車を運転していると、後ろの車がぴったり張りついてくる——そんな瞬間に、背中がゾクッとした経験のある方は、意外と多いのではないでしょうか。ミラー越しに見える相手の顔、追い越しざまに向けられる視線。
逃げ場のない道路の上で、後ろから詰められる恐怖は、体験した人でなければわかりません。
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令和7年版犯罪白書によれば、2024年中の妨害運転の取締件数は146件で、前年から44件増加。あおり運転は2020年6月の改正道路交通法で「妨害運転罪」として厳罰化され、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、加えて一発で免許取消しの対象となりました。件数だけ見れば決して多くはありませんが、当事者になれば話はまったく別。ドライブレコーダーが普及したいまも、路上のトラブルは絶えません。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、平和なドライブが一瞬で恐怖に変わった2人の話。ただ、どちらの加害者にも、思いがけない”末路”が待っていました。

記事の後半では、妨害運転罪の罰則や免許への影響を、あらためて振り返ります。怒りにまかせてアクセルを踏むと、その先にどんな代償が待っているのでしょうか。そんな危険行為「あおり運転」には10種類あるのを知ってますか?合わせてご紹介しまます。

 *  *  *

①観光気分を壊した“逃げ場のない”恐怖


「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
 山本敬子さん(仮名・50代)は、家族で奈良県に向かう途中だったのだが、のんびりとした観光ムードは黒のミニバンによって一変した。

「急に後ろから詰めてきて、車間距離がほとんどなかったんです。完全に挑発している感じでした」

 ハンドルを握る手に力が入り、後部座席の子どもたちは「こわい……」と怯えていたという。


 夫の「無視して、安全なところに行こう」という一言で、山本さんは近くの大型ショッピングモールの駐車場で車を止めた。

「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
 しかし、黒いミニバンも後を追うように進入。隣に止まると勢いよくドアが開き、男性が怒鳴りながら近づいてきたそうだ。

「どんくさい運転しやがって!」

 明らかにケンカ腰だった。子どもたちが身を伏せるなか、夫は車を降り男性に向かって冷静に声をかけた。

「怒鳴るのはやめてください。落ち着いて話を……」

 しかし男性は逆上し、山本さんの車を蹴りながら怒鳴り続けたのだ。

「お前がノロノロ走るからやろが!」

怒号の主を一瞬で黙らせた“意外な人物”


「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
 10分ほど言い合いが続いた頃、一台の車が駐車場に入ってきた。ミニバンのそばに車を止めると、降りてきたのは東南アジア系の女性だった。

「アンタ、ナニシテルノ! マタケンカ? ヤメテ、バカ!」

 女性は男性に向かって激しく叱責したのだ。男性は一気に勢いを失った。その後、女性は山本さんの夫に深く頭を下げたという。

「ゴメンナサイ。
ワタシノオット、バカデス」

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※画像は生成AIによるイメージです
 さらに男性に向かって、「アヤマル。イエニイレナイヨ」と突き放すと、男性は小さな声で「すみません」と謝罪。引きずられるようにしてミニバンへ戻っていった。

「さっきまでの怒りが何だったのか……。あまりの変貌ぶりに、笑いが込み上げてきました」

②時速60キロを厳守、それでも迫ってきた車


「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
 高田健一さん(仮名・50代)は、業界歴10年の中型トラックドライバーだ。夏のある日、山形県内の国道を走っていた。

「うちは会社が速度に対して本当に厳しいんです。デジタコ(事業用車両に搭載され、速度・走行時間・走行距離などの運行データをデジタル形式で自動記録する装置)で全部記録されているので、一般道では60キロ厳守です」

 荷物を積んで走行していると、後方に1台の乗用車が張りついてきた。ミラー越しに見える運転手は、明らかに苛立っている様子だったという。

「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
「蛇行しながら、車間は数メートル。正直、怖かったですね」

 追い越し禁止の黄色いラインが続く区間だったが、見通しが開けた瞬間、乗用車はエンジンを唸らせて右側へ飛び出した。

「横を通るとき、睨まれました。『遅えんだよ』って顔でしたね」

強引な追い越しが招いた代償


「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
 国道沿いの“チェーン着脱所付近”に差し掛かった。夏場は“ただの空き地”だが、地元では警察が張り込むことで知られている場所のようだ。


「案の定、死角にパトカーがいました」

 サイレンが鳴り、パトカーが本線へ。停止命令を受けた乗用車は、路肩へ誘導されていったという。

「その横を通ったとき、運転手がハンドルに突っ伏していました」

 追い越し禁止違反、速度超過、そして“あおり運転”。高田さんは赤色灯を確認しながら、「あの人、終わったな」と思い、その場を走り去った。

<取材・文/chimi86>

■「あおり運転」は10種類ある

「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
2つのエピソードに共通しているのは、あおられた側に落ち度がほとんどないこと。家族連れの観光ドライブと、会社の規則で60キロを厳守していたトラック。むしろ法定速度を守っているほうが目をつけられるというのは、なんとも理不尽な話です。

そもそもあおり運転といえば、後ろにぴったり張りつくやつだと思っていませんか? 警察庁によると、2020年に創設された妨害運転罪の対象は10類型あります。車間距離不保持、急な進路変更、急ブレーキ、危険な追い越し、対向車線へのはみ出し、執ようなクラクション、執ようなパッシング、幅寄せや蛇行運転、高速道路での駐停車、そして高速道路での低速走行。

最後のひとつが意外でした。妨害する目的があれば、高速でわざとノロノロ走るほうもあおり運転になります。もちろん、ただ制限速度を守っているだけの車は対象外。
今回の2人が守られる側だったことは、法律のほうがはっきりさせてくれています。

政府広報オンラインによれば、妨害運転罪の罰則は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。高速道路で相手を停止させるなど著しい危険を生じさせた場合は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と、さらに重くなります。加えて違反点数は25点(著しい危険を生じさせた場合は35点)で、免許は即取消し。欠格期間は最低2年、前歴や累積点数によっては最大5年に延びます。仕事で車に乗っている人なら、そこで生活が止まりかねません。

「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
出典:警察庁「STOP! あおり運転!!」リーフレットより引用
奥さんに叱られて縮こまった男性と、パトカーに止められてハンドルに突っ伏していた運転手。怒りにまかせてアクセルを踏んだ先に待っていたのは、どちらもあまり格好のいい光景ではありませんでした。ドライブレコーダーが普及したいまの時代、路上での一瞬の激情は、その日のうちに証拠として残ります。ハンドルを握るときこそ、少し深呼吸したいものです。

「どんくさい運転しやがって!」あおり運転の男が怒号…車を蹴る暴挙に出た“ケンカ腰男”を一瞬で黙らせた意外な人物
※画像は生成AIによるイメージです
<再構成/日刊SPA!編集部>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。
趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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