パリ・サンジェルマン(PSG)とトッテナムが激突したスーパーカップでは、試合前に議論を呼ぶ演出がピッチ上で行われた。大会ロゴをあしらったバナーがセンターサークル付近に広げられるなか、その近くに「STOP KILLING CHILDREN(子どもの殺害を止めろ)」というメッセージが描かれたバナーが掲載された。スタンドで政治的なメッセージを込めたバナーが掲げられるケースはこれまでもあったが、今回は欧州サッカー連盟(UEFA)の式典の一部で掲載される異例の事態となった。
『BBC』によると、スタフォードシャー大学スポーツジャーナリズム上級講師のイアン・ベイリー氏は「人道的な観点からすれば、このメッセージには全く問題はない」としながらも「しかし、政治的な観点からすると非常に難しい問題だ」と述べた。
UEFA独自の規則では、試合前、試合中、試合後にスタジアム内で政治的、思想的、宗教的なメッセージを伝えることは禁止されている。今回はその規則を覆すような特異なメッセージ発信となったが、むしろUEFAのバナーに批判的な声を挙げたのは反ユダヤ主義団体やアムネスティ・インターナショナル(国際連合との協議資格をもつ非政府組織〔NGO〕)。アムネスティ・インターナショナルのシャイスタ・アジズ氏は「犯罪の名前を挙げながら犯人を明かさないのは卑怯な行為だ」と、UEFAの抽象的なメッセージに不満を示した。
UEFAは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後にロシアとロシアのクラブの主催大会への参加を禁止。しかし、イスラエル国防軍がガザ地区で地上作戦を開始して以来、イスラエルとイスラエルのクラブの主催大会への参加を許可し続けている。この“ダブルスタンダード”とも取れる姿勢と今回の抽象的なメッセージが、多くの人々に受け入れられたとは言い難い状況だ。
なお、同試合はPSGがPK戦(4-3)の末にトッテナムを下してスーパーカップ初優勝を飾っている。