プレミアリーグのプロ審判協会(PGMOL)の会長であるハワード・ウェブ氏が、将来的にビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の適用範囲が拡大される可能性があると語った。13日、イギリスメディア『BBC』が伝えている。


 国際サッカー評議会(IFAB)では近年、ゴールやPK判定、レッドカード、誤審など、特定の状況での判定にのみ使用されている現在のVARを、判定の精度向上のために適用範囲を拡大すべきだという意見が浮上しており、コーナーキックの判定や2枚目のイエローカードなどにもVARが関与できるように権限を拡大する案が検討されていることが報じられている。

 2019-20シーズンからVARを導入しているプレミアリーグでは、現時点ではVAR適用の範囲拡大について具体的な話し合いは進んでいないものの、ウェブ氏は「VARの適用範囲拡大については、間違いなく議論されるだろう」と将来的にイエローカードやコーナーキックの判定にも使用される可能性があると語った。

「特定の状況ではVARをより積極的に活用すべきだと考える人もいるが、そうすべきではないと考える人もいる。私たちはファン、コーチ、選手との協議に基づいて、イングランドのフットボールに関わる人々の期待に応えるべく、VARの運用方法を検討している。VARに関しては少ないほど良いというメッセージを受け取っており、その期待に応える形でVARの活用方法をかなりうまく調整してきた」

「VARは導入されて7年になるけど、ほとんど変わっていない。もし、フットボール界や関係者から、VARの活用拡大が試合にとって良いことだと言われたら、もちろん賛成する。しかし、その結果や波及効果については慎重に検討する必要があると思う」

「イエローカードの誤った提示が試合に影響を与える可能性について話し合うならば、誤ってイエローカードが提示されないケースについても考慮する必要がある。ビデオで簡単に確認できるのに、明らかに間違ってコーナーキックが与えられたり、イエローカードが誤って提示されることの影響は理解している。でも、同時にVARは大きな場面における明らかなミスを修正するために存在しているという認識もある。だから、そうした議論を行う必要があり、イングランドのフットボール界とも必ず協議していく」

 また、ウェブ氏は近年、ソーシャルメディア上で審判に対して殺害予告や誹謗中傷などが横行していることにも言及。「人々が意見を表明できるプラットフォームはかつてないほど大きくなっているが、それには容認できないものがある」と断固とした姿勢で対応していくことを明かした。

「昨シーズンに審判員に対するいくつかの例を見た。
選手や他の関係者にも同様のことが起こっている。これが今日の現代社会の反応とも言えるだろう。人々が強い意見を表明することは当然のことだが、試合にはグレーゾーンがあり、意見の分裂を自然に生み出してしまっている」

「しかし、結果に不満があるからと言って、審判員やその家族の安全を脅迫するなど、特定のプラットフォーム上で審判員を誹謗中傷する権利が与えられているわけではない。これは全く容認できることではない。審判員には心理的サポートやメンタルヘルス、ウェルビーイングなど、充実したサポートを提供している。それは家族も含まれている」

 さらに、ウェブ氏はVARが適用されている現在も、判断が分かれる判定となるグレーゾーンは無くらないことを強調した。

「以前は審判員が見たものに基づいてその場で判断を下していた。今ではVARによってより時間をかけて様々な角度から判定を検証している。それでもなお、グレーゾーンの判定が残るという事実は変わらない」

「PKの判定が間違っているなら、VARの介入が期待される。しかし、五分五分の場合は半分の人は元の判定が正しかったと考えるだろう。そして、VARでそれを覆せば、その人々は失望するだろう」

「私たちにとって重要なことは状況が真にグレーなのか、逆に真に明確なのかを見極めることだ。だから、最終的な結果に毎回同意できるとは期待しないでもらいたい」
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