長谷部は浦和レッズ、ヴォルフスブルク、ニュルンベルク、フランクフルトの4クラブで活躍し、日本代表としても3度FIFAワールドカップに出場。2023-24シーズンをもって現役を引退し、現在はフランクフルトU-21と日本代表のコーチを兼任している。指導者としての初年度を終えた長谷部は「2つの全く違うカテゴリーのチームを見させてもらい、多くの指導者と一緒に仕事ができる。こんなに恵まれた環境はないと思っています。やらせてもらっている意味を考えて、全力でやっていかないといけないと日々感じています」と振り返った。
フランクフルトU-21の監督は長谷部より年下の31歳。コーチ陣も31歳、28歳と非常に若く「彼らはオープンマインドで現代的な指導をする」という。U-21チームはトップチームと育成組織の中間にあたり、長谷部曰く「プロ予備軍」。しかし、ブンデスリーガ屈指の強豪であるフランクフルトのトップチームで活躍するハードルは高く、クラブはU-21チームに「勝敗ではなく、個を伸ばす」というタスクを課している。
現役生活から激変したのは一日の使い方。「現役時代も練習場には長くいる方でしたが、今は朝の7時から夜の7時くらいまでずっと練習場にいます」と明かしてくれた。
「まずパソコンを触る時間は長くなりましたね。朝は今日何人の選手がトレーニングをできるのか。アプリで管理してあってフィジカルコーチが情報を送ってくるので『この選手はやめておいた方がいい』とか『筋肉が張っているから違う練習メニューにしよう』とか。それを見て決めています。そういった準備をします。今は練習も全てカメラで撮っているので、練習後に一通り見て分析もしています。僕は指導者1年目なので、量は絶対にやらなくてはいけないと思っています」
クラブでの日々の業務に加え、日本代表の活動がある際には長時間の移動も伴う。指導者キャリア初年度からハードな日々が続いているものの「大変だと思ったことはない」と言い切る。「恵まれた環境でやれるのであれば、何事も大変だとは思わないです。現役生活の残り5年くらいは難しいと思う局面もなかったんですよね。選手時代は自分のやり方とチームのやり方があって、自分がこうすればこうなるみたいなものがあったんですけど、指導者を始めてからは上手くいかないことだらけ。自分が想像していたよりも、指導者はやることも多いし、深い。
取材・文=三島大輔(サッカーキング編集部)