最近は海外旅行に興味を示さない若者が増えているが、一方で世界一周のような長旅に行く人は増えているという。ただし、サラリーマンが旅をするために半年や1年といった長期休暇を取得することは極めて難しく、会社を退職したうえで旅に出るケースがほとんどだ。
退職の理由は「旅がしたいから」
機械設備会社で働く折原孝和さん(仮名・36歳)の職場にも、世界一周の旅をするために仕事を辞めた新人がいたという。「数年前に採用された大卒の新入社員ですが、入社翌月に退職願を出したんでビックリしました。しかも、その理由が衝撃的すぎました(笑)。私の価値観では旅行って仕事が休みのときに行くものだし、ましてや彼はまだ入社したてでこれから仕事を覚えなきゃいけなかった時期。正直、開いた口が塞がりませんでした」
社員50人程度の小さな会社で、その年は彼を含めて3人を新卒で採用。
「上司は彼の退職願を預かりはしましたがいったん保留にして、何度も説得を試みていました。しかし、翻意させることはできず、最終的に受理せざるを得ませんでした」
同じ部署だった折原さんも思い留まるように何度も話をしたそうだが「すみません、自分の気持ちにウソはつけないので」と決意は固かったとか。
「私もまだ若かったですから少しカッとなってしまい、強い口調で『だったらどうして入社してからそんなことを言い出すんだ、社会人として無責任すぎないか』と厳しいことも言いました。彼は『お叱りの言葉は甘んじて受けます』と反論はしませんでしたが、その態度が余計に腹立たしく思いました。本人の中では本当の理由を話すことで筋を通そうとしたのかもしれませんが、あんな理由ならウソでもいいから違う理由を挙げてもらったほうがよかったですよ」
旅を諦めて就職したはずだったが…
ちなみに彼は大学時代から海外放浪の旅に強い憧れを持っていたらしく、その夢を実現させるために在学中はアルバイトに励んでお金を貯めていたそう。当初は卒業後に旅に出る予定だったが将来のことを考え、悩んだ末に就職を決断。「入社直前の2~3月、卒業旅行でインドに行ったと話していたので、それで我慢できなくなったのかもしれませんね。普通なら大学時代最後の思い出として旅をして、就職してからは仕事に打ち込むものだと思うのですが、彼は違ったみたいです。
百歩譲って旅に出るために会社を辞めるとしても、せめて何年か働き、それからだって遅くないじゃないですか。私もちょっと気になって世界一周をした人の動画やブログなんかをチェックしていたんですが、20代後半の人が結構多かったんです。
彼は今頃なにを……
配属された際には部署全員が参加して歓迎会が行われたが、辞める際は送別会などは当然行われるわけもなく、ひっそりとしたものだったという。確かに、こんな経歴では採用担当者の印象も悪いだろう。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。