―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロ・佐藤優が、その経験をもとに、読者の悩みに答える!今回は、AIを使いこなせないことに危機感を抱き、「このままでは生き残れないのでは」と悩む43歳会社員からの相談。AI全盛時代に、人間にしかできないこととは何なのか。
佐藤が示した、意外な生き残り方とは――。

AIが使えない私は、この先生き残れないのか?

★相談者★くたばれAI(ペンネーム)会社員 43歳 男性

 世の中AIブームで、AIを使えない人はこの先生き残れないという雰囲気です。私はChatGPTは少しだけ使いましたが、そんなに使えないと感じたので、それからずっと使っていません。でも、会社は今後、AIを使いこなしている人を優遇する方針のようです。こんなAI全盛時代に、AIを使えない(使わない)私は、どうすれば生き残れるでしょうか? ブルーカラーの仕事をやるほかないでしょうか? 佐藤さんのAIの使い方も参考までに教えてほしいです。

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佐藤優の回答

 AIが使えなくても、基本的に困ることはないと思います。なぜなら人間が行う仕事のほとんどがAIでは行えないものだからです。この点について東京大学教養学部の斎藤幸平准教授がわかりやすく説明しています。

〈デジタル化が進めば働き方が自由になり余暇も増えるというのは嘘八百だった。実際、仕事はこれっぽっちも楽になっていない。アマゾンの倉庫での労働作業が、仕事の強度を上げるために、常に監視・計測されているというのは、有名な話だ。ノルマを果たさなければ、いつクビになるかわからず、怯えながら働くことになる。/だが、どれだけ必死で働いたとしても、AIやロボットが発展していけば、人間に残される仕事は、自動化するコストには見合わない、低賃金の仕事ばかりになる。
(中略)ギグワーカーは個人事業主として扱われ、労災も適用されない。/ギグエコノミーのリアルは、まさにマルクスの時代の資本主義が回帰してきたかのようである。私たちの多くは、デジタル・プロレタリアートになりつつある〉(『人新世の「黙示録」』50~51頁)

 AIの使い方は難しくありません。質問を書き込めば(音声で入力してもいい)、とりあえずの答えが出てきます。その答えはビッグデータの中から多数決で選び出されてきます。試しに、「AIを使えない人はこの先生き残れないのでしょうか」という質問をChatGPTにしてみました。答えは次のようなものでした。

〈「生き残れない」のではなく、「不利になりやすい」です。/AIは今後、パソコンやスマホと同じような基本ツールになっていく可能性が高いので、使えると有利ですが、最終的に重要なのは人間の判断力や対人能力です。〉

 私の回答も基本的に同じです。電車の乗り換え案内、昼食を1000円程度で食べられる食堂の検索などにAIはとても便利です。普通にスマホを使っている人ならば、誰でも使いこなすことができます。
問題はAIにだけ頼っている人の思考法が、当該AIのアルゴリズムと同じになってしまうことです。毎日、カップ麺ばかり食べていると塩分の濃い(カップ麺のスープの塩分濃度は海水と同じ)、グルタミン酸ソーダのたっぷり入った食品しかおいしく感じなくなってしまうのに似ています。

 人間の判断力や対人能力をつけるためには、人と会うことに加え、本を読み、映画やドラマを見て、代理経験を増やすことです。AIに従属しない人間になるために特に重要になるのが本を読み、その内容について批判的に考えることです。

★今週の教訓……AI頼みの思考法の人のほうが問題です

「AIを使えない人は生き残れない?」43歳会社員の不安に佐藤優が出した“意外な答え”
世界的な欠乏経済、終わらない戦争、選民ファシズムの蔓延――。破滅へと近づく時代の処方箋を気鋭の経済思想家が解説。『人新世の「資本論」』の続編。'26年刊
※今週の参考文献『人新世の「黙示録」』斎藤幸平 集英社

―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―

【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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