今シーズン、岩政大樹監督のもと、7季ぶりの優勝を目指した鹿島だが、リーグ戦では5位に甘んじ、YBCルヴァンカップ、天皇杯も敗退。悔しい無冠に終わった。
強化責任者を務める吉岡FDは、「僕らはタイトルを狙うクラブで、毎年ACLに出ないといけないクラブ。今年はまだまだ足りないところが多かったし、特に得点、攻撃の部分で課題が多かったシーズンだった」と1年を振り返り、「コーチングスタッフはよくやってくれた。
今季の鹿島は、ボールを保持しても敵陣で崩しきれず、ゴール前での迫力不足が目立った。第28節横浜FM戦以降は、7試合でわずか5ゴール。チームトップの14ゴールを記録したFW鈴木優磨への依存度は高く、チームとしての得点力に大きな課題を抱えた。
吉岡FDは、攻撃陣の編成について質問を受けると、「黒字経営しないといけないなかで、勝負に出るところは出ないといけない。
鹿島はクラブ史上初のACLのタイトルをもたらした大岩剛監督(現U―22日本代表監督)が退任して以降、ザーゴ監督、相馬直樹監督、レネ・ヴァイラー監督と、毎年のように指揮官が交代している。今季は岩政監督が1年を通して指揮を執ったが、チームスタイルを固められたとは言い難い。吉岡FDは、今季の方向性について、次のように振り返った。
「岩政監督には『方向性を示すが、ピッチの中で判断するのは選手たち』という考えがある。これはどの監督も同じだと思う。ただ、グループ戦術やセオリー、立ち返るものを、もっと強烈に出してよかったと思っている。結果的にこういう順位に終わったが、シーズンのはじめ、神戸に大敗したあと、岩政監督とずいぶん話をした。『自分たちがこうあるべきだ』、『こういうことをやろうとしているよね』と整理して、チームが少しずつ良くなってきた。横浜FM戦で勝てれば、また状況は変わってきたのかもしれないが、そのあと6試合勝てなくなり、立ち返る部分が見えづらかった。
チームスタイルが定着せず、毎年タイトル奪還を目標に掲げながら、5年連続の無冠。リーグ制覇は2016年から遠ざかっている状況だ。一部ではタイトル奪還から目標を下げる必要があるのではとの見方もある。しかし、吉岡FDはこの意見を真っ向から否定。あくまでタイトル奪還にこだわる必要があると強調した。
「目標は高い方が、最終到達点が高くなると思っている。例えば、上位に残っていればいいと考えていれば、中位、残留争いに巻き込まれる可能性があると思う。難しいミッションではあるが、このクラブは『すべては勝利のために』という精神が根付いている。ファン・サポーター、鹿島に関わる人すべてが、タイトルを求めている。だから、今年は残念な結果になったが、このクラブの目標設定を変えてはいけない。タイトルを獲ることが、このクラブに関わる人間の責任だと思う。これからもタイトルを求めていく」
目標はあくまでタイトル奪還。では、来季、名門が復権を果たすために、何が必要なのか――。吉岡FDは次のように語っていた。
「鹿島の勝負強さを取り戻さなければいけない。守備はある程度、J1のなかで、しっかり出来るようになってきたが、攻撃はまだまだアップデートしないといけない。個々で考えれば、選手たちは一生懸命頑張っているし、やろうとはしている。だけど、組織的に戦う部分の浸透が足りなかったと思うし、組織的に戦って攻撃するという部分を来年やっていく必要があると強く思っている。能力ある選手たちなので、そこの結束力をもっと高められれば、必ず改善できると思う」
継続的に上位に入り続けている鹿島だが、ファン・サポーター、クラブに関わる人々が求めているのはタイトルのみ。監督の進退についての言及はされなかったが、来季は新たな変化を加えて、タイトル奪還に挑むことになりそうだ。