の強みを最大限発揮して、どういう起用法でもゴールに直結する仕事を見せ、存在感を示してほしいものである。