また、少子化ペースの加速は、20年から22年にかけて、婚姻数が急減したことが寄与したとみられる。厚生労働省の調査による23年の婚姻数は、前年比5.9%減の48万組となる見通しだ。
「結婚って一生おごり続けるってことでしょ?」という知人女性の息子の言葉がきっかけで、昨年11月に『結婚がヤバい』(社会評論社)を上梓したライターの宗像充氏(48歳、@MunakataMi)に話を聞いた。
事実婚2回、法律婚1回、離婚は3回
事実婚2回、法律婚1回を経験し、1回目の事実婚の際に子の連れ去りに遭っている宗像氏。その生い立ちは、大分県犬飼町(現 豊後大野市)に産まれ育ち、3人兄姉の末っ子として、野山で遊び自由奔放な幼少期を過ごす。「両親は教員という固い家庭に育ちましたが、末っ子だったので、ああせいこうせいと期待されなかったです。落ち着きがなく、マイペースな子どもでした」
そんな宗像氏は、県内の進学校に進学した後、高校では山岳部に所属する。
結婚することだけが生き方ではない
それをきっかけにサラリーマンではなく、フリーランスのライターになる。
「フリーランスのライターを略せばフリーターですが、山岳部に所属していた他大学の仲間たちは、『山岳部は5年制だ!』と豪語していました。そんな人たちを見ていて、一般企業に勤めて結婚するだけが人生じゃないと知りました。世間とは違う生き方をする人たちに出会いました」
「結婚はダサい」から事実婚
国際政治を専攻していた宗像氏は、市民活動に興味を持つようになる。1回目の事実婚の相手は、市民運動の仲間の女性だった。「事実婚の相方は6歳年下の女性でした。市民活動をしている同世代の仲間の中では、結婚(=入籍)はダサいという雰囲気があったので、法律婚はせずに一緒に暮らしだしました。今でも、結婚は形ではなく内実が大切だと思っています」
住民票には「夫(見届け)」と記載された。子どもができた際にも、妻は「姓が変わるのがイヤ」という理由で入籍を望まなかったという。性格や育児方針の不一致により、喧嘩が絶えない結婚生活だった。
「子どもを自宅出産する際の挨拶を巡って口論となった時に『あなたは子どものことを何も考えていない』という言葉で、喧嘩がエスカレートし、妻をひっぱたいてしまったことがあります。2回目にひっぱたいたときは、妻に噛みつき返され蹴られました。DVの問題は、相互の関係性だと思います」
別れた夫婦のもとで板挟みに合う
「他の人は離婚でダメージを受けるけど、登山をしていたことや基本的に楽観的なことから、リカバリーは早かったです。山登りに行くと、悩み事が小さく見える。登山にはそういう効果があります」
だが、1回目の事実婚解消の際には、それすらできないほど落ち込んだ。
「娘が母親と養父、僕の間で板挟みになっていたんです。『娘が板挟みに合うのは、君のせいじゃない。社会の問題だ』と伝えたかったので、国を訴える裁判までしました」
2度目は法律婚、妻には警察を呼ばれる
宗像氏はその後、大学でジェンダー論を講義する妻と法律婚をする。2回目の結婚を、法律婚にしたのはなぜなのか。「相手が法律婚を望んだからです。法律婚か事実婚かというのは、相手との関係性の中で決めたらいいと思いました。
2度目の妻からは、何かもめると、正座をさせられたり、反省文を書かされたりした。1年ほど経った頃、仕事中に電話をしてきて、電話やメールが止まなくなったという。
「妻からの電話に出ないと『無視するのはDV』と警察にまで連絡されました。1年間で気持ちが離れてしまった。離婚まで3年かかっています」
日本は有責主義を取っているので、片方が拒めば、関係が悪くなったからと言って離婚はできない。
取材先で知り合った女性と事実婚
「女好きだからでしょうね。それに結婚自体が悪いものだと思っていなかったです」と、宗像氏本人は語る。
2度目の事実婚も、妻が名家の育ちで、名前を変えたくないという理由で事実婚にした。現在も暮らしている長野県の大鹿村に引っ越し、彼女とともに暮らし始めたのだが、離婚のきっかけは何だったのだろうか。
「離婚のきっかけは新型コロナウィルスでした。僕は毎月、1回目の事実婚の妻との間にできた子に会いに行っていました。東京に行って、コロナウィルスを移さないで欲しいと言われ、村に戻って来たら実家に帰ってしまっていました」
妻は、宗像氏を捨て、実家の意向に従う形で事実婚は解消となった。
3度の失敗から考える理想の結婚
今後、結婚するとしたら、どんな結婚の形態を選ぶのだろうか。
「相手次第だと思います。結婚は人の行動を縛るけれど、心は縛れない。事実婚を選ぶ人もいますが、相手の人生を左右するのだから、責任があると思います。結婚に懲りてしまうのは、制度に縛られたことによって、心まで縛られてしまった人ですよね。共同親権が今話題ですが、結婚・未婚(事実婚)問わず、親子関係が保障されれば、結婚は子どものこととは切り離され、“オンリーラブ”になります。離婚を失敗と取るのか、経験と取るのかで違いますが、僕は後者です。だから本を書くこともできました」
まだ懲りていないという宗像氏は、相手の条件ではなく、あくまでも愛情が尊重される結婚のあり方や社会を望んで、これからも結婚には前向きだ。婚姻率が下がっている今、自分が結婚やその相手に何を望むかを見極めることが大切なのではないか。宗像氏はこれからも「冒険」をやめないだろう。
<取材・文/田口ゆう>
【宗像充】
1975年生まれ。ライター。大学時代は山岳部に所属し、登山、環境、平和、家族問題などをテーマに執筆をおこなう。子どもと引き離された自らの体験から、共同親権運動をはじめ、2019年に「共同親権集団訴訟」で国を訴える。著書『ニホンオオカミは消えたか?』『ニホンカワウソは生きている』『引き離されたぼくと子どもたち』『共同親権』『南アルプスの未来にリニアはいらない』ほか
【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1